球界の名参謀・橋上秀樹さんが見たパ・リーグの今〜埼玉西武編〜 「王者として勝ち続ける難しさ」

パ・リーグインサイト 本間奈保子

2020.8.17(月) 16:30

(C)PLM
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 埼玉西武で2016年から2018年まで一軍作戦コーチとしてチームに貢献した橋上秀樹さん。現在のライオンズの礎を築いた橋上さんに、今シーズンのチーム状況、3連覇の可能性について聞いた。

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新人台頭も、チームの勢いを感じない

ーー現在(取材は8月4日)ライオンズはパ・リーグ4位。今のチーム状況をどう見ていますか?

優勝候補の一つだったので、予想外ですね。なんといっても、今年は打てていない。森(友哉)にしても山川(穂高)にしても、打率が非常に低いですね。森にとってはプロに入ってきて初めて、特に大きな壁に当たっている感じがあります。昨年あれだけ素晴らしい活躍をしたということで、他球団が森への対策をしっかり立てて挑んできているというところが数字に出ているのかなと思いますけどね。

ーー昨年まで不動だった打線が今年は試行錯誤している状態です。

源田(壮亮)は入団した時からずっと成績が良かったけれど、今年は良くないですよね。外崎(修汰)にしても、森にしても、山川にしても、みんな調子が良くない。首脳陣としては、打線の調子が悪い時はどうしても打順をいじらざるを得ない。

昨年まで不動でいけたのはそれぞれの選手が成績を残していたのでそれで良かったのですが、今年は不調の選手が非常に多いので、首脳陣もより良いつながりを探している段階ですね。

ーー鈴木将平、川越誠司などの新しい選手が台頭してきています。

秋山翔吾が抜け、金子侑司が故障していることによって出番がある訳ですから、チャンスを生かして頑張っていますね。だけど、長続きしない。チームの状態が良ければ彼らも好調の時間がもっと長く続いたと思うんですよね。チームとして勢いというのが欠けているのかなと感じます。

ーー攻撃陣の成績が良くない理由をどう考えますか?

言い方は悪いですが、連覇していることで気の緩みがあるのではないかと思います。やはり、勝っているチームより負けたチームの方が必死になって策を練りますから。パ・リーグ5球団はしっかりと研究をして抑えているなと思います。だからこそ、何年も連続して勝つことは難しいんですよ。

ーー勝ち続けるためには何が必要でしょうか?

勝ちに慣れていくと、選手がマンネリ化するとか、モチベーションが上がってこないとか、そういうところは出てきてしまいます。ところがチーム内の競争が激しいと、ウカウカしているとゲームに出られなくなります。その競争意識がチームを活性化される一つの大きな要因ですよね。

つまり、選手層の厚さがチーム内の競争を激しくし、ひいてはチーム力を停滞させない、常勝といわれるチームの基本的な形だと思います。

ーー今年のライオンズは機動力を生かしきれていないイメージがあります。

結局、動けないんだと思います。ランナーが塁に出ていないし、勢いがないのでスタートを切りづらい。去年一昨年は盗塁アウトになってもどんどんランナーが出ていたので、少々無謀でも仕掛けるところがありましたけど、今はランナーが出ていない。これだけ極端に出塁率が低下してくると、出たランナーに対して用心深くというか、丁寧な攻撃になりがちですよね。

流れを変えるエースの快投と打線の復調が優勝へのカギ

ーー投手陣はいかがでしょうか。

今年パ・リーグは同一カード6連戦なので、ローテーションが非常に難しいです。勝てないピッチャーは比較的ずっと勝てない流れができてしまうかもしれないので、今までにないローテションの組み方が必要になってきます。エース同士ぶつけ合うのか、あえて避けて組むのか、戦略的にどうやっていくのかも見ものです。

6連戦となると球場も相手も変わらないので、流れを変えるのが難しくなります。CSのセカンドステージに似ていますよね。大きな連勝も大きな連敗もあり得そうです。チームが負け込んだ時に嫌な流れを断ち切れるピッチャー必要になってくると思います。

ーー期待している投手は誰ですか?

頑張っている選手はいるんですけど、僕はもうちょっと今井達也が勝てると思っていました。先発ローテーションを回せて、勝ちを計算できるのがザック・ニールと今井くらいかなと思っていたのですが、相変わらず中継ぎの平井克典とかに勝ち負けが付く。先発ピッチャーに勝ち負けがつかないのはチームとしてあまりよくないですよね。平良海馬、平井、増田達至、この辺は中継ぎとしていいほうなので、彼らにつなぐまでの先発、あとは中継ぎをもう1枚整備する。先発が6回までもたないことが多いので、先発をもう1イニング頑張らせるのか、6回を任せられるピッチャーを作っていくかというところですね。

先発ピッチャーに関して言えば、今井、高橋光成、本田圭佑とか、この辺の若いピッチャーがもうちょっと勝てると思っていたんですけどね。

ーーリーグ3連覇を目指す上で必要なことは何でしょうか?

まだまだ30数試合の段階ですから、本来であれば先発ピッチャーがフレッシュな状態のはずです。それなのに現状では先発が機能していなく、中継ぎへの負担が大きい。これから疲れや暑さで調子が落ちてくることを考えると、なかなか苦しいですね。

ただ、打線が回復すれば先発ピッチャーにも勝ちは付くと思うんですよね。今までライオンズが連覇してきたのも、ピッチャーが打たれてもそれ以上にバッターが打っていたわけで。攻撃陣が機能していくことによってピッチャーを助けていくのが本来のライオンズの勝ち方なので、そういう意味ではまだまだ上を目指していけると思いますよ。

ーー上位を目指す上で、キーマンを教えてください。

森、源田というところが大きいですよね。

山川の前を打つ選手が出塁率を上げていかないと、山川の長打というものが効果的に生きないです。調子が上がってこないことを本人たちは重々承知していると思いますし、元々彼らはすごく練習をする選手なので、今でもしっかり練習はしているはずです。若いのでその練習がいい結果として現れてくると思いますし、苦しい状況を乗り越えてさらに素晴らしい選手になっていってほしいですね。

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パ・リーグインサイト 本間奈保子

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