首位打者、本塁打王と並び、打撃の三冠タイトルの一つと位置づけられている「打点王」。しかし、塁上に走者が1人もいない場合は、打者は最大でも1打点しか挙げることができない。そういった事情もあり、打点という指標は、前を打つ打者、ひいては打線全体の機能性に少なからず影響を受けるものでもある。
そこで、今回は直近10年間のパ・リーグにおいて打点王を獲得した選手たちと、その所属球団が記録したチーム全体の打撃成績を見ていきたい。さらに、歴代のシーズン打点記録でトップ10に入った選手たちと、当時の所属球団の打撃成績についても同様に確認し、はたしてどれだけの相関性が見られるのかをチェックしていこう。
打点王を輩出している球団は、2つの分野で優れた数字を記録する傾向にある
まずは、直近10年間のパ・リーグにおける打点王と、その所属チームについて確認したい。その結果は以下の通りだ。(所属は当時)
以上のように、チーム得点数の面では1位が3回、2位が4回と、打点王が所属しているチームは、やはりリーグ内でも得点力が高い傾向にあった。しかし、2010年の北海道日本ハムは得点数がリーグ5位、2012年のオリックスは同6位と、チーム全体が得点力不足に苦しむ中で、打点王が孤軍奮闘するケースも中には存在していた。
とりわけ、2012年のオリックスは打率、得点、安打、盗塁の4部門でリーグ最下位の数字となっており、李大浩選手の打点がチームの全得点の20.5%に達する状況に陥っていた。特定の選手にポイントゲッターとしての役割を依存するチームが生まれることは往々にしてあるものだが、打点王に輝いた選手が所属するチームの打線がここまで不振にあえいだ例は珍しいだろう。
しかし、2014年以降の6年間においては、打点王が所属していたチームの得点数がいずれもリーグ1位か2位であり、近年における打点王と所属チームの成績には一定の相関性が見受けられる。また、直近4シーズンはいずれも打点王が輩出したチームがリーグ優勝を果たしており、打点王を擁するチームは攻撃面の機能性のみならず、チーム状態そのものが優れていたと言えそうだ。
歴代打点ランキング10傑の選手になると、傾向はより顕著に
続いて、歴代のシーズン打点記録のトップ10に入った選手と、その打撃成績についても同様に見ていきたい。その結果は以下の通りだ。(所属は当時)
まず、ここで取り上げた10選手のうち、7名の所属チームが該当年にリーグ1位の得点数を記録している点が目を引く。残りの3名中2名も所属チームの得点数がリーグ2位であるだけでなく、小鶴氏、藤村氏、西沢氏の3名は同じ年の同一リーグ(1950年のセ・リーグ、8チーム制)に所属していた事情もある。極めて高いレベルの数字を記録した選手の所属球団は、やはりチーム全体の得点力も優れていたと言えそうだ。
1位の小鶴氏が所属した松竹、2位のローズ氏が所属した横浜は、いずれも該当年にリーグトップの打率と得点数を記録。この2チームをはじめ、打率の面でも10チーム中6チームがリーグ1位の数字を記録していた。やはり、得点数とチャンスメイクの両面において、非常に優秀な打線を要していたチームが多かったことがうかがえる。
驚異的な打点数を記録しているポイントゲッターと相対する際には、相手バッテリーもピンチの場面でとりわけ警戒を強めるのが自然だろう。しかし、他の選手も総じて警戒が必要なレベルの強力打線を擁するチームであれば、勝負を避けられたり厳しいコースを突かれる可能性も減ってくる。
それに加えて、上記の各球団の高いチーム打率に象徴されるように、チーム全体がチャンスメイクにも長けているとあれば、より個人が打点を稼ぎやすくなるのも当然だ。傾向としては近年のパ・リーグと同様だが、歴代トップクラスの数字を記録した選手を擁するチームであれば、チーム全体の打線の完成度もそれ相応に高くなってくるのだろう。
打点王は強力な打線と、優れたチーム状態の賜物と言えるか
以上のように、打点王と所属チームの打撃成績には一定の相関性が見られたといってよさそうだ。さらに、歴代打点ランキングのトップ10に入った選手たちの場合は、その傾向がより顕著となっている。以上の点からいって、打点王と、その所属チームの打線全体の機能性には、十分に関連があると考えられるのではないだろうか。
また、先述の通りに直近4年間は打点王を輩出したチームがいずれもリーグ1位の勝率を記録しており、打点王が在籍しているチームは、打撃成績のみならずチームの順位も優れている傾向がある。これは歴代打点ランキングの場合も同様で、打点王を獲得する選手を輩出できるほどの打線を構築できたチームは、やはり成績面でもその恩恵を得られているようだ。
一種の縁起の良いジンクスともいえるこの流れは、果たしてこれからも継続していくのだろうか。近年は打線の機能性のみならず、チームの調子のバロメーターとしての側面をより強めつつある「打点王」の行方に、今後も注目していく価値はありそうだ。
文・望月遼太
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