「援護が多かったリリーフ投手」は誰? 2019年の“救援勝利”の数を調べてみた

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2020.3.6(金) 21:26

北海道日本ハム・宮西尚生投手(C)パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハム・宮西尚生投手(C)パーソル パ・リーグTV

リリーフ投手の勝利数はネガティブに捉えられるケースもあるが……

 先発投手と異なり、リリーフ投手にとっての「勝ち数」は、ネガティブな意味を持ってしまうことも少なくない。

 2桁勝利がスターターとしての評価を分ける基準の一つとなるように、先発投手にとっては勝利数が大きな意味を持ってくるものだ。しかし、リードを守ることに失敗した直後に味方が逆転した場合でも勝利投手の権利が得られることもあり、リリーフ投手の白星の価値は、必ずしも先発投手と同等のものであるとは捉えづらいところがある。

 しかし、同点時に無失点に抑えた直後に味方が勝ち越したケースのように、中継ぎとして勝利に貢献した結果として白星がつく場面もまた、確実に存在している。実際、最優秀中継ぎ投手を決める基準となる「ホールドポイント」も、ホールドに加えて救援勝利の数を合算して求められた数字となっている。

 とはいえ、勝ち星を手にするためには味方打線による援護点が不可欠であるという点は、先発投手であっても、リリーフ投手であっても変わりはない。そうなると、先発と同様、リリーフ投手の中にも打線の援護に恵まれていた投手が存在する。

 そこで、今回はパ・リーグ各球団のリリーフ投手たちの「ホールドポイント」と「ホールド」の差、すなわち救援勝利の数を紹介。リリーフとして多くの白星を挙げた投手たちを確認するとともに、その数字が持つ意味について考えていきたい。

ホールドポイント上位でも、必ずしも救援勝利の数も多いとは限らない

 まず、昨季のパ・リーグにおけるホールドポイントのランキングを紹介していきたい。その結果は以下の通りだ。(以下、所属は昨季終了時点のもの)

1位:44ホールドポイント
宮西尚生投手(北海道日本ハム)
2位:41ホールドポイント
平井克典投手(埼玉西武)
3位:37ホールドポイント
モイネロ投手(福岡ソフトバンク)
4位:33ホールドポイント
森原康平投手(楽天)
5位:32ホールドポイント
ブセニッツ投手(楽天)
6位:28ホールドポイント
甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)
7位タイ:27ホールドポイント
宋家豪投手(楽天)
松永昂大投手(千葉ロッテ)
9位タイ:26ホールドポイント
ハーマン投手(楽天)
近藤大亮投手(オリックス)

 続けて、純粋なホールド数のランキングも見ていこう。その結果は以下の通りとなっている。

1位:43ホールド
宮西尚生投手(北海道日本ハム)
2位:36ホールド
平井克典投手(埼玉西武)
3位:34ホールド
モイネロ投手(福岡ソフトバンク)
4位:29ホールド
森原康平投手(楽天)
5位:28ホールド
ブセニッツ投手(楽天)
6位:26ホールド
甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)
7位:25ホールド
松永昂大投手(千葉ロッテ)
8位:24ホールド
宋家豪投手(楽天)
9位タイ:22ホールド
海田智行投手(オリックス)
近藤大亮投手(オリックス)

 NPBにおける通算最多ホールド記録を更新し続けている鉄腕・宮西投手が、ホールドポイントとホールドの双方でトップに立っている。パ・リーグのシーズン登板記録を更新する大車輪の活躍を見せた平井投手がそれに続く2位となっており、上位の顔ぶれはどちらのランキングでもほぼ同じ順位となっていることがわかる。

 続けて、今回の議題である救援勝利の数について見ていきたい。2019年にホールドポイントのトップ10に入った投手たちの、ホールドポイントからホールドを引いた値は次の通りだ。

1位:宮西尚生投手(北海道日本ハム)
44ホールドポイント・43ホールド=1個
2位:平井克典投手(埼玉西武)
41ホールドポイント・36ホールド=5個
3位:モイネロ投手(福岡ソフトバンク)
37ホールドポイント・34ホールド=3個
4位:森原康平投手(楽天)
33ホールドポイント・29ホールド=4個
5位:ブセニッツ投手(楽天)
32ホールドポイント・28ホールド=4個
6位:甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)
28ホールドポイント・26ホールド=2個
7位タイ:宋家豪投手(楽天)
27ホールドポイント・24ホールド=3個
7位タイ:松永昂大投手(千葉ロッテ)
27ホールドポイント・25ホールド=2個
9位タイ:ハーマン投手(楽天)
26ホールドポイント・21ホールド=5個
9位タイ:近藤大亮投手(オリックス)
26ホールドポイント・22ホールド=4個

 ホールドポイントとホールドの双方でリーグ1位を記録した宮西投手は、2つの数字の差がわずか1個と、目に見えて少なくなっていた。同じ左腕では千葉ロッテの松永投手も差が2個と少なく、左打者を確実に抑えることが大きな役割となる左のリリーフであるが故に、対戦する打者数が少なくなりがちなところが白星の数にも現れているだろうか。

【8回表】伝説の鉄腕に肩を並べた!!ライオンズ・平井 リーグ最多登板達成!! 2019/9/20 L-E
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リリーフ投手の白星の数にも、やはりチーム全体の得点力が影響?

 そして、このランキングに入っていない投手たちを含めても、ホールドポイントとホールドに6個以上の差が生じた投手パ・リーグには存在しなかった。すなわち、5個の差がリーグ最多の数字ということだ。そこで、各球団において、ホールドポイントとホールドの差が4個、あるいは5個だった投手を、以下に列記していきたい。

5個:6名
平井克典投手(埼玉西武)
ハーマン投手(楽天)
ロドリゲス投手(北海道日本ハム)
酒居知史投手(千葉ロッテ)
唐川侑己投手(千葉ロッテ)
椎野新投手(福岡ソフトバンク)

4個:9名
堀瑞輝投手(北海道日本ハム)
森原康平投手(楽天)
ブセニッツ投手(楽天)
増田達至投手(埼玉西武)
小川龍也投手(埼玉西武)
近藤大亮投手(オリックス)
エップラー投手(オリックス)
益田直也投手(千葉ロッテ)
田中靖洋投手(千葉ロッテ)

 以上のように、5個の差がついた投手は6名。この中ではハーマン投手と酒居投手が2020年から新たなチームでプレーすることが決まり、両投手がそれぞれ新天地で見せる投球内容と、前年同様の援護を受けられるかどうかにも注目だ。

 いわゆる「オープナー戦術」を積極的に採用していた北海道日本ハムでは、ロドリゲス投手と堀投手の2名がランクインしている。先発登板して4回までにマウンドを降りた試合で白星がつくことはないが、両投手はもちろんリリーフとして複数イニングを投じるケースもあった。また、チームは違えど椎野投手もロングリリーフ起用が多かった投手であり、やはり投げるイニングが長い投手のほうが、援護が得られる可能性は高いようだ。

 4個以上の差がついた投手をリーグ最多の4名輩出したのは千葉ロッテで、楽天と埼玉西武が3名でそれに続いている。これらの3チームはチームの年間得点数のトップ3でもあり(埼玉西武が1位、千葉ロッテが2位、楽天が3位)、やはり試合終盤に打線がより多くの援護をもたらしていたようだ。

 千葉ロッテはシーズン序盤に勝ちパターンを担った酒居投手と唐川投手、比較的ビハインドでの登板が多かった田中投手、守護神の益田投手と、さまざまな役割の投手が多くの救援勝利を挙げていた。それに対し、埼玉西武は小川投手、平井投手、増田投手。楽天はハーマン投手、ブセニッツ投手、森原投手と、それぞれチームの勝ちパターンを担った投手が白星を積み重ねていた。

 勝ちパターンの投手に多くの勝ち星がつくのは、首脳陣からの信頼性の大きさ故に僅差での登板が多くなっていたことに加えて、それぞれ相手のセットアッパーから得点を挙げられる優秀な打線を擁していたからこそでもあるだろう。千葉ロッテの場合は、シーズン序盤と中盤以降で異なる投手が勝利の方程式を構成していたことが、多くの白星を稼いだリリーフ投手たちの役割が多少ばらけていた要因の一つだろうか。

過去のパ・リーグには、リリーフ投手ながら最高勝率を受賞したケースも

 2019年におけるホールドポイントとホールドの差は多くて5個だったが、過去にはリリーフとしての登板だけで2桁を超える勝ち星を記録した投手も存在した。中日で活躍した浅尾拓也氏は、2010年に先発登板なしで12勝を積み上げている。47個のホールドを含めて実に59ホールドポイントという、まさに驚異的な数字を記録。翌2011年には中継ぎ投手として史上初のシーズンMVPも受賞しており、チームの勝利に対する貢献度は特大だった。

 近年のパ・リーグにおいても、2010年に北海道日本ハムの榊原諒氏が同じくリリーフ登板だけで10勝を挙げ、同年の新人王にも選ばれている。また、ホールドが公式記録として制定される前の数字ではあるが、1999年にダイエーの篠原貴行氏がリリーフとしての登板だけで14勝を記録し、敗戦はわずかに1つ。最高勝率の基準となる13勝をクリアして勝率.933という数字を残し、中継ぎ投手ながらパ・リーグの最高勝率に選出されたケースもある。

僅差の試合を壊さないことが、救援勝利を挙げる最低条件

 リリーフ投手の成績は、往々にして「○勝○敗○ホールド」のような表記がなされる場合が多い。役割的にもどうしてもホールドの数字に注目が集まりがちではあるが、白星とホールドが同じ試合で一人の投手に記録されることはない。ホールドポイントに含まれる救援勝利の数は、僅差で試合を繋ぎとめ、チームに貢献した証とも言えるのではないだろうか。

 2019年にパ・リーグの規定投球回に到達した投手はわずかに6名。投手分業が進みつつある現代野球において、リリーフ投手が登板しない試合はほんの一握りとなりつつある。そして、試合に勝利したチームからは、ルール上必ず勝利投手が1人選定される。先発だけでなく、リリーフ投手が記録した白星についても、チームの勝利への貢献度という意味においても、今一度注目されるだけの価値はあるのではないだろうか。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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