活躍できないジンクスは過去の話? 「オープン戦首位打者」のシーズンを振り返る

パ・リーグ インサイト

2022.3.23(水) 09:00

千葉ロッテマリーンズ・高部瑛斗選手(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・高部瑛斗選手(C)パーソル パ・リーグTV

「オープン戦とシーズンは別物」という見方もあるが……

 3月21日、2022年のオープン戦の全日程が終了した。今年のオープン戦で首位打者に輝いたのは、打率.393という数字を残した、千葉ロッテの高部瑛斗選手。トップバッターとして出色の打撃を見せていただけに、レギュラーシーズンでも同様の活躍が期待されるところだ。

 しかし、過去のシーズンを振り返ってみると、オープン戦の成績とシーズンでの成績は、必ずしも比例しない傾向にある。そうした過去の例もあって、「オープン戦とシーズンは別物」という見方が存在するのも、無理もないだろう。

 そこで、今回は2011年以降におけるオープン戦首位打者の顔ぶれと、各選手が実際のシーズンで残した数字を確認。そこから見えてくる実際の傾向と、特筆すべき選手たちについて紹介していきたい。

オープン戦の好調を、実際のシーズンに持ち込めた選手はほんの一握り

 2011年以降のオープン戦首位打者と、シーズン打撃成績は下記の通り。

2011年以降のオープン戦首位打者のシーズン打撃成績(C)パーソル パ・リーグTV
2011年以降のオープン戦首位打者のシーズン打撃成績(C)パーソル パ・リーグTV

 2019年までにオープン戦首位打者に輝いた10名の選手のうち、シーズン100試合以上に出場した選手は3名のみ。また、その3名のうち、秋山翔吾選手と鈴木大地選手は以前からレギュラーとして活躍を見せていた。そのため、オープン戦での活躍をレギュラー獲得につなげたと言える選手は、2011年の浅村栄斗選手ただ一人ということになる。

 このように、オープン戦首位打者はシーズンでは苦戦する傾向にあったが、直近2年間は少し風向きが変わりつつある。2020年の大山悠輔選手は120試合の短縮シーズンながら28本塁打を放ち、OPS.918と優れた打撃内容を披露した。続く2021年の島内宏明選手も自己最多の21本塁打を記録し、自身初となる打点王のタイトルに輝いている。

 先述の2名は打率の高さではなく、長打力や勝負強さを発揮する方向性ではあったが、オープン戦首位打者を経て、シーズンでも活躍を見せた例と言えよう。

2015年の秋山選手は、まさにオープン戦からシーズン終了まで絶好調だった

 オープン戦は試合数が少ないこともあり、首位打者の打率は.370から.400台と非常に高くなる傾向にある。しかし、2011年以降のオープン戦首位打者のうち、シーズン打率.300以上の成績を残したのは2015年の秋山選手だけ。オープン戦で好成績を残したとしても、レギュラーシーズンで同様の打率を残すことは、極めて困難であることがうかがえる。

 ただし、その2015年に秋山選手が見せた活躍は、まさに球史に残るレベルのものだった。オープン戦での好調を開幕に持ち込むと、そのまま年間を通じて好調を維持し、前例のないペースで安打を量産。最終的にはNPB史上最多記録となる、シーズン216安打という大記録を打ち立てている。

 この年の秋山選手は出塁率も.419と高く、OPS.941と打撃内容自体も抜群だった。プロ1年目から4年続けて100試合以上に出場していたものの、2014年までは年間打率.300に到達した経験すらなかったことを考えれば、まさに長足の進歩を遂げたシーズンと言える。

 この大活躍で一躍その名をとどろかせた秋山選手は、2年後の2017年に自身初の首位打者を受賞。2017年から2019年まで3年連続で最多安打を受賞し、球界屈指の安打製造機として活躍を続けた。オープン戦首位打者に輝いたシーズンの大活躍を経て、打撃内容が大きく進化したという点を鑑みても、まさにオープン戦での活躍を飛躍につなげた例といえよう。

2011年の浅村選手は、オープン戦の活躍をレギュラー定着につなげた稀有な例

 また、浅村選手はプロ入り後の2年間で合計30試合の出場にとどまっていたが、2011年にオープン戦で活躍したことをきっかけとしてレギュラーに定着。同年のシーズン打率は.268だったものの、この時期は統一球導入の影響により、球界全体の打撃成績が低下していた。同年10月には自身初の月間MVPに輝いた浅村選手は、そうした難しい環境の中でも一定の存在感を発揮していた。

 浅村選手はその後も継続的に出場機会を確保し、2年後の2013年には平成生まれでは初となる打点王を受賞。オープン戦でアピールに成功したことによって開幕から出番を掴み、そのまま主力に定着したという流れを振り返ってみると、2011年の浅村選手は、オープン戦首位打者の獲得をブレイクにつなげた好例と形容できるはずだ。

直近2年間に見えた傾向の変化を、高部選手が確固たるものとできるか

 以上のように、オープン戦で首位打者に輝いた選手が、同年に活躍を見せるケースは決して多くはなかった。しかし、直近2年間の大山選手と島内選手の成績を考えれば、以前とは傾向が変わってきたという見方もできる。この流れが継続するかどうかは、今季の高部選手の活躍にかかってくることだろう。

 また、仮に今季中に本格的なブレイクを果たせなかったとしても、かつての松山選手や井上選手のように、高部選手が翌年以降に主力打者へと成長していく可能性もあるだろう。今回のオープン戦首位打者獲得が、大きな飛躍の触媒となるか。高部選手の今後の活躍に、要注目だ。

文・望月遼太

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