北海道日本ハムf宮西尚生が挑む4センチの変化 10年連続50登板の鉄腕がフル回転宣言

Full-Count 石川加奈子

2018.4.3(火) 16:04

北海道日本ハム・宮西尚生投手
北海道日本ハム・宮西尚生投手

10年連続50試合登板の鉄腕は「どこでもフォローに入る」とフル回転宣言

北海道日本ハムの宮西尚生投手が万全の状態でプロ11年目を迎えた。今季初登板した1日の埼玉西武戦(札幌ドーム)では7回に登板して1イニングを無安打無失点、12球で片付けた。実績あるリリーフは宮西投手1人というチーム事情の中、「6回から9回までどこでもフォローに入るつもり」とフル回転する覚悟だ。

15年オフに手術をしてから昨季までは常に不安を抱えてマウンドに上がっていた。「肘の不安があって、投げて、打たれて。申し訳ないという気持ちだったし、ストレスが溜まった。今年は違う。ここ3年間では間違いなくベストの状態。打たれることがあるかもしれないけれど、打たれた時も納得できる失点になる」。そう言い切る左腕の表情には、自信があふれていた。

腕の角度を4センチ上げて、手術前のフォームに戻すことに成功した。「去年までは肘の力が抜けたり、力が入らなかったり、ボールに力が伝わらず、かわしながら、即席フォームでやってきた」と明かす。昨季5位に低迷してできた長いオフを利用して、徹底した肘周りの強化と体作りを行い、肘の不安を払拭。同時にフォーム改造に着手した。

3年間染み付いたフォームを変えるのは簡単ではなかった。わずか4センチとはいっても「僕の感覚では上から投げる感じだった」と言う。年明けからブルペン入りし、例年以上に投げ込み。開幕前には「フォームを自分のものにできた。ボールの強さ、打者に対しての球速感、スライダーのキレも戻った」と完ぺきな手応えを得た。

ここまで仕上げる過程で忘れてはいけないのが、福岡ソフトバンクからFA移籍してきた鶴岡慎也捕手の存在だ。5年前まで受けてもらっていた女房役にスライダーの軌道を尋ねると、意外な答えが返ってきたという。「昔はもっと小さく曲がっていたと。カット気味で三振を取っていたと言われた。自分としてはもっと大きく曲がっていると思っていたので、自分のイメージの感覚を修正できたのは大きかった」と鶴岡選手に感謝する。

実績あるリリーフ陣がチームを去り、計算できるのは宮西投手だけ

万全の状態で迎えた今季、鉄腕にかかる負担は一層大きくなりそうだ。昨季途中に谷元圭介投手が中日にトレード移籍、オフにはセットアッパーのクリス・マーティン投手、クローザーの増井浩俊投手が退団したからだ。今季クローザー候補の鍵谷投手も右尺側手根屈筋の筋挫傷で戦線離脱しており、実績のあるリリーフは宮西投手1人しかない。セットアッパーに新外国人のマイケル・トンキン投手、クローザーに21歳の石川直也投手を据えてスタートしたが、ブルペンがどう動いていくのか未知数だ。

「1年計算できるのは僕だけ。僕が動き回らないといけないと思っているので、6回から9回までフォローに入る。1か月くらいしたらチームの流れがわかってくると思う。落ち着いてきたら固定になるんじゃないかな。それまでの1か月は4イニング働くつもり」と想定しながら準備を進める。

何度も修羅場をくぐり抜けてきた経験を若手に伝えることも役目になる。実際、リリーフに失敗した若手をなぐさめることも、叱咤激励することもある。

「やられた時、悪い時にいかに修正できるか。それをやり続けられたら1軍に定着するし、できないと万年1軍を行ったり来たり。(失敗すると)特に勝ちパターンのピッチャーはメンタルを先にやられて、投球術も窮屈になってしまう。慰められても本来の力にはならないので、いかに自分で乗り越えられるかどうか。自分も弱かったけど、先輩にフォローされたし、向かっていく気持ちだけは折れなかった。リリーフ向きの性格だったんだね」と笑う。

新人から10年連続で50試合以上登板という離れ技を演じたリリーフのスペシャリストには、勝敗に直結する場面を574試合こなしてきたからこそ言えることがある。「若いということをピッチャーは言い訳にできない。ピッチャーは(チームを)勝たすことはできない。負かすことしかないできなんだから。しっかりやらないといけない」

開幕1軍入りしたリリーフ投手陣は32歳の宮西投手と28歳のトンキン投手を除くと一番上は26歳の公文克彦投手。平均年齢25.4歳と若い。発展途上の若手が、目の前にいる最高のお手本からがどんな影響を受けて、どんな成長を遂げるのか。その化学反応に注目したい。

記事提供:

Full-Count 石川加奈子

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