故障者続出ながら上位争いの埼玉西武。主力の穴を埋める選手たちに要注目!

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2021.4.16(金) 11:00

埼玉西武ライオンズ・呉念庭選手(左)、若林楽人選手(右)(C)パーソル パ・リーグTV
埼玉西武ライオンズ・呉念庭選手(左)、若林楽人選手(右)(C)パーソル パ・リーグTV

開幕戦で4・5・6番を打った3名の主力が、いずれも戦列を離れる緊急事態に

 危機的状況に陥った獅子を救うのは、主力の代わりに入った選手たちになるかもしれない。埼玉西武は開幕戦で栗山巧選手が負傷し、3月30日に山川穂高選手も故障。4月3日には外崎修汰選手も死球で左腓骨骨折を負い、開幕戦で4・5・6番としてスタメンに入った3名の選手が、いずれも戦列を離れる非常事態となった。

 それでも、ライオンズは4月15日の試合終了時点で同率2位と、主力の相次ぐ離脱にもかかわらず上位争いを演じている。その理由の一つとして、負傷者の代役となった選手たちの好調により、現時点では打線の大幅な成績低下を防いでいるという点が挙げられるだろう。

 今回は、現在活躍を見せている選手の経歴と、その活躍ぶりを中心に、苦境に陥っているチームを救う可能性のある選手たちの顔ぶれと、各選手に期待される役割を紹介していきたい。

呉念庭選手

埼玉西武ライオンズ・呉念庭選手の年度別成績(C)パ・リーグ インサイト
埼玉西武ライオンズ・呉念庭選手の年度別成績(C)パ・リーグ インサイト

 呉念庭選手は2015年のドラフト7位で入団。正遊撃手不在のチーム事情もあって1年目から43試合に出場したが、打率.194と打撃面で苦しみ、抜てきのチャンスを生かすことはできず。翌2017年に源田壮亮選手が入団したこともあり、その後は一軍での出場機会も減少。2019年には一軍での出場が1試合もなく、28歳を迎える今年はプロ生活の正念場と言える状況を迎えていた。

 そんななかで迎えた2020年、呉選手は二軍での17試合で5本塁打、打率.383、出塁率.479というすばらしい成績を記録。この活躍によって一軍昇格を果たすと、自己最多の51試合に出場し、打率.227に対して出塁率.320という数字を残した。二軍ではプロ入りした2016年以降全ての年で出塁率.350以上を記録してきた選球眼を、一軍の舞台でも発揮している。

 2021年の開幕は二軍で迎えたものの、山川選手の故障に伴い一軍に昇格。今季初スタメンとなった3月31日の北海道日本ハム戦でプロ初本塁打を放つと、そのまま5番・ファーストの座に定着した。持ち前の選球眼に打球の力強さが加わった結果、4月14日の試合終了時点でOPS.939という上々の数字を記録。今や、ライオンズ打線を支える存在の一人となっている。

若林楽人選手

埼玉西武ライオンズ・若林楽人選手の年度別成績(C)パ・リーグ インサイト
埼玉西武ライオンズ・若林楽人選手の年度別成績(C)パ・リーグ インサイト

 若林楽人選手はパンチ力のある打撃と俊足・強肩を兼ね備える、トータルバランスに優れた外野手として期待され、2020年のドラフト4位で入団。春季キャンプから一軍組に帯同すると、対外試合・オープン戦を通じて、実戦でもアピールを続けた。そして、新人ながら開幕一軍の座を勝ち取ると、開幕2戦目では早くもレフトとしてスタメンに名を連ねている。

 その後は俊足を生かして、4月15日試合終了時点でリーグトップタイとなる6盗塁を記録。盗塁王獲得経験のある金子侑司選手、源田選手に加えて、埼玉西武の機動力野球に新たな武器が加わったことになる。さらに、4月7日の楽天戦では則本昂大投手からプロ第1号となる本塁打も放ち、走攻守にわたって貴重な活躍を続けている。

 パ・リーグにおいてルーキーイヤーに盗塁王を獲得した選手は、70年以上にわたる歴史の中で1名も存在しない。若林選手がこのまま盗塁を積み重ねることができれば、リーグの歴史にその名を刻む可能性すら秘めている。あらゆる意味で今後も要注目の存在なのは、もはや疑いようのないところだ。

ライオンズ期待の選手はほかにも

 取り上げた2名の選手以外にも、主力離脱の穴を埋める可能性を秘めた選手が続々と現れている。

 まず、堂々たる体躯で話題を集めた2020年のドラフト1位・渡部健人選手はファームで5本塁打、4月4日に一軍昇格後プロ初本塁打を放っており、今年中のブレイクなるかに注目だ。ドラフト6位で入団したブランドン選手は、若林選手と同様にプロ1年目から開幕一軍入り。開幕2戦目では若林選手と共にスタメン入りし、3月30日の北海道日本ハム戦では、プロ第1号となるホームランを含む3打数2安打4打点を記録した。現在は二軍調整中だが、新人ながら大いに存在感を発揮していただけに、その復帰が待たれるところだ。

 また、昨季までは二軍で腕を磨いた西川愛也選手と愛斗選手の大阪府堺市出身・花咲徳栄高卒コンビも一軍に昇格し、それぞれスタメン起用のチャンスも得ている。

 特に愛斗選手の成長は著しい。今季は松井稼頭央二軍監督より指名を受けキャンプ期間中のキャプテン経験もした。「率先してチームを引っ張っていってほしい」という松井二軍監督の期待を背負い迎えた今シーズン。ファームでのスタートダッシュに成功し、4月8日に一軍へ昇格すると、翌9日に1試合2本の本塁打を放ち一気にブレイク筆頭に躍り出た。栗山巧選手、金子侑司選手、木村文紀選手といった、リーグ連覇を支えたメンバーはいずれも30歳を超えているだけに、若林選手も含めた、チームの次代を担うであろう若手外野陣の切磋琢磨も見ものだ。

「育成しながら勝つ」という命題をクリアし、チームを上位にとどめられるか

 埼玉西武はこれまでも、抜けた選手の穴を生え抜きの選手が埋めてチーム力を保つ、あるいは向上させる、というサイクルを機能させ続け、その結果が2018年からのリーグ連覇にもつながった。現在活躍を見せている選手たちの活躍が今後も続き、そのまま主力選手へと成長していくかどうかは、これからのチームを占ううえでも、非常に重要なものとなってくる。

 今回挙げた選手たちがこの調子で奮闘を続け、主力選手たちが復帰するまでチームの順位を上位にとどめることができるか。控え選手の出場機会増加は、中長期的なチーム力の向上につながるという点で、必ずしも全てがマイナスというわけではない。「育成しながら勝つ」という難しい命題をクリアしつつ、来たる反攻のチャンスを待つことができるか。現在と未来の双方において、若獅子たちの躍動がチームの命運を握ることになるはずだ。

文・望月遼太

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