“大物助っ人”の移籍加入も多数
毎年多くの外国人選手が、日本球界で挑戦を始める。さまざまな面で特殊なシーズンとなった今季だったが、新たに加入した助っ人の中には、MLBで実績を残した“大物”も少なくない。また、国内他球団で活躍した選手が、別のユニフォームで変わらぬ存在感を見せつけるケースもあった。
そして、パ・リーグ6球団の新加入助っ人の最終成績を確認すると、各球団最低1名以上は、チームの重要な戦力になっていたことがわかる。前評判に違わず活躍した、あるいは適応に苦しんだ選手たちについて振り返っていきたい。
北海道日本ハムファイターズ
バーヘイゲン投手は150km/h台後半に達する快速球を武器に、来日1年目の今季から先発ローテーションの一角に定着。投球回とほぼ同数の奪三振を記録し、防御率も3点台前半と安定している。1試合で6盗塁を許すなど、走者を背負った場面でのクイックモーションを苦手としていたものの、今季最終登板となった10月28日のオリックス戦では、見事来日初完投・初完封を飾った。
巨人から移籍してきたビヤヌエバ選手は、チームが固定しきれていない三塁手候補として54試合に出場。高い守備力と好走塁で存在感を発揮するシーンもあったが、打撃では昨季の打率.223、8本塁打という成績を下回った。2018年にパドレスで20本塁打を放った長打力を、いまだ日本では発揮しきれないままだ。
東北楽天ゴールデンイーグルス
オリックスから移籍加入したロメロ選手は、24本塁打を記録するなど見事な打棒を披露。9月は打率.195と不振に陥ったが、最終的にはOPS.893(リーグ5位)と強打者に相応しい数字でフィニッシュ。今季苦しんだブラッシュ選手の代わりに、中軸として打線をけん引する活躍を見せた。
シャギワ投手は、開幕からブルペンの一角としてフル回転し、26試合に登板した時点で防御率2.82と安定した投球を見せていた。しかし、そこからの3試合で10失点と急激に調子を崩し、二軍降格を経験する。イニング跨ぎを三度こなすなど献身的な姿勢も見せていたが、31試合登板、防御率5.81でシーズンを終えた。
埼玉西武ライオンズ
ギャレット投手は、主に中継ぎとして49試合に登板。8月8日の北海道日本ハム戦で162km/hを記録するなど、剛速球を主体としたパワーピッチを展開し、8月20日の時点で防御率1.19と、抜群の安定感を見せた。シーズン中盤には調子を落としたものの、10月3日の千葉ロッテ戦ではブルペンデーの先発として2.2回を無失点に抑える。幅広い起用に応え、チームの投手陣を支える貴重なピースとなった。
ノリン投手は来日初登板が8月29日の楽天戦と出遅れたものの、6回を3失点にまとめて初勝利を飾る。続く9月5日の北海道日本ハム戦でも、さまざまなフォームを使い分ける“幻惑投法”を武器に、6回2失点10奪三振と好投した。しかしその後は2試合続けてノックアウトされ、9月26日の楽天戦では1イニングわずか8球で緊急降板。そのままそれが今季最後の登板となった。
2011年MLBドラフト1巡目指名選手であるスパンジェンバーグ選手は、三塁と外野を兼任するユーティリティ性が持ち味。さらに15本塁打のパンチ力に加え、12盗塁、リーグトップ8本の三塁打を記録するなど、“足”での貢献も大きかった。調子の波があるものの、汎用性の高さと大事な局面で飛び出す一発で、着実にチームの助けとなっている。
千葉ロッテマリーンズ
楽天から移籍してきたハーマン投手は、開幕から勝ちパターンの一角を担う。7回または8回を任されるセットアッパーに定着し、僅差の試合を確実に拾うチームの戦いぶりを支えた。9月15日の埼玉西武戦後に利き手の負傷が判明し、戦線離脱を余儀なくされたが、シーズン終盤に復帰。チームの2位躍進に確かに貢献した。
シーズン後半の9月に電撃入団したチェン・ウェイン投手は、言わずと知れた元中日の左腕エース。日米通算95勝の輝かしい実績をひっさげ、9年ぶりの日本球界復帰となった。しかし、登板した全試合でクオリティ・スタートを達成するも白星はつかず。11月15日に行われた福岡ソフトバンクとの「パーソル CS パ」第2戦では先発に抜擢されたが、3本塁打を浴びて負け投手となった。
入団時は育成契約だったフローレス投手は、3月に支配下登録される。初登板・初先発となった7月12日の埼玉西武戦で3回6失点を喫するなど苦戦したが、二軍降格を経て10月の再昇格以降は、ロングリリーフ要員に定着した。
オリックス・バファローズ
ヒギンス投手は、山岡泰輔投手の負傷により、急遽6月27日の千葉ロッテ戦で来日初登板を迎える。同点の9回裏、無死1,3塁という局面だったが、満塁策で敬遠した後、打者3人を打ち取って見事無失点で切り抜けた。その後も、9月終了時点で防御率1.74を記録するなどセットアッパーとして奮闘し、最終的にはチームトップの19ホールドを挙げている。
MLB通算282本塁打を誇る“正真正銘の大物メジャーリーガー”として、大きな期待を集めたジョーンズ選手。8月に5本塁打、9月に日米通算2000安打と随所で存在感を見せるものの、ゴールドグラブ賞4度の外野守備も精彩を欠き、攻守で本領発揮とはいかないままシーズンを終えた。ロドリゲス選手は7月10日の北海道日本ハム戦でサヨナラ3ランを放ったが、ジョーンズ選手と同じく日本球界への適応に苦しみ続けた。
福岡ソフトバンクホークス
MLB通算54勝の実績を持ち、2013年にはオールスターにも選出されているムーア投手は、貴重な左の先発として開幕ローテーションに名を連ねる。約2カ月間の故障離脱に見舞われたものの、復帰後は11試合で6勝と存在感を発揮。シーズン終盤のチームの快進撃に貢献した。
シーズン60本塁打の日本記録保持者・バレンティン選手は、野球ファンなら誰もが知る元東京ヤクルトの主砲。昨季も33本塁打を記録していたこと、ジュリスベル・グラシアル選手とアルフレド・デスパイネ選手の来日が遅れていたことで、ファンや首脳陣からは当然大きな期待を寄せられていた。しかし、なんと打率1割台、本塁打も一桁と絶不調。8月中盤以降は1打点も挙げられず、シーズンを終えてしまった。
2020年変則シーズンはひそかな豊作年?
今季は、MLBで長年にわたって一線級の活躍を見せたオリックスのジョーンズ選手、日本球界で圧倒的な実績を誇る福岡ソフトバンクのバレンティン選手といった大物野手が、思わぬ苦戦を強いられた。一方、北海道日本ハムのバーヘイゲン投手や福岡ソフトバンクのムーア投手など、及第点以上の成績を残した選手は比較的投手が多い。
即戦力としての働きを期待されているため、毎年多くの外国人選手が来日し、そしてわずかな期間で離れていく。そんな中で、各球団1名以上は来季につながる活躍を見せた今季は、前評判とはまた違った形ではあるものの、外国人選手の豊作年と言えるかもしれない。彼らは今後も持ち前のパワーや技術を生かし、頼もしいプレーを継続することができるだろうか。
文・望月遼太
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