グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。パ・リーグで働く全ての人を応援する、パシフィック・リーグオフィシャルスポンサーのパーソルグループと、パ・リーグインサイトがお届けする「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」で、パ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。
スポンサーにとって最適な商材を提案する
球団にはさまざまな仕事があるが、野球や野球場独自の仕事も多く、一般にはわかりづらい内容も多い。「営業」という言葉からはわかりやすい響きもあるが、ちょっと考えてみるといったい球団ではなにを営業するのか? というのはピンと来ないかもしれない。まずはそのあたりの「商材」というところから聞いてみよう。
「『商材』ということでいうと、わかりやすいところではスタジアム(楽天生命パーク宮城)の看板でしょうか。これは基本年単位になります。それからバックネット裏のLED広告や、スポットイベントなども商材になります。いわゆるスポンサー様向けのセールスですね。既存のスポンサー様が30数社あり、普段からリレーションをはかりながら、そのほかに新規のお客様の獲得も行っています」
観客動員やチケットセールス、一般のファンづくりという部分はこれを専門にする部門が行い、営業部門はスポンサー向けに球団の収益を確保することが仕事となる。企業によって効果的な広告の提案、そのために既存商材とマッチングさせたり、新しい企画も開発する。
「カタログギフトってありますよね。私たちも商材のメニューをカタログ化するなどスポンサー様にわかりやすくお伝えしています。また、動員企画との連携で、シーズン中に開催されるイベントやフェスがあれば、どの既存のスポンサー様に適しているのか、それとも新規のお客様に適しているのかということも考えます」
スポンサーが何を求めているのかを探る。実はスポンサーが球団に求めるものには大きな違いがあるという。
「野球が大好きで、広告を出すことが夢だった、このチームだから広告を出したいというお客様もいれば、逆に野球自体への興味よりも費用対効果などに魅力を感じて話を聞いてくださるお客様もいらっしゃいます。そのほかCSR(企業の社会貢献)活動という目的に賛同いただけるということでスポンサー様になっていただくこともあります。みなさん求めることは違うので、それぞれにあった切り口や対応を心がけています」
費用対効果を重視するスポンサーに、野球の夢やロマンを語るだけでは賛同を得られにくい。逆に夢やロマンを持って、ようやく野球に自社の広告を出せる! というスポンサーの熱意を削ぐこともしたくない。スポンサーに対しては数字や効果はしっかり追いながら、野球、チーム、そして東北の球団・スタジアムである魅力をしっかり根底に置き、広告価値を伝えていく。実は獅子内さん自身は野球については「まったく知らなかったんです」とのこと。
「ファウルとホームランがどう違うのかもわからなかったですし、“甘いボール”って何?(笑)。だから野球ファンではなく球団であったり、球場に対して広告的な魅力をもってくださるお客様の考え方も理解できるかなとも思います」と獅子内さんは語る。
数字を追う会社とは冷静に話すことができるし、野球が大好きというスポンサーを通じては、野球愛を持った人の立場や意見を知ることができる。3年目、営業職も初めてという獅子内さん。発見の連続という日々は辛さよりも、好奇心を刺激される楽しさが勝っている。その素直さがスポンサーにも伝わっているようだ。
サッカー少女の「夢の途中」
さて、野球の知識がなかったという獅子内さん。それがなぜこの仕事に従事しているのか。きっかけはサッカー。
「実はもともとサッカー関係の仕事がしたかったんです。それで、Jリーグのヴィッセル神戸に入社して、そこから同じ楽天グループの楽天イーグルスに異動しました」
もともと静岡出身ということでサッカー一色の環境で育ち、中高時代はJリーグの試合や下部組織などを観に、スタジアムにも足を運んでいたのだという。ちなみにサッカーが好きになったきっかけの選手とは?
「川口能活選手です。シブいですか?(笑)私の年齢だと確かにそうかもしれませんね。引退試合もスタジアムに観に行って……泣きました!」
大学ではサッカー部のマネジャー。その流れでサッカーの主務的な仕事を目指していたが、ヴィッセル神戸で営業という経験のない仕事に就いた。未経験のことだらけだけれども、だからこそ得るものも大きいようだ。
「日本におけるサッカーと野球のビジネスの規模の違いを体感しています。Jリーグだと本拠地での試合は隔週。野球は連戦が続きますし、観客動員数も多い。当然、営業としても規模、商材の多彩さ、金額が変わってきます。こうした大きなビジネスを経験させてもらっているのはありがたいです」
ヴィッセル神戸の1試合平均観客動員数が約2万人、楽天イーグルスは約2万5000人、そしてなにより主催ゲーム数が違う。リーグ公式戦でいえばヴィッセル神戸がおおむね隔週で17試合。楽天イーグルスは3連戦を中心に71試合(地方球場含む)。野球だからこそのものもあれば、サッカーだからこその営業もあって、その両方を体験できるのは良きキャリアにつながりそうだ。とはいえまだつかめたり、つかめなかったりすることもある。
「最初は何もわからないなかで営業に行って、今まで同世代としかつきあっていかなかったのが、いきなりさまざまな年代の方と真剣なお話しをしなければならないというのはやはり大変でした。それでももう3年目。後輩も入ってきてますし、今後は私も教える側として経験を伝え、そういう立場として仕事にのぞんでいかないと」
前段でも紹介したように地域密着型企業の社長や、長年野球をサポートしてこられた会社、東京の本社から数字を背負ってこられた支店など、それぞれの方に興味を持ってもらえる提案をするのは難しい点も多いだろうが、だからこそのやりがいもある。さて、今後このキャリアをどのように活かしていくのだろうか。
「ヴィッセル神戸に戻るかどうか、というのは会社の決定なのでわからないのですが、10年後、20年後という長い視点ですと、チーム側というよりサッカー協会などで大きな仕事をしてみたいという意欲はあります。でもその前に、野球で学んできたことをここでもヴィッセル神戸でも生かしていきたい。具体的に言えば自分の興味のある企業にアプローチしていくこと。私の中でこの企業と球団が結びついたらもっとおもしろい取り組みができたのではというのがあって、そこにチャレンジしていければと思います」
◇過去のお仕事名鑑はパーソルの特設サイトからご覧いただけます。
https://www.persol-group.co.jp/special/pacificleague/index.html
文・岩瀬大二
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