開幕前に好調だった新助っ人はどうなった? オープン戦と年間成績の相関性(後編)

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2020.4.23(木) 11:01

楽天イーグルス ブラッシュ選手【撮影:菊地綾子】
楽天イーグルス ブラッシュ選手【撮影:菊地綾子】

後編では、オープン戦で好調だった選手たちのその後を振り返る

 NPB初挑戦の外国人選手たちにとって、シーズンが始まるまでの期間は、日本球界に慣れるという意味でも重要なものとなってくる。その中の一要素であるオープン戦での成績と、シーズンでの成績がリンクする場合とそうでない場合はどちらも数多く存在するが、その内訳はどのようなものとなっているのだろうか。

 前編では直近5年間のオープン戦で結果を残せなかった新助っ人の中から、シーズンで巻き返して活躍した選手と、残念ながら最後まで日本球界に適応できなかった選手を紹介したが、今回は、同様の期間においてオープン戦で活躍を見せた選手たちのその後と、来日1年目のシーズンにオープン戦に出場しなかった選手たちについて紹介していきたい。

 なお、今回の記事では「投手:防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは4本塁打以上」という条件を満たした選手をオープン戦で活躍したと定義し、同様に「投手:防御率4点台以上、野手:打率.240未満」の選手をオープン戦で活躍できなかったと定義している。

 同様に、レギュラーシーズンでの活躍の基準は、基本的には「投手:シーズン9勝以上、あるいは30試合以上に登板して防御率3点台以下、野手:打率.270以上、あるいは30本塁打以上」を満たした選手を活躍できたとし、「投手:防御率4点台以上、野手:打率.230以下」の選手を活躍しなかったとして定義する。

オープン戦の好調を開幕ダッシュにつなげられなかった選手もいたが……

 まず、オープン戦の時点で一定以上の成績を残したうえで、シーズンにおいてもそのまま活躍した選手たちを紹介していきたい。

オープン戦、公式戦ともに活躍した選手(クリックで拡大)(C)PLM
オープン戦、公式戦ともに活躍した選手(クリックで拡大)(C)PLM

 ブラッシュ選手はオープン戦では好調な打撃を見せていたが、シーズンでは開幕からしばらく不振に陥っていた。また、グラシアル選手は外国人枠の影響もあり、なかなか一軍での出場機会が得られなかった。しかし、それぞれシーズン途中から一軍の舞台で活躍を見せ始め、最終的にはチームに欠かせない戦力となっている。

 その一方で、イ・デウン選手、シュリッター投手、ロメロ選手、アルバース投手といった面々は、開幕から好調を維持してチームにとって貴重な戦力となっている。比率としては投手6名、打者3名と全く同じとなっており、前編で紹介した、オープン戦では不振だったがシーズンでは活躍した選手(投手7名、野手1名)とは好対照となっているのも面白い。

 なお、2015年に来日したゼラス・ウィーラー選手は、打率.255、14本塁打と今回の「活躍した選手」の定義から外れたため図表には含まれていないが、オープン戦で打率.286と活躍を見せながら、シーズンでは中盤戦まで不振にあえいだ。だが、9月と10月だけで8本塁打をマークし、この期間の打率も.330を超えるなど終盤戦に目覚ましい打棒を披露。翌年以降は楽天の主砲として活躍を続けており、この項の選手たちに近い経歴と言えそうだ。

オープン戦で活躍するも、シーズンで苦戦した選手は数多い

 次に、オープン戦では好成績を残したものの、残念ながらレギュラーシーズンでは同様の活躍はできなかった選手たちについても紹介したい。

オープン戦で活躍するも公式戦は不振だった選手(クリックで拡大)(C)PLM
オープン戦で活躍するも公式戦は不振だった選手(クリックで拡大)(C)PLM

 ハーミッダ選手、ボグセビック選手、ダフィー選手、パラデス選手のように、オープン戦では打率.300前後の成績を残した選手も少なくなかったが、それぞれレギュラーシーズンでは同様の打撃は見せられず。また、打数は少ないながら2試合で2本塁打3打点、打率.800という驚異的な成績を残したナバーロ選手も、開幕後は期待通りの成績は残せなかった。

 また、レッドソックスとロイヤルズで世界一に貢献した大物助っ人のゴームズ選手は、オープン戦では打率.229ながら13試合で4本塁打8打点と持ち前のパワーを発揮したが、シーズンでは本来の実力を発揮できないまま5月上旬に退団と、短い在籍期間に終わってしまった。

 投手では、2017年のオープン戦でパ・リーグの投手の中では最も優れた防御率を記録したコーク投手や、少なくない数の登板で無失点リリーフを見せていたコーディエ投手とハンコック投手も、シーズンに入ると一転して打ち込まれてしまった。

 数としては合計17名とかなりの多さだったが、内訳としては2016年が6名、2017年が5名と、この2年間の人数がとりわけ多くなっていた。一方、2015年は1名、2018年は2名、2019年は3名と数が少ないシーズンもあり、年によってその数にはばらつきがあった。直近2年間における数が少ないのは明るい兆候とも言え、今季もオープン戦で活躍した選手たちには、シーズンでも同様の活躍を期待したいところだ。

オープン戦未出場の選手たちには不思議なジンクスが

 最後に、支配下選手として獲得された外国人選手の中で、1年目のオープン戦での出場がなかった選手たちを紹介したい。

オープン戦未出場だった選手の公式戦成績(クリックで拡大)(C)PLM
オープン戦未出場だった選手の公式戦成績(クリックで拡大)(C)PLM

 オープン戦に出場していなかった選手がシーズンで苦戦している傾向は一種のジンクスか。今回取り上げたオープン戦未出場の選手たちには、故障や病気によってオープン戦に出場できなかったという事情があった。そのため、調整が思うように進まず、オープン戦で日本の投手に対する経験が積めないことが、この「ジンクス」が生まれる要因の一つになったとも考えられる。

 そんな中で、バンデンハーク投手は外国人登録枠の関係で初登板が6月までずれ込みはしたが、その後は無傷の9連勝と圧巻の投球を見せ、チームの日本一に大きく貢献。そのまま主力投手の座をつかんだ活躍は特筆ものだ。残念ながら来日5年目となった2019年は故障に苦しめられてわずか3試合の登板に終わったが、ジンクスを打ち破ったオランダ出身の好投手が再び怪我を乗り越え、パ・リーグのマウンドで活躍する姿が見たいところだ。

総合人数が飛びぬけて多かったケースは?

 総合的な人数に目を向けてみると、以下のような数字となった。

オープン戦で活躍→公式戦も活躍:9名
オープン戦で活躍→公式戦は不振:17名
オープン戦で不振→公式戦は活躍:8名
オープン戦で不振→公式戦も不振:9名

 以上のように、オープン戦で一定の活躍を見せながらシーズンでは不振に陥ってしまった例が飛びぬけて多くなっている。オープン戦とレギュラーシーズンではバッテリーの配球が変化することはよくあるものだが、オープン戦で活躍した新助っ人がシーズンでも活躍する可能性は割合にすると20.9%と、期待値としては約5分の1となっている。

 また、それ以外の3つのケースはいずれもほぼ同数で、全体に占める割合の面でも極めて近いと言える。オープン戦で不振だった選手がシーズンで活躍するか否かは、今回採り上げた期間をサンプルとする限りではほぼ五分五分であり、期待の新戦力が不振だったからといって、過度に悲観する必要性は低いのかもしれない。

MLBでの実績十分な大物助っ人たちは、来日1年目にどんな活躍を見せるのか

 今回取り上げたマーティン投手とバース投手は帰国後、MLBの舞台においてもリリーフとして存在感を示した。また、日本では本領を発揮できなかったルブラン投手も、2018年にマリナーズで9勝を挙げる活躍を見せており、米球界復帰後に大活躍を見せる助っ人は少なくない。

 そんなジャパニーズ・ドリームを体現する選手たちの増加もあり、近年のNPBを取り巻く助っ人事情は徐々に変化しつつある。今季はMLB通算282本塁打の実績を持つ現役メジャーリーガーのアダム・ジョーンズ選手(オリックス)という超大物をはじめ、マット・ムーア投手(福岡ソフトバンク)、ジャスティン・ボーア選手(阪神)、アルシデス・エスコバー選手(東京ヤクルト)、ヘラルド・パーラ選手(巨人)といった、近年のMLBにおいてチームの主力を張っていた実績十分な新助っ人が多く来日している。

 そういう意味でも、今季新たに日本球界に挑戦を決めた助っ人たちがどのような成績を残すのかは、2020年のシーズンにおける非常に楽しみな要素の一つとなってきそうだ。その活躍ぶりを予想するにあたって、これまで紹介したオープン戦の成績とシーズン成績の例は一つの参考となるかもしれない。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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