“お化けフォーク”を見極める巨人打線…甲斐拓也が今明かす日本シリーズ第1戦のせめぎ合い

Full-Count 福谷佑介

2020.12.2(水) 10:11

福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)
福岡ソフトバンク・甲斐拓也※写真提供:Full-Count(写真:藤浦一都)

重要な第1戦で巨人打線は千賀のフォークを徹底して見極めてきた

 25日まで行われていた「SMBC日本シリーズ2020」で巨人に4連勝し、4年連続の日本一に輝いた福岡ソフトバンク。2年連続のスイープでセ・リーグ覇者を倒した日本シリーズで巨人打線を徹底的に封じたのが屈強な投手陣と4試合すべてでマスクを被った甲斐拓也捕手のバッテリーだった。

 チームの日本一に大きく貢献した甲斐が日本シリーズの戦い方や心境を明かしたFull-Countの単独インタビュー第3弾。今回は4試合の中でも最も重要視していた第1戦にスポットを当てる。

 福岡ソフトバンクは千賀滉大投手、巨人は菅野智之投手と両エースの投げ合いとなったシリーズ第1戦。結果で言えば、シリーズMVPに輝いた栗原陵矢捕手が2回に菅野から先制2ランを放つなど、3安打4打点の活躍で福岡ソフトバンクが快勝した。この初戦で勢いづいた福岡ソフトバンクは一気に日本一の座まで駆け上がった。

 この第1戦で巨人サイドは先発の千賀に対して、徹底した対策を講じてきていた。それが千賀の武器である“お化けフォーク”封じ。初回こそ坂本勇人がフォークで空振り三振したものの、その前の松原聖弥の5球目、2回の丸佳浩への4球目、5球目と、巨人の選手たちは千賀のフォークの前にピタッとバットが止まった。

 甲斐は言う。「フォークの落ちは悪くありませんでした。あの日はめちゃくちゃいいフォークを投げていました」。千賀のフォークの斬れ味は決して悪くない。それなのに空振りしない。巨人打線がチームとしてフォークを“捨てる”対策に出てきていた。

「正直、最初は『あれ? 振らないな』と思いました。1打席目の丸さんの打席でしたね。4球目、5球目の2球はストライクからボールになるいい球だったけど、振らなかった。その時点で『あれ?』とは思いました。チームとして徹底してやってきていると感じました」

「振ってこなかったとしても、その球を使って見えるものがある」

 巨人打線はフォークを徹底して見極めにきていた。実際に千賀がフォークで三振を奪ったのは2つしかない。ただ、そこでフォークを配球から外して使わなくなってしまえば、それこそが巨人サイドの思う壺。千賀と甲斐のバッテリーは話し合い、フォークの使い方を変えた。

「フォークを消すつもりはありませんでした。いいフォークを投げていたので消す必要もなかった。振ってこなかったとしても、その球を使って見えるものがある。千賀にもそういう話はしました」

 決め球にはせずとも、カウントを整える上で使ってみたり、誘い球や打者の狙いを図る“布石”に使ってみたりもした。リードの中心をストレートとカットボール、スラーブにした。以前にも書いたようにキーマンに定めた岡本を徹底的に抑え込みつつ、巨人打線を7回まで3安打無失点に封じた。

 フォークが見極められても、抑えられると導き出せた根拠もあった。「ストレートも良かったし、力もあった。ストレートをパチンと合わされることもなかったですし、力で押せるところは押せると思いました。フォークを投げて振らなかったら、真っ直ぐで通せるよね、と」。千賀のストレートなら、力でねじ伏せられる。そう信じた。

 フォークを決め球として封じられた福岡ソフトバンクのバッテリーだったが、それを考慮に入れた上で、フォークを生かした組み合わせで巨人打線を抑え込んだ。「何より千賀が良く投げてくれた結果かなと思います」と振り返る甲斐。シリーズの行方を決定づける第1戦のせめぎ合いだった。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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