対照的なスタイルの2名の功労者。内竜也と大谷智久の足跡を、経歴と指標から振り返る【後編】

パ・リーグ インサイト 望月遼太

千葉ロッテマリーンズ・内竜也投手(左)と大谷智久投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・内竜也投手(左)と大谷智久投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV

 2021年1月21日、2020年まで千葉ロッテに在籍していた内竜也投手が、現役から退くことを表明した。既に昨季限りでの現役引退を発表していた大谷智久投手と合わせて、2名のベテランが揃ってユニフォームを脱ぐこととなる。マリーンズでの在籍年数は、内投手が17年間、大谷投手が11年間。ともにチームの重鎮として、長きにわたって活躍してきた功労者だった。

 前編では、惜しまれながら昨季限りで現役を退いた2投手の経歴を、あらためて紹介した。後編では、セイバーメトリクスの見地に立って各年度の成績を分析していく。

前編はこちら

内投手の奪三振能力の高さは、指標においても示されていた

 ここからは、セイバーメトリクスで用いられる、以下の5つの指標をもとに、両投手の足跡を振り返っていきたい。

・9イニングで記録できる奪三振数の平均を示す「奪三振率」
・9イニングで与える四球数の平均を示す「与四球率」
・9イニングで打たれる本塁打数の平均を示す「被本塁打率」、
・奪三振を四球で割って求める、投手の制球率を示す「K/BB」
・1イニングあたりに許した走者の数を表す「WHIP」

 まずは、内投手が記録した各種の数字について見ていこう。

打ち達也投手 年度別各種指標(C)PLM
打ち達也投手 年度別各種指標(C)PLM

 内投手の成績でひときわ目につくのは、なんといっても安定して高い数値を記録し続けていた奪三振率だろう。一軍登板が1試合でも存在した12シーズンのうち、奪三振率が8を上回ったのは実に11度。奪三振率9以上、すなわち投球イニングと同等かそれ以上の奪三振数を記録したシーズンも5度存在し、通算の奪三振率も8.62とかなりの高水準だ。対戦相手を力でねじ伏せる豪快な投球が、内投手の最大の持ち味だったといえよう。

 その一方で、与四球率に関してはキャリア通算の数字が3点台後半とやや高く、2点台以下のシーズンも3度のみ。その影響もあってか、先述の通り高い奪三振力を有しながら、キャリア通算のK/BBも高いとは言えない数字にとどまっている。

 しかし、WHIPに目を向けるとキャリア通算が1.23と、平均値である1.32よりも優秀な数値に。1.10未満のシーズンが4度、0点台のシーズンが2度と優秀な数値を残したシーズンも少なからず存在し、四球を出しながらも走者自体はそこまで多く溜めていなかったということがわかる。それを可能にしたのも、内投手が備えた容易に安打を許さないだけの各球種の質の高さと、高い奪三振力によるところが大きいだろう。

 被本塁打率の面では、2013年と2015年はいずれも年間被本塁打が0本という見事な成績を残している。だが、キャリア通算の数字は0.748と低いとは言えない水準で、年によってややばらつきが大きい傾向となっている。その中でも、防御率が5点台以上だった2004年、2009年、2014年はいずれも被本塁打率が1を超えており、被本塁打が多いか否かが、内投手の調子のバロメーターの一つだったと考えられそうだ。

年間わずか5四球の2015年をはじめ、抜群の制球力を活かして余分な走者を許さず

 同様に、大谷投手が記録した各種の指標について振り返っていきたい。

大谷智久投手 年度別各種指標(C)PLM
大谷智久投手 年度別各種指標(C)PLM

 内投手とは対照的に、大谷投手は奪三振率という面ではさほど高い数値を記録してはいなかった。2015年と2018年には7点台を記録したものの、それ以外の8シーズンはいずれも5点台以下という数字に。大谷投手の投球スタイルが典型的な打たせて取るタイプのものだったことが、指標の面からもうかがい知れる。

 それでもリリーフとして安定した投球を見せられていた理由は、四球で走者を許すケースが少なかった点にある。キャリア通算の与四球率も2.10と高水準の数値だが、中でも2015年は、56試合に登板して与えた四球がわずかに5個という、まさに驚異的な数字を記録。前年の2014年も49試合で与四球率1.49と優秀な成績を残しており、この2シーズンにおいてはとりわけ優れた制球力を示していたといえよう。

 四球の少なさはK/BBにも好影響をもたらしており、先述した2015年には10.60という圧倒的な数字を残した。また、その前年の2014年にも、4.00という優れた値を記録している。元々奪三振自体は少ない投手なだけに、シーズンごとの振れ幅は大きかったものの、キャリア通算の数字は、奪三振率の高い内投手を上回る数値となっている点も興味深いところだ。

 被本塁打率に関しては、内投手と同様に、シーズンによるばらつきがやや大きくなっていた。2014年から3年間は0.6未満に抑えていたが、1.2を上回るシーズンも3度存在。被本塁打率が1.5以上だった2013年と2018年はどちらも与四球率が3を超えており、四球という面だけでなく、被本塁打を防ぐうえでも、持ち前の制球力が生命線となっていたことがわかる。

 WHIPの面でもキャリア通算の数値は平均値の1.32を下回り、2014年から2年間は、いずれも1を下回る数値を記録。この2シーズンの投球内容が非常に優れていたことが、これまで取り上げてきた各種の指標からもうかがえるところだ。それ以外の年でも、防御率が3点台以下だった年のWHIPは概ね安定した水準にある。奪三振率が低くとも、四球の数を抑えて不用意な出塁を許さないことにより、さほど走者を溜めはしなかったと言えるだろう。

両投手の投球スタイルは大きく異なるが、その貢献度の高さは共通していた

 その投球スタイルが対照的なものであったことは、投球内容から受ける印象だけでなく、今回紹介した各種の指標においても証明されている。それでも、この2名には確かな共通点がある。ともに10年以上にわたってマリーンズのユニフォームを身にまとってプレーし、リリーフとして数多くのピンチを救い、チームを支える存在となってくれたという点だ。

 伝家の宝刀・スライダーと快速球で打者をきりきり舞いにした内投手と、豊富な球種と優れた制球力を武器に、冷静に打者を打ち取っていった大谷投手。ともに昨季限りで惜しまれながら現役を退くかたちとなったが、応援団の声援を背に受け、幾度となくチームを救ってくれた両投手の雄姿を、幕張のファンが忘れることは決してないだろう。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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