「ラッキーセブン」といえば試合の終盤、7回の攻防を指す。スタジアムでは球団歌が流れ、ファンの熱気も増す。7回は何かが起きそうだ、と心を躍らせる。今回は、その「ラッキーセブン」に強いチームはどこなのかを検証していく。
しかし、そもそもなぜ7回を「ラッキーセブン」と称し、特別扱いされるのだろうか。その起源は今から136年前に遡る。
「ラッキーセブン」の由来
ラッキーセブンという言葉が誕生したのは1885年。シカゴ・ホワイトストッキングスの打者が7回に打ち上げた平凡な打球が風に乗って本塁打となり、それがチームの優勝につながった。そして勝利投手のジョン・クラーソン氏が、翌日の新聞のインタビューに「lucky seventh」と表現した。それが現在のラッキーセブンと呼ばれるようになったゆえんだと言われている。
球場のボルテージも上昇するラッキーセブンに力を発揮するチームはどこだろうか。(以下、成績はいずれも9月18日の試合終了時点)
ラッキーセブンに強いのは千葉ロッテ
今回は「ラッキーセブン」の強さを7回の得点から測ってみる。
最も平均得点が高かったのが千葉ロッテ。112試合で54得点は福岡ソフトバンクと並んで6球団最多タイで、平均得点ではわずかに上回った。個人成績を見てみると、マーティン選手がチーム最多の3本塁打。そのマーティン選手を上回り、チームキャプテンの中村奨吾選手が9打点を挙げいている。さらに、若き大砲・安田尚憲選手が7回に打点を挙げた試合では5戦負けなし。「満塁男」「サヨナラ男」に続く「ラッキーセブン男」の誕生にも期待がかかる。
千葉ロッテの7回の強さを象徴した試合が8月21日の福岡ソフトバンク戦。5点ビハインドで迎えた7回表、藤原恭大選手、中村奨吾選手のタイムリーヒットなどで一挙5点を奪い同点とすると、9回に勝ち越し点を挙げ見事大逆転勝利を収めた。今季千葉ロッテは1イニング「5」得点を4度記録しているが、そのうち3度は7回。ラッキーセブンにビックイニングを生み出している。
平均得点が最少の楽天だが…
楽天は114試合で38得点。トップの千葉ロッテ、福岡ソフトバンクとは総得点で16と大きな差がついている。楽天はラッキーセブンに弱い……と思ったら調べていくうちに興味深い結果が出た。以下の表は7回に得点を挙げた試合の勝敗をまとめたものだ。
楽天は7回の得点数、平均得点はリーグ最下位だが、7回に得点した試合の勝率はリーグで唯一の8割超え。対パ・リーグ球団に限ると13勝2敗(.867)とさらに勝率をあげている。また、交流戦が明けて以降の結果を見ると、7回に得点した試合では負けなし8連勝中だ。「ラッキーセブン」の得点は、楽天ファンにとってなにより価値のある「勝利フラグ」と言えるかもしれない。
やっぱり7回は何かが起きる!?印象的な7回を振り返る
千葉ロッテは4月7日の7回裏に怒涛の攻撃を見せた。マーティン選手が5号ソロを放つと、安田尚憲選手の2号2ラン。さらに藤岡裕大選手が1号2ランを放ち、一挙5得点。まさに「幕張花火大会」だ。
北海道日本ハムは5月23日、今季初の2桁得点でアーリン投手が来日初勝利を手にした。その試合の7回、ルーキー・五十幡亮汰選手が地元の埼玉で記念すべきプロ初本塁打を放った。
7月14日、中村剛也選手が7回裏に放った9号2ランは打った瞬間にわかる超特大弾だった。生粋の長距離打者らしい、美しい放物線を描く芸術的なアーチであった。
8月4日の「2021プロ野球エキシビションマッチ」。オリックスは1点を追う7回裏、2死1、3塁から福田周平選手が放った打球がレフト線に。この当たりがランニングホームランとなり、逆転で試合をものにした。
ラッキーセブンは球場の演出、投手の交代、差し迫った試合の終盤……さまざまな要因で雰囲気ががらっと変わる。それが「何か起きるかもしれない」と思わせているのだろうか。ペナントレースもいよいよ終盤。「ラッキーセブン」が勝負の分かれ目になる、そんな胸高鳴る試合に期待したい。
文・岡絃哉
関連リンク
・千葉ロッテが首位に上り詰めた3つの理由
・柳田悠岐は楽天生命パークで目覚めるか
・宮城大弥投手の球種判別にチャレンジ!
記事提供: