圧倒的な投球を見せている2025年シーズン

プロ11年目を迎えた福岡ソフトバンク・松本裕樹投手が絶好調だ。昨季はオスナ投手の代役としてクローザーを務めるなどさまざまな役割を果たし、50試合に登板。シーズン終盤に右肩を痛めたものの、リハビリを経て無事に今季の開幕を迎え、ここまで18試合で防御率1.04、16ホールドを挙げるなどブルペン陣を支えている。
持ち球を3つに絞り込んだ


先発を務めた若手時代には多彩な球種を操っていた松本投手だが、リリーフに定着してからは徐々に種類を減らし、今季はストレート、スライダー、フォークの3球種で全投球の95%を占めている。
また、直近3シーズンを比較すると、今季は2ストライクに追い込む前のストレートの割合が増え、追い込んでからは逆に変化球を多く投じている。こうした投球スタイルの変化と今季の好成績には、どんな関連があるのだろうか。主要な3球種それぞれの特徴を見ていこう。
球威のあるストレートでカウントを整える

まずは投球の軸となるストレートだ。打者がストレートにスイングをかけた時、空振りとファウルが占める割合は69.4%で、リーグ平均61.2%を8ポイントほど上回っている。また、ストレートをストライクゾーン内に投じた割合は63.8%で、こちらもリーグ平均53.9%を大きく上回る。つまり、今季は積極的にゾーン内へ投げ込みながらも、打球を前に飛ばされにくくなり、カウントを整える球として機能していることがわかる。
フォークは球速が上がり、コントロールも向上

決め球として使うことが多いフォークには大きな変化があった。昨季と比べて人さし指と中指の挟みが浅くなっており、平均球速が約7km/h上昇したのだ。これによってストレートとの球速差が小さくなり、打者にとっては見分けるのが昨季よりも難しくなっていると考えられる。また、高低別では低めへの投球割合が83.0%を占めており、高めに浮く投球が大きく減少した。昨季のフォークの被打率は.235だったが、今季はこうしたコントロールの改善もあり、ここまで13打数無安打6奪三振と打者を圧倒している。
バットに当たらないスライダー

最後は、主に対右打者で多く投じているスライダーだ。今季はスイング奪空振り率47.8%と、リーグトップクラスの数値をマーク。こちらも12打数無安打7奪三振と、フォーク同様に決め球として申し分ない好成績を残している。
球威のあるストレートで追い込み、切れ味抜群の変化球でアウトを奪う。今季の松本投手は、まさに「快投」と表現するにふさわしいピッチングを見せており、2023年に記録した自己最多25ホールドの更新はほぼ確実と思われる。シーズン序盤は苦しい戦いを強いられた福岡ソフトバンクだが、それでも勝率5割で交流戦を迎えられたのは、松本投手の貢献によるところも大きいだろう。チームのさらなる巻き返しに向けて、背番号66は腕を振り続ける。
※文章、表中の数字はすべて2025年6月8日終了時点
文・データスタジアム