新助っ人にとって、開幕前の期間は重要なものとなるが……
NPB初挑戦の外国人選手たちにとって、シーズンが始まるまでの期間は、日本球界に慣れるという意味でも重要なものとなる。だが、オープン戦では結果を残せなかったものの、レギュラーシーズンに入ってからは大きな活躍をしてみせた助っ人たちも、過去には多くいた。もちろん、オープン戦の段階から日本球界に適応して好成績を残し、そのままシーズンにおいても活躍を見せた選手たちもまた存在した。
その一方で、オープン戦では好成績を残したが、開幕後は苦しいシーズンを送った選手や、オープン戦とシーズンの双方で日本球界に適応できないまま終わってしまった選手もいる。その結果、残念ながら本来の実力を発揮しきることなく、日本球界を1年で去ることになってしまった外国人選手たちの数も少なくはない。
以上のように、オープン戦での成績とシーズンでの成績がある程度リンクする場合とそうでない場合があるが、その内訳はどのようなものになっているのだろうか。今回は、直近5年間のパ・リーグにおける、過去にNPBへの在籍歴のない新外国人選手のオープン戦での成績と、同年のレギュラーシーズンで残した成績を比較していこう。
なお、今回の記事では「投手:防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは4本塁打以上」という条件を満たした選手をオープン戦で活躍したと定義し、同様に「投手:防御率4点台以上、野手:打率.240未満」の選手をオープン戦で活躍できなかったと定義している。
同様に、レギュラーシーズンでの活躍の基準は、「投手:シーズン9勝以上、あるいは30試合以上に登板して防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは30本塁打以上」を満たした選手を活躍できたとし、「投手:防御率4点台以上、野手:打率.230以下」の選手を活躍しなかったとして定義する。
オープン戦で苦しみながら、シーズンで巻き返した選手たちの内訳は?
まずは、オープン戦では不振に陥っていたものの、レギュラーシーズンにおいては活躍を見せてくれた助っ人たちを紹介しよう。
2018年シーズンに揃って2桁勝利を挙げたマルティネス投手とボルシンガー投手は、それぞれオープン戦では不振だったものの、シーズンに入ってからは安定したピッチングを続けた。防御率を見る限りではハーマン投手、ヘルメン投手、ブセニッツ投手もオープン戦の時点では日本球界に適応しきれていなかったが、開幕後は安定感のあるリリーフとしてブルペンを支える存在となった。
一方、レアード選手、バース投手、ニール投手はオープン戦のみならず、レギュラーシーズンに入ってからもしばらくは本領を発揮できずに苦しんだ。しかし、徐々に日本球界に適応していくと、一軍の舞台で活躍を見せてチームに欠かせない存在となっていく。レアード選手とバース投手は2016年の北海道日本ハムのリーグ優勝に、ニール投手は2019年の埼玉西武のリーグ優勝に、それぞれ大きく貢献を果たしている。
人数的な内訳に目を向けると、投手7名、打者1名と、2015年のレアード選手以外は全て投手という極端な構図となっていた。レアード選手の事例は5シーズン前の2015年ということを考えると、直近4年間の例はいずれも投手ということでもある。
オープン戦とレギュラーシーズンの成績がほぼ一致した選手も
続けて、残念ながらオープン戦とシーズンの双方で、期待通りの活躍を見せることはできなかった選手たちについても紹介したい。
こちらは全部で9名と、オープン戦の不振からレギュラーシーズンで巻き返しを見せた選手(8名)とほぼ同じ数字となった。アルシア選手やドミンゲス選手のように、好調時には本来の実力の片鱗を垣間見せた選手は存在したが、残念ながらオープン戦の段階から日本球界に適応できずに終わってしまった選手も少なくはなかった。
また、アルシア選手、ドミンゲス選手、バルガス選手はMLBの舞台でも一定の活躍を見せた実績の持ち主だったが、残念ながら日本球界では期待通りの活躍は見せられず。一方、様々な国のリーグを渡り歩いてきたキャンデラリオ投手や、台湾球界でクローザーとして活躍したミゲル・メヒア投手のような興味深い経歴を持つ投手たちも存在したが、それぞれNPBには適応しきれなかった。
現在のパ・リーグはオープン戦でつまづいた助っ人野手に厳しい環境だが……
先に述べたように、現在のパ・リーグはオープン戦で結果を残せなかった外国人バッターにとっては厳しい環境であると考察できる。直近5年間でもMLBでキャリアを積んだ強打者たちがオープン戦から苦しんでおり、オープン戦の活躍が明暗を分ける要素となっている印象は否めない。
とはいえ、レアード選手はオープン戦で苦しんだものの、シーズンが深まるにつれて日本の投手に対応していき結果を出した。また、セ・リーグではドゥエイン・ホージー氏(元ヤクルト)やマウロ・ゴメス氏(元阪神)のように、オープン戦では不振だったものの、レギュラーシーズンでは来日1年目にいきなり打撃タイトルを獲得した助っ人も過去には存在した。
2020年のオープン戦でも、MLB通算282本塁打の実績を持つアダム・ジョーンズ選手(オリックス)が10試合で打率.100に終わった。新たに日本球界に挑む助っ人たちが、レアード選手のようにシーズンに入ってから本来の実力を発揮し、パ・リーグの投手を攻略する姿に期待したいところだ。
記事の後編では、オープン戦で活躍した外国人選手たちの中から、レギュラーシーズンで活躍できた選手と、残念ながらオープン戦同様の活躍を見せられなかった選手たち。そして、来日初年度のオープン戦に出場しなかった選手たちについて紹介し、総合的な傾向についても考察していきたい。
文・望月遼太
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