【レッズ・秋山翔吾のシンシナティ・ノート Vol.2】右も左もわからない……どうなるキャンプイン

氏原英明

2020.5.11(月) 19:00

 秋山翔吾がメジャーのキャンプに参加したのは2月中旬だった。
 
 連載第1回では、練習法の違いなど日米の印象を語ってもらったが、実践に入っていくなかでの違いに、秋山選手はどう対応していったのだろうか。WBCのたびに日本人バッターの課題とされてきた「動くボールへの対応」は、この舞台では当たり前になるが、果たして。今回は、環境への慣れについてや、米野球へどう順応していったのかを語ってもらう。
(文&インタビュー・氏原英明 編集・パ・リーグインサイト編集部)

「『人見知り』をしている意味はない」――日米1年目の違い

 キャンプインしてからかなり時間が経つので忘れかけていますけど、当初を思い出すと、久々に右も左もわからないという経験をしました。日本にいて、初対面の方と食事をしたりどこかへ行くとなれば、探り探りの気持ちになりましたけれど、基本的に僕のことをわかってくれている人がいた分、苦労したわけではなかった。自分が結果を出すために何をやらなきゃいけないのか、日本でやってきたものを出すことに集中していました。

 ただ、日本のプロ1年目の時と違うのは、ロッカーにいるときに、コミュニケーションをとるようになったことですかね。社会人として、大人として必要だなとプロに入ってから勉強させてもらったのもあるので、自分から挨拶に行くことが増えました。

 通訳のルークが居てくれるので困ることはないですけど、待つだけじゃだめだなっていうのはすごく感じていたから、ルークが多忙な時でも、自分から挨拶して、相手が喋ってくれたことを何とか聞き取ろうっていうことをしていました。それがメジャーに来てからの自分の変化かもしれないですけど、これまでの経験から新しいところに入るにあたって、いろんな失敗もあれば、良かったことも過去にはありました。

 その経験があったから『人見知り』をしている意味はないなと思ったんです。チームメイトになじむ、仲良くなっていきたいと本心で思っているのに、最初から探り探りしながらいて、なるべく人に触れないように過ごしていくのは無理だと思った。

 だから、秋山がどういう人間か、良く言えば『わかってもらう』だし、悪く言えば『バレる』のも早いほうが理解し合えるじゃないですか(笑)。どんな人間かわからないまま平行線で行くのは時間のロスだし、なにかコミュニケーションをとらなきゃいけない大事な時にとれないっていうのが困るから、自分から積極的にしていますね。日本にいる時よりもちょっとバカやってると思います。

 こうやってキャンプが中断することになって、残念だなって想いのほうが強くあるんですけど、それはスプリングトレーニングでチームメイトとの関係性を含めて、いい環境でやらせてもらっていたからなんでしょうね。

メジャーの動くボールとフォーシームにどう対処するか

 実戦が始まっていくなかで、日本人のテーマとして動くボールにどう対応していくかというのがあるじゃないですか。それに関しては、日米野球で感じたのとあまり変わらなかったです。WBCのときは球が動くって言われましたけど、実際、動くボールを投げてきたのって、アメリカの投手くらいだったんですよね。

 だから、むしろ、2018年の日米野球の時の経験が大きかったです。カットやツーシームを投げるピッチャーがいれば、フォーシームのピッチャーもいた。結構、差し込まれていたこともあった。いろんなタイプがいるんだなっていうのがあの期間で感じられた。だから、アメリカに渡るにあたって、両方の準備しておかなきゃなって思っていたんです。

 ただ、キャンプ中はどっちかというとフォーシームをどうやって打つかっていう方が課題でした。

 実際に、こっちに来てから間が取れないということが問題としてありました。ノーステップにしようか、すり足にしようか、足を早めに上げようかというのを、オープン戦の期間も含めてどんどん変えていたんです。まず自分のスイングをつくらなきゃなと考えて、最後の数試合で固まりました。その時に、ヒットがまとめて何試合か出た。ただそれはツーシームへの対応がどうこう、フォーシームがどうこうってより、自分の間をつくるということのほうにあったんですよ。ツーシームを打たされたくないと強く思うよりも、フォーシームをちゃんと打たなきゃいけないない。体感は早く感じましたからね。でも、それは球種より自分の対策の問題だった。

試行錯誤の末のバッティングフォームの変化。手本にしたのは……

 バッティングフォームに関していうと、大きな変化はヘッドを一回外に出す形にしたんですけど、今までの僕ではあまりやらないことでした。それをすると速いボールに対してファウルになっちゃうんじゃないかなという怖さから、あまりできなかったんです。ムース(マイク・ムスタカス内野手)がそうしているのを見て、一回やってみようと思ったら、いろんな球種に対してヒットになるイメージができた。間合いも含めてハマった感じがありました。あれをずっと続けてずっと打てるかどうかわからないですけど、振り負けたくないという気持ちが消えたんです。

 それまではフォーシームに対して振り負けないスイングをしようとしていましたけど、じゃあどうやってヒットになるイメージがあるの? って言われたらあまりなかった。足をどういう動きにするとか散々迷っていたなかで、手の角度や立つときの重心がいい方向に向きはじめた。本来、僕の感覚からすると、手から動かすのはご法度なんですよ。崩れる原因にしかならないと思っていたからなんですけど、今回の場合に関してはまさかでした。こうやって振れば重心が乗るんと掴めたのは大きかったです。

レッズ本拠地・シンシナティの印象

 世界が正常になってシーズンを迎えることになれば、シンシナティでプレーすることになりますが、シンシナティは静かな街という印象ですね。まだ3,4日しかいなかったので、何とも言えないですけど、比較的静かなところだと感じました。今、L.Aもこんな状況なので違いがちょっとわからないですけど、そんなに人が行きかう感じではなかったですね。都市という感じはなくきれいな街だなと。

 これからどういうかたちで開幕していくのか、トレーニングの強度はシーズン中より追い込んでいるというと言いすぎですけど、強めにやっています。開幕が迫ってきたら、もしかしたらマシンを打つとか、ショートゲームを増やすとか、強いボールを投げてもらうとかそういうのに切り替えていく可能性はありますけど、見えないものに飛ばしていくと段階を上げるアクセルがなくなってしまう。

 開幕までにはキャンプが何日間かあると思うので、今はトレーニングがメインですけど、その期間でトレーニングと実践感覚の強度を揃えていく感じになると思います。

今回のプライベートショット

カリュータワーから撮ったシンシナティの街並みです。

◇秋山選手の最新情報はこちらでも
https://falls-a.com/

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シンシナティ・ノート Vol.1 経験しないとわからない想定外の話

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氏原英明

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