先発・中継ぎに続き、今季は抑えとしてもタイトルを争う活躍を見せている
平良海馬投手が6月8日の試合終了時点で、リーグトップの13セーブを挙げている。平良投手は2022年に最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得し、2023年には先発として2桁勝利を挙げた実績を持つだけに、今季は抑えとしても活躍を見せている点は非常に興味深いところだ。
今回は、平良投手が記録してきた各種の指標をもとに、役割に応じた投球内容の変化を確認。球界屈指のマルチな才能を持つ剛腕の強みや特徴を見ていくとともに、今後のクローザーとしてのさらなる活躍にも期待を寄せたい。(※記録は6月8日の試合終了時点)
リリーフだけではなく、先発としても高い奪三振率を維持してみせた
平良投手がこれまで記録してきた、年度別の指標は下記の通り。

通算413.2イニングで448個の三振を奪い、キャリア平均の奪三振率は9.75と非常に高い。シーズン別の数字に目を向けても、主に中継ぎを務めていた2020年から2022年までの3シーズンにおいては、いずれも10.00を超える非常に高い奪三振率を記録。とりわけ、最優秀中継ぎ投手を受賞した2022年には、奪三振率11.71という圧巻の数字を残していた。
先発に転向して11勝を記録した2023年にはやや数字が低下したものの、それでも規定投球回に到達したうえで、奪三振率9.18と投球回を上回る奪三振数を記録。一般的には、短いイニングに集中できるリリーフ投手のほうが先発投手よりも奪三振率が高くなりやすい傾向にあるが、先発としても高い奪三振率を維持していた点にも非凡さが示されている。
2024年の奪三振率は7.95と平良投手にしては控えめな数字となったが、クローザーとして登板を続けている2025年には奪三振率9.74と再び改善を見せている。今季は4月の月間奪三振率7.71に対して5月が10.29と向上していることもあり、このまま奪三振率が以前の水準に近づくか否かも注目のポイントとなりそうだ。
キャリア初期に比べて向上した制球力も、安定した投球内容に寄与
平良投手は抜群の奪三振率に加えて、通算与四球率3.68と一定の制球力も備えている。一軍のブルペンに定着した2020年と2021年はいずれも与四球率が4点台とやや高かったが、個人タイトルを獲得した2022年の与四球率は2.81と優秀な成績を記録していた。
先発に転向した2023年と2024年にもそれぞれ3点台の与四球率を記録し、新たな役割でも一定の制球力を保っていた点も見逃せない。奪三振率と同様に、与四球率も長いイニングを投げる先発投手の方が優れた成績を維持することが難しい指標であることから、この数字も平良投手がマルチな才能を持つことを示す要素の一つとなっている。
そして、再びリリーフとして登板を重ねている2025年の与四球率も3.98と、先発を経験した直近2年間と同じく、3点台の数字を記録している。その結果として、奪三振を与四球で割って求める、制球力を示す指標の一つである「K/BB」にも興味深い傾向が表れている。
2019年から2021年までのK/BBは3年続けて2点台であり、2020年と2021年には奪三振率が10点台と非常に高かった一方で、与四球率の悪さが足を引っ張っていた。しかし、2022年には奪三振率11.71に対して与四球率2.81という素晴らしい成績を残し、K/BBも4.17と優秀とされる水準を上回る出色の値を記録した。
2023年以降はキャリア初期に比べて奪三振率がやや低下したにもかかわらず、K/BBは3年続けて2点台と、2021年までと同程度の水準に収まっている。与四球率の改善が投球内容の安定感につながっていることが、この数字からも読み取れるのではないだろうか。
近年は以前に比べて運に恵まれないが、それでも好成績を残し続けてきた
被打率は2020年から2022年まで3年連続で1割台とキャリアの初期は低かったものの、2023年以降は3年続けて2割台と近年はやや悪化している。ただし、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す「被BABIP」を見ていくと、また違った側面が浮かび上がってくる。
被BABIPは投手にとってコントロールできる要素が少ないことから、一般的には運に左右されやすい指標と考えられており、一般的な基準値は.300とされている。そして、平良投手が記録しているキャリア通算の被BABIPは.271と、その基準値を大きく下回っている。
各シーズンの数字を見ていくと、一軍デビューを果たした2019年の被BABIPは.365と非常に高かったが、続く2020年の被BABIPは一転して.177と非常に低かった。そして、2021年は.250、2022年は.264と、いずれもキャリア平均の数字よりも低い数字となっている。
その一方で、2023年以降は3年続けてキャリア平均を上回る被BABIPが記録されており、2022年までに比べてやや運に恵まれていないことが示唆されている。ただし、被BABIPが.312と基準値を上回っていた2024年にも防御率1.66という好成績を残しており、運の悪いシーズンにおいても安定した投球を見せていた点も平良投手の実力を物語っている。
被BABIPの悪化に伴い、1イニングごとに出した走者の平均数を示す「WHIP」に関しても、直近3年間はキャリア平均以上の数字となっている。それでも、2023年と2025年には平均以上とみなされるWHIPの値を記録しており、制球力の向上によって運の悪化をある程度カバーすることができている点もポイントだ。
さまざまな役割で結果を残した剛腕が、勝利に直結する役割で栄冠を手にするか
リリーフとして圧巻の奪三振ショーを展開しただけでなく、先発転向後もハイレベルな奪三振率を記録した平良投手。近年はキャリア初期の課題だった制球力も向上を見せており、どの役割でも質の高い投球を見せてきたことが各種の指標にも示されている。
平良投手はかつて獲得した最優秀中継ぎ投手のタイトルに加えて、自身初の最多セーブの座にも輝くことができるか。躍進を遂げつつある今季のライオンズにおいて、勝利に直結する役割を担う25歳の剛腕が見せる投球に、今季はより一層注目してほしいところだ。
文・望月遼太