先発完投の減少は、リリーフ投手の重要性の上昇にもつながっている
投手分業制が完全に確立された現代野球において、リリーフ投手の重要性は年を経るごとに高まりつつある。2019年シーズンにおいて先発投手が完投した試合は、パ・リーグの6球団全てを合わせても19試合のみ。先発完投が少なくなったということは、それだけリリーフ投手の出番が増えることにもつながる。とりわけ、試合を締めくくる抑え投手は、セーブシチュエーションを迎えた場面の大半で登板することが常となっている。
試合の成否を決める最終回のマウンドに立ち続けることは、メンタル的にも非常に大きな負担がかかることは想像に難くない。そこに勤続疲労も重なり、長年にわたってストッパーを務めることのできる選手は決して多くはない。その役割の難しさは、「日米通算250セーブ以上」という名球会入りの条件を満たしたクローザーが、2019年終了時点でわずか3名しかいないという事実にも表れているであろう。
今回は、2015年から2019年の直近5年間において、通算で記録したセーブ数が多かった投手たちをランキング形式で紹介。各投手の5年間の奮闘ぶりを辿りながら、クローザーという役割の難しさについて、今一度考えていきたい。
若き守護神をわずかな差で上回ってトップに立ったのは……
過去5年間における、パ・リーグのセーブ数トップ5に入った投手は以下の通り。
1位:デニス・サファテ投手(福岡ソフトバンク):143セーブ
2位:松井裕樹投手(楽天):139セーブ
3位:増井浩俊投手(オリックス):129セーブ
4位:増田達至投手(埼玉西武):103セーブ
5位:森唯斗投手(福岡ソフトバンク):74セーブ
2015年からの3年間で138セーブと、球史に残るペースでセーブを積み重ねたサファテ投手が、直近2年間の長期欠場がありながらトップに立っている。5年間のうち4度30以上のセーブを記録した松井投手がわずかな差で2位となり、北海道日本ハムとオリックスの2球団で抑えとして活躍した増井投手がそれに続いている。
上記の3名に次ぐセーブ数を記録した増田投手も含め、100セーブを超えた投手は全部で4名。全体5位にランクインしたのは、先述したサファテ投手の長期離脱後に福岡ソフトバンクのクローザーとなった森投手。わずか2年間で72セーブを積み上げる活躍を見せており、今後の投球にも期待がかかるところだ。
また、直近5年間の間に通算50セーブ以上を記録した投手は、上記の5名に平野佳寿投手(72セーブ)、西野勇士投手(57セーブ)、益田直也投手(53セーブ)を加えた8名のみ。50セーブという数字は2シーズンにわたって抑えを務めれば到達が可能なものではあるが、それでも5年間で8名しか達成できていない。そういったところにも、継続してクローザーを務めることの難しさが表れているのではないだろうか。
全てが順風満帆とはいかない、抑え投手たちのキャリア
続けて、今回のランキングのトップ5に入った投手たちの5年間の登板数、セーブ数、防御率の変遷を見ていきたい。
デニス・サファテ投手
2015年: 41セーブ
2016年:43セーブ
2017年:54セーブ
2018年:5セーブ
2019年:0セーブ
合計:143セーブ
サファテ投手は2017年にNPB新記録となる54セーブを記録するなど圧倒的な投球を続け、「キング・オブ・クローザー」の異名を取った。しかし、2018年4月に故障で戦列を離れてシーズンを棒に振ると、その後もなかなか状態が戻らず、2019年には一軍・二軍を通じて一度も登板することができなかった。これまでNPB通算234セーブを積み上げ、名球会入りまであと16に迫っている助っ人は、来季こそ復活を果たし、史上4人目の大台に到達できるだろうか。
松井裕樹投手
2015年:33セーブ
2016年:30セーブ
2017年:33セーブ
2018年:5セーブ
2019年:38セーブ
合計:139セーブ
松井投手はプロ2年目の2015年に抑えに転向すると、5シーズン中4シーズンで30セーブを挙げる活躍を見せ、若くしてその才能を開花させる。2018年には不振に陥ってクローザーを外れたが、再び抑えに戻った2019年には自己最多の38セーブを記録し、自身初タイトルとなる最多セーブも手にした。2020年には先発に再転向する24歳の左腕は、クローザーとして発揮した安定感と粘り腰を新たな役割でも発揮してくれるか。
増井浩俊投手
2015年:39セーブ
2016年:10セーブ
2017年:27セーブ
2018年:35セーブ
2019年:18セーブ
合計:129セーブ
増井投手は2014年に自身初の2桁セーブ(23セーブ)を記録すると、その後は2球団にまたがって抑えとして活躍。しかし、2016年と2019年はシーズン途中で抑えの座を外されており、5シーズン続けて年間を通じてクローザーとして投げ続けることはできなかった。それでも2016年には先発としてチームの日本一に貢献しており、2019年には史上2人目のNPB通算150ホールド&150セーブを達成。そのマルチな才能は随所で発揮されている。
増田達至投手
2015年:3セーブ
2016年:28セーブ
2017年:28セーブ
2018年:14セーブ
2019年:30セーブ
合計:103セーブ
増田投手は2015年に40ホールドを記録して最優秀中継ぎ投手の座に輝くと、2016年からはクローザーに配置転換。そこから2年続けて28セーブを挙げ、安定した投球でブルペンを支えた。2018年は防御率5.17と崩れて抑えの座をデュアンテ・ヒース投手に譲ったが、2019年にはストッパーに復帰して防御率1.81と安定感抜群の投球を続けた。自身初のシーズン30セーブを記録してチームのV2にも貢献し、31歳にしてさらなる進化を遂げている。
森唯斗投手
2015年:0セーブ
2016年:1セーブ
2017年:1セーブ
2018年:37セーブ
2019年:35セーブ
合計:74セーブ
セットアッパーとしてプロ入りから4年連続で50試合に登板してきた森投手は、サファテ投手の長期離脱を受けてプロ5年目の2018年にクローザーへ就任。そのシーズンにいきなり最多セーブのタイトルを手にすると、続く2019年にも故障離脱がありながら35セーブを記録。日本シリーズでも2年連続で胴上げ投手になるなど首脳陣の信頼も厚く、長きにわたってリリーフ投手としてチームに欠かせない存在であり続けている。
セーブ数は、チームの勝利に直接貢献してきたことを示す指標でもある
今回の集計対象となった5シーズン全てで2桁のセーブ数を記録したのは増井投手ただ一人。また、その増井投手も5年続けて開幕からシーズン終了まで、クローザーとして投げ続けたわけではなかった。いずれもリリーフとしての豊富な経験と実績を持ち合わせる投手たちなだけに、ストッパーという役割の苛酷さと、長きにわたってそのポジションを務めることの難しさがあらためて伝わってくる。
ともにNPB史上最多の1002試合登板・407セーブを積み上げ、11年連続で20セーブ以上を記録した岩瀬仁紀氏(元中日)のような存在は極めて稀だ。長いスパンで見ると、多くのチームが選手個々の状態に応じて抑えに据える選手を入れ替えてきた。先述した好投手たちも、抑えとしてのキャリアが比較的浅い森投手を除いて故障や不振による守護神交代を経験しており、チームとしても勝利のために常に最善の選択を模索しているということだろう。
基本的に、僅差でリードしている試合でなければ、9回から登板した投手にセーブがつくことはない。さらに、チームが勝利を収めることもセーブが記録される必須条件の一つだ。それゆえ、セーブの数は、チームの白星にどれだけ直接貢献してきたのかを示す指標にもなっている。一度の失敗が勝利目前の試合を一転させてしまうというプレッシャーの中で結果を残してきた投手たちの活躍に、2020年のシーズンもぜひ注目してみてほしい。
望月遼太
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