レアード選手も、自らの国籍とは異なるチームでWBCに出場した選手の一人
北海道日本ハムは、高山優希投手がフィリピン代表として、2021年3月に開催予定の第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の予選に出場すると発表した。高山投手は母親がフィリピン出身であるため、WBCが定める各国代表チームの出場資格に合致しており、フィリピン代表として出場することが可能となっている。
当該国の国籍を持たない選手であっても代表として出場できるWBCにおいては、高山投手と同様のケースは少なくない。日本になじみ深い選手でいえば、2017年のWBCに出場したブランドン・レアード選手(千葉ロッテ)もその一例だ。レアード選手はアメリカ国籍の選手だが、母親がメキシコ出身であるため、出場資格を持つメキシコ代表を選択。本戦でも三塁手のレギュラーとして活躍を見せている。
NPBの規約では、日本国籍以外の選手であっても、ドラフトを経由すれば、外国人枠の影響を受けずに日本人選手と同様の扱いでプレーできる。そういった選手たちの中には、高山投手と同様に、日本代表以外の国の代表としてWBCに出場した選手も少なからず存在している。
もちろん、高山選手のように日本で生まれ育ち、日本国籍を有しながら他国の代表として選出された選手や、当初は外国人枠として登録されたが後に日本に帰化した選手、母国の国籍を持ちながら野球留学で日本の教育機関に入り、その後ドラフトで指名を受けた選手と、一口に外国人枠の適用外といっても、各選手の経歴はさまざまだ。
それぞれの背景は大きく異なるものの、それらの日本球界と関係が深い選手たちが、他国の代表として過去のWBCで活躍したのは事実だ。今回は、「1. 日本以外の国の代表からWBCに出場 2.NPBにおいて外国人枠に含まれない選手」という条件に該当する人物たちを、各国ごとに紹介していきたい。
・ブラジル代表
松元ユウイチ氏(元東京ヤクルト)
出場大会:2013年
金伏ウーゴ氏(元東京ヤクルト)
出場大会:2013年、2017年
仲尾次オスカル氏(元広島)
出場大会:2013年(※当時はプロ入り前)
曲尾マイケ氏(元東京ヤクルト)
出場大会:2013年
佐藤二朗(ツギオ)氏(元東京ヤクルト)
出場大会:2013年、2017年
ラファエル・フェルナンデス氏(元東京ヤクルト)
出場大会:2013年、2017年
ルシアノ・フェルナンド選手(楽天)
出場大会:2017年
各選手の経歴を見てもわかる通り、7名中5名と東京ヤクルト出身の選手がかなり多くなっている。その中でも松元ユウイチ氏は、東京ヤクルトで17年間という長期にわたってプレーした存在だ。2004年に日本国籍を取得して外国人枠を外れてからは一軍で活躍を見せるチャンスも増え、優れた打撃センスを武器に随所で印象に残る活躍を見せた。2013年のWBCではブラジル代表のキャプテンも務め、中心選手としてチームを引っ張った。
過去にブラジル出身の日系プロ野球選手としてNPBで最も成功を収めた選手といえるのは、広島で9年、楽天で1年(在籍は2年)と、NPBで10年にわたってリリーフとして活躍し、通算373試合で防御率3.87と安定した投球を見せた玉木重雄氏だろう。タイトル獲得といった華々しい活躍を見せた選手こそいないが、NPBに輩出した選手の数自体は十分に多いと言えるはずだ。
・台湾代表
林威助氏(元阪神)
出場大会:2006年、2009年
陽岱鋼選手(巨人)
出場大会:2006年、2013年
【本大会出場なし】李杜軒選手(元福岡ソフトバンク/千葉ロッテ 現琉球ブルーオーシャン)
出場大会:2009年、2013年
陽岱鋼選手は北海道日本ハム時代に球団史上初の盗塁王に輝き、ゴールデングラブ賞も 4度受賞。代表チームでも不動の主軸として活躍を続けている、まさに台湾野球界のスター的な存在だ。2度のWBCでも共闘した兄の陽耀勲選手(元福岡ソフトバンク)もNPB経験者だが、ドラフト指名を経ての入団ではなかったため今回のリストには入っていない。だが、2012年にはNPBでの“兄弟対決”も実現しており、兄弟そろって日本の地で存在感を示している。
柳川高校、近畿大学を経て阪神で11年間プレーした林威助氏は2006年に67試合で打率.303、OPS.933という好成績を残すと、翌2007年にはわずかに規定打席には届かなかったものの、打率.292、15本塁打、58打点を記録。ケガの影響もあってレギュラー定着は果たせなかったものの、持ち前の強打でたびたび甲子園を沸かせ、その実力がNPBでも十分に通用することを示していた。
先述の2選手はNPBにおいても一定以上の成功を収めた選手と言えるが、現在NPBに所属している投手の中では、宋家豪投手(楽天)やチェン・グァンユウ投手(千葉ロッテ)も2017年のWBCに台湾代表として出場している。ともにドラフトを経ての入団ではないため外国人枠が適用される立場ではあるが、彼らのように一軍で活躍を見せている台湾出身の選手は今なお多い。
入団時から外国人枠を外れていた台湾出身の選手としては、野手として2度の首位打者と1度の盗塁王を獲得し、投手としてノーヒットノーランを達成する離れ業を演じた呉昌征氏、1994年にセ・リーグで本塁打王と打点王の2冠に輝いた大豊泰昭氏といった偉人が存在。現役選手では「WBSCプレミア12」で台湾代表として好投を見せたオリックスの張奕投手や、埼玉西武で在籍5年目のシーズンを迎える呉念庭選手がその条件に該当する。
・中国代表
朱大衛氏(元埼玉西武)
出場大会:2009年、2013年
中国代表は第1回大会から4大会連続でWBCの本選に出場し、その全てで日本代表と対戦するなど、国際舞台でもおなじみの存在だ。中国出身の朱投手は中部大学第一高校から2006年のドラフトで埼玉西武に入団したが、在籍5年間で一軍での登板機会は一度も訪れず。それでも、埼玉西武に在籍していた2009年と、中国球界に活躍の場を移した後の2013年の2度WBCに選出され、2013年には日本代表との試合でも登板を果たしている。
・フィリピン代表
小川龍也投手(埼玉西武)
出場大会:2013年
小川投手は冒頭で紹介した高山投手と同じく母親がフィリピン出身で、中日に在籍していた2013年に、同国代表としてWBC予選へ出場。後に中日と埼玉西武でリリーフとして活躍した小川投手だったが、この大会では第2戦の台湾代表との試合で先発を託された。小川投手は4回3失点という投球内容で、チームは0対16と大敗。続く試合にも敗れたフィリピン代表は予選敗退を喫したが、2大会ぶりにチームに加わる日本人となった高山投手は先達の無念を晴らせるか。
MLBからNPBのドラフトを経由して、最多セーブを獲得した選手も
各国の傾向としては、ブラジル代表には日系のNPB経験者が多く、フィリピン代表として出場した2選手は、両名とも母親がフィリピン出身という縁があっての出場だった。一方、台湾の場合は野球留学によって学生時代に来日した選手がそのままNPBのドラフトで指名を受けるケースが多い。また、中国代表の朱投手は幼少期から日本で育ち、日本の高校を経てプロ入りしていた。
また、WBCと直接の関係はないが、過去にはこれ以外の国の出身者としてNPBのドラフトで指名を受けた選手もいた。マイケル中村(MICHEAL)氏は日本とオーストラリアの二重国籍で、NPB入り前にはMLBのツインズとブルージェイズで登板した経験も持っていた。2004年のドラフトで北海道日本ハムの指名を受けて入団すると、2006年には最多セーブのタイトルを獲得。そこから3年間にわたってクローザーとして活躍し、日本球界においても大きな成功を収めた。
また、現在MLBで活躍している面々の中にも日系の選手は存在している。例えば、2017年のWBCで米国代表の一員として初優勝に貢献し、2018年から2年連続でナショナルリーグの首位打者を獲得したMLBトップクラスの好打者クリスチャン・イェリッチ選手(ブリュワーズ)も、日系3世の選手だ。
例えば、今年開催されるオリンピックにおいては、出場する国の国籍を持っていることが出場資格の一つとして定められている。オリンピック等に比べて出場するための規約が比較的緩いがゆえに、高山投手やレアード選手のように保有する国籍とは異なる代表チームで出場するケースがたびたび生じるのも、WBCの面白いところかもしれない。
はたして高山投手を擁するフィリピンは予選を勝ち抜き、本戦への初出場を決めることができるか。そして、本選出場チームの中にも、日本ゆかりの選手が選出されるか。WBCを観戦するうえで、そういった点にもぜひ注目してみてはいかがだろうか。
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