北海道日本ハム中田翔が言葉に変えた「感覚」 栗山監督が説いた「みんなの力」の意味

Full-Count 石川加奈子

2020.5.22(金) 14:30

北海道日本ハム・中田翔※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)
北海道日本ハム・中田翔※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)

中田が語った「ボールのちょっと下にバットを入れてあげるという感覚かな」

 プロ野球開幕を心待ちにしながら北海道日本ハムの取材ノートを整理していたら、思い出深い言葉を再発見した。「F取材ノート~心に残ったあの言葉」として改めて紹介したい。今回は主砲の中田翔内野手だ。

「ボールのちょっと下にバットを入れてあげるという感覚かな」

 オープン戦1号を放った今年3月1日の本拠地オリックス戦後に披露した打撃理論の一端。例年より軽く振っているように見えるのに、飛距離は出ている。打撃がどう変わったのかという質問に対して、必死に言葉を探そうとする姿が印象的だった。「もちろん力を入れて振りにいくけれども、ボールを捉えにいく中で自分の感覚がちょっと変わりつつあるというか。なんて言えばいいかわからないけど……自分の感覚の問題なんでね」と言った後に続けたのが冒頭の言葉だった。

 選手が技術論に触れる時、最終的に「感覚」で終わってしまうことも少なくない。だが、この日の中田はより適切な表現を模索した。「今もボールをしばきにいく感覚はあるけど、その中でもちょっとなんだろう……。ヘッドを使う、ヘッドを立てる感覚があるんでね。昔は正直、力だけで飛ばしていた感覚だったけど。その辺はちょっと変わりつつあるのかな。まだ完璧ではないし、油断していたら今後どうなるかわからないけど、そういう風にはなりつつあるかな」。取材ノートに並ぶ文字を見ると、わかりやすい言葉を絞り出そうと一生懸命考えてくれていることがわかる。

北海道日本ハム栗山監督「いい質問をして、頭の中にある言葉と、やっていることを整理させてあげる」

 この一連のやりとりに興味を示したのは、意外にも栗山英樹監督だ。この話を伝え聞くと「あとはみんなの力だな」と嬉しそうに笑った。“みんな”とは我々報道陣のこと。「みんながいい質問をして、彼の頭の中にある言葉と、やっていることを整理させてあげる。彼が1年間活躍できるかはメディアの力(次第)だな」と語っていた。

 それは栗山監督自身がスポーツキャスター時代に多くの選手に質問をぶつけ、実感したことだという。「感覚的なものをどう理論的に体系をつくって、良くなくなった時に整理して生かせるか。理論に変える必要はないかもしれないけど、何か引き出しに置いておけるものをたくさん作っておかないと。なぜいいのか、どういう感覚なのか。何か言葉に例えられるだろ。卵を触るようにとか、なんでもいいんだけど」と、選手が感覚を言葉にして整理することの重要性を説いた。

 今春のオープン戦は13試合に出場して打率.344、チームトップの3本塁打9打点と絶好調だった中田。つかみつつある新たな感覚をものにできれば、指揮官が期待する爆発的な活躍が見られそうだ。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

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