「一軍で打てたことが自信に」ーー野村大樹、夢のつづき

田尻 耕太郎

 早稲田実業高校から2018年ドラフト3位で福岡ソフトバンク・ホークスに入団。三軍、二軍で虎視眈々と昇格のチャンスを狙い、シーズン終盤の9月28日に一軍初出場。初打席初ヒットを記録した。野村大樹(のむら・だいじゅ)、まだまだ成長途中の19歳。この名前を覚えていて損はない。共に台湾のアジアウインターベースボールリーグで武者修行を積んでいる砂川リチャードと、数年後にクリーンナップを担っているかもしれないのだから。

三軍、二軍、一軍。それぞれの差を痛感した1年目

――プロ1年目のシーズンは振り返っていかがでしたか?
「ホークスは三軍制で、三軍で過ごすことが多かったけど二軍も経験して、シーズンの最後には一軍に上がることもできました。プロ野球のいろいろな世界を1年目から実際に見ることができたのは、今後の自分にとってもタメになると思いました。やはり三軍より二軍だし、二軍より一軍。それは当然ですけど、しっかりと自分の中で感じることができたのは大きいと思います」

――残した成績に関しては?
「三軍ではしっかり打率3割を打てました(3割2分3厘、95試合、119安打、5本塁打、51打点)。ただ二軍では出る機会も少なく、そしてなかなか打てなくて悩んだ時期もありました(打率1割9分1厘、22試合、9安打、0本塁打、10打点)。そんな中でもシーズンの最後の方に一軍デビューをさせてもらって、最初の打席で自分の持ち味である逆方向にしっかり打ってプロ初安打をマークすることができました。次の打席もショートライナーだったし、内容のある打席でした。全体的にはもちろんまだまだ足りないところだらけですが、一軍でやっていける自信にもなったし来シーズンにつながると思います」

――9月28日のオリックス24回戦(京セラドーム)で一軍デビュー戦をあらためて振り返ってください。
「バッティングも緊張しましたけど、守備の方が心臓バクバクでした。出場が守備からでサードに入ったですが、絶対に失敗できないというプレッシャーを感じていました。最初に打球が飛んできたのが延長十回の吉田正さんのフライでした。背面キャッチみたいな捕り方になりましたが、ちゃんとアウトにできたのでホッとしました。その前に打席に立って初ヒットを記録していた分、少しだけ気持ちの余裕ができていたのが良かったと思います」

「ヒット打ったらスゲーぞ」そう柳田に送り出された初打席

――ホークスの諸先輩たちとプレーした感想は?
「一軍の選手はバッティング練習でも全然違う。そこに驚きましたが、まだ十代の若い自分に対して、すごく気遣ってもらえたのが嬉しかったです。一軍ってすごく堅い雰囲気かと思っていましたが、いい意味で和気あいあいとしていました。でも、ピリッと締めるところは締めるというメリハリがありました。すごくやりやすい雰囲気でした」

――特に声を掛けてくれた先輩は?
「松田(宣浩)さんや柳田(悠岐)さんですかね。プロ初打席の直前にも柳田さんに『一軍初打席で初ヒット打ったらスゲーぞ。俺は打てなかった。打てたら儲けもんくらいの気持ちで打ってこい』って言われて、すごく楽になったんです。実際に打つことができて、三塁側のベンチを見たら僕の記念球を柳田さんが受け取ってくれていました。ベンチに戻ったら『ナイスバッティング!』と皆さんに頭を叩かれて祝福してもらいました。そしてボールは、試合が終わってから松田さんから手渡してもらいました」

DHや1塁で出場し、12月12日現在で打率は0.275。14日には準決勝を控える。
DHや1塁で出場し、12月12日現在で打率は0.275。14日には準決勝を控える。

――その後、秋季教育リーグの「みやざきフェニックスリーグ」では打率4割超をマークしました。
「一軍で打ったことが自信になりました。それまでは自分の気持ちの中でどこか受け身になっていたのが、プロ野球の年上の投手が相手でもしっかり勝負できるようになりました。いい意味で余裕ができたと思います。また、木製バットの使い方がわかってきた。金属と違って木製バットはしなる。その具合が自然と頭で理解できるようになりました」

――ところで早実出身の野村選手。1つ先輩には北海道日本ハムの清宮幸太郎選手がいました。野村選手にとってどんな存在ですか?
「清宮さんはホームランバッター。自分は打率と打点で絶対に負けへんぞと思ってプロに入ってきました。僕は小柄で体型が違いすぎるけど、欲を言えばホームランでも勝ちたい。本拠地もこっち(福岡)の方が入りやすいですから。ただ、とにかく打率と打点では負けたくないですね」

――連絡は取り合っていますか?
「10月のみやざきフェニックスリーグの時にでも食事に行こうと誘われていましたが、清宮さんが手術をされたので実現しませんでした。またいつか実現すればいいなと思います」

試合前練習に励む野村選手
試合前練習に励む野村選手

――今回の台湾でのウインターリーグでは何を掴みたいですか?
「フェニックスリーグがいい感じでしたが、秋季キャンプで途中離脱をしてしまいました。体は大丈夫です。元気でやっているぞというのを首脳陣にアピールしたい。また、序盤戦では内容自体は悪くないけど結果が出なかった。これからどんどん打っていきたいです」

――2年目への抱負をお願いします。
「1年目は一軍ベンチに2試合しかいることができなかったし、二軍でも49打席しか立っていません。まずは二軍でしっかり打率3割を打って、一軍にシーズンの半分はいられるようにしたいです。もちろん全部一軍がベストですけど。そうですね、ここは欲を出して、全部一軍と言っておきます」

――将来的な目標は?
「勝負強い打撃をできる打者ですね。チャンスで野村に回せば大丈夫だ、とチームメイトやファンの皆さんから信頼をしてもらえる選手になることです。入団した時から、そこは初志貫徹で。ブレずにいきたいです」

こちらもあわせて
「僕は完璧主義」。楽天イーグルス・小郷裕哉が語る、ルーキーイヤーの手応えと自省
オリックス・バファローズ宜保翔。目標を達成できた1年目。来季は何を見据えるか?

文・田尻耕太郎
写真・「パ・リーグインサイト」海老原 悠

人気記事

台湾で川﨑宗則が語った現在地
ホークファミリーの相関図
パ各球団の「代打の神様」
パーソル パ・リーグTVスタッフ座談会
パ6球団がひらがなスニーカーとコラボ

記事提供:

田尻 耕太郎

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE