田中将大(たなか・まさひろ)/投手
#18/1988年11月1日生まれ/右投右打
2021年1月28日17時半ごろ、楽天は球団公式サイトで田中将大投手と契約合意したことを発表した。2013年に、開幕から無傷の24連勝を達成し、最多勝、最優秀防御率、最高勝率、沢村賞など投手部門のタイトルを総なめ。さらには球団創設9年目で、悲願のリーグ優勝と日本一を達成した楽天をエースとしてけん引した、まさに「伝説の男」が帰ってくる。
田中投手が生み出した数々の「伝説」の始まりは、2006年にまでさかのぼる。駒澤大学附属苫小牧高校で、エースとしてチームをまとめ第88回全国高等学校野球選手権大会に出場。決勝戦では斎藤祐樹投手(現・北海道日本ハム)率いる早稲田実業高校と対戦し、延長15回まで対戦するも決着つかず。翌日の再試合でも力投を披露。1点ビハインドで迎えた最終回、最後は田中投手自身が打席に立ち、斎藤投手と対戦した。結果は空振り三振。優勝まであと一歩届かなかったものの、その高校球史に残る名勝負は、今なお語り継がれている。
同年のドラフト会議で4球団競合の末、東北楽天ゴールデンイーグルスに入団。当時楽天は球団創設2年間で2年連続最下位と苦しんでいた時期だった。
当時楽天を指揮していたのは故・野村克也氏。野村氏との出会いが田中投手に大きな転機となる。高卒1年目にも関わらず積極的に起用し、田中投手の荒削りだった部分を一から指導した。3年目の2009年には15勝をマークし、クライマックスシリーズ(CS)に進出。2011年からは闘将、故・星野仙一氏のもとでプレー。同年3月11日に発生した東日本大震災で大きな被害を受けた東北に、「日本一」という結果で勇気づけることを誓った。
そして、2013年伝説が生まれる。圧巻の投球を展開し、シーズンを投げ抜いた。力強いストレートと繊細なコントロールを武器に、女房役・嶋基宏選手(現・東京ヤクルト)とのバッテリーで築いた勝ち星は「24」。無傷の24連勝、そして投手部門のタイトルを総なめという前人未到の記録を打ち立てた。チームも一丸となり、リーグ優勝と日本一を達成。被災地に希望を届けた。
2007年からの7年間で99勝35敗、防御率2.30というすばらしい成績を残し、翌2014年にはメジャーへ挑戦することを表明。名門ニューヨーク・ヤンキースと7年の大型契約を結び、アメリカで新たなキャリアをスタートした。日本でも定評があった、スプリット(SFF)、スライダー、カーブなどの多彩な変化球を操り、MLBの7年間で78勝46敗、防御率3.74という堂々たる数字を残す。
しかし今オフ、コロナ禍でMLBの球団編成も苦しい状況に。ファンや地元メディアに惜しまれながらも、ヤンキースと契約合意とはならず、その去就は大きな注目を浴びていた。そこで獲得に名乗りをあげたのが古巣・楽天だった。そして2021年、田中投手がメジャーへ行っても交流を続けてきた球団の気持ちが、ついに実を結んだ。再び楽天の背番号「18」が動き出す。
今年は東日本大震災から10年を迎える節目の年。田中投手も特別な思いを抱いて日本でプレーすることとなるだろう。MLBでの7年間で円熟みを増して帰ってきた「伝説の男」が日本で再びどのような活躍を見せるのか。ますます今季のパ・リーグから目が離せなくなる。
文・小野寺穂高
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