ソロ、2ラン、3ラン、満塁……パ・リーグの「走者別本塁打王」ランキング

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.10.22(火) 12:00

埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手(C)パーソル パ・リーグTV
埼玉西武ライオンズ・山川穂高選手(C)パーソル パ・リーグTV

今季のホームラン王は山川穂高選手だが、部門別では?

 パ・リーグの本塁打ランキングでは山川穂高選手が43本塁打を記録し、見事に2年連続となる本塁打王に輝いた。山川選手が2シーズン続けてキングの座に君臨する結果となったが、仮に本塁打を「ソロ、2ラン、3ラン、満塁」と細分化し、それぞれのランキングを作成した場合には、リーグ内の順位はどのようなものとなってくるだろうか。

 そこで、今回は今季のパ・リーグにおける、「ソロ、2ラン、3ラン、満塁」の各状況での本塁打数が多い選手から順にランキングを作成。その顔ぶれを確認していくとともに、個々の数字から見えてくるものについて考察していきたい。

走者なし

1位:23本
山川穂高選手(埼玉西武)
2位: 22本
松田宣浩選手(福岡ソフトバンク)
3位:21本
デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)
4位タイ:18本
中村剛也選手(埼玉西武)
秋山翔吾選手(埼玉西武)
レアード選手(千葉ロッテ)
グラシアル選手(福岡ソフトバンク)
8位:17本
浅村栄斗選手(楽天)
9位タイ:15本
外崎修汰選手(埼玉西武)
吉田正尚選手(オリックス)

 パ・リーグ本塁打王の山川選手が、ソロ本塁打でもリーグ最多の数字を記録。43本中23本と、ソロ本塁打が全体の半数以上を占めている計算だ。走者がいない場面でも一振りでチームに得点をもたらせる怖さを持っているのは、長距離砲ならではの強みと言えるだろう。

 2位以下にも、各チームの主砲たちが多く名を連ねている。投手にとっては本塁打を浴びても複数失点とはならない走者なしの場面で、きっちりと甘い球を捉えられるかが、トータルの本塁打数を積み上げていくためのカギともいえそうだ。そういった点では、9位タイに入っただけでなく、今季通算でも26本塁打とキャリアハイを更新した外崎選手も長距離砲に必要な要素を示しており、パワーヒッターとして開花しつつあると形容できるかもしれない。

 大砲たちがランキングの大半を占める中、5本の先頭打者弾を含む18本のソロ本塁打を放っている秋山選手はやや趣が異なるか。今季記録している本塁打は20本であり、走者がいる場面で飛び出したホームランは2本のみ。実に全本塁打の90%がソロ本塁打という極端な割合となっており、適正としてもリードオフマンという役割に合致していると言えそうだ。

2ラン

1位:15本
山川穂高選手(埼玉西武)
2位:13本
吉田正尚選手(オリックス)
3位タイ:12本
浅村栄斗選手(楽天)
ブラッシュ選手(楽天)
5位:11本
中田翔選手(北海道日本ハム)
6位:10本
デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)
7位:9本
レアード選手(千葉ロッテ)
8位タイ:8本
大田泰示選手(北海道日本ハム)
森友哉選手(埼玉西武)
井上晴哉選手(千葉ロッテ)

 この部門でも山川選手がトップに立ち、ソロに続く“2冠王”に輝いている。43本中15本と全体の1/3以上が2ランとなる計算で、先述のソロと合わせると全体の88.4%にも及ぶ。塁上の走者が少ない状況であっても得点に結び付けてくれる山川選手の存在が、埼玉西武打線がリーグトップの得点数を叩き出している理由の一つでもあるだろう。

 吉田正選手はソロ本塁打のランキングでは15本で9位タイだったが、それとほぼ同じ13本の2ランを放ってリーグ全体でも単独2位に。得点数がリーグ最下位とチーム全体の打撃成績が振るわなかった中で、走者が1人しかいない状況からでも本塁打だけで26得点をチームにもたらし、3番打者としての役割を果たしてきたことがわかる。

 ソロ本塁打のランキングに入っていた選手がこの部門にも同様に名を連ねているケースも少なくはなく、それぞれホームランバッターとしての能力の高さを示している。そんな中で、ソロでは11本とランキング圏外だった中田選手が2ランでは5位に。ソロと2ランの本数がまったく同じという珍しい結果を残しており、チーム本塁打数がリーグ唯一の2桁台とパワー不足が否めなかったファイターズ打線の中で気を吐いた。

 中田選手と同様に、森選手と大田選手もソロ本塁打のランキングからは漏れたものの、2ランではトップ10入りを果たしている。両者ともに8本記録した2ランのうち5本が先制・勝ち越し・逆転といった殊勲打となっており、重要な局面を迎えた際にその打棒はより鋭さを増していたようだ。

3ラン

1位:7本
ブラッシュ選手(楽天)
2位タイ:4本
渡邉諒選手(北海道日本ハム)
浅村栄斗選手(楽天)
山川穂高選手(埼玉西武)
外崎修汰選手(埼玉西武)
グラシアル選手(福岡ソフトバンク)
デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)
7位:3本
角中勝也選手(千葉ロッテ)
8位タイ:2本
ウィーラー選手(楽天)
中村剛也選手(埼玉西武)
レアード選手(千葉ロッテ)
井上晴哉選手(千葉ロッテ)
清田育宏選手(千葉ロッテ)
今宮健太選手(福岡ソフトバンク)
明石健志選手(福岡ソフトバンク)

 3ラン部門ではブラッシュ選手が他の大砲を引き離し、リーグトップの数字を記録している。8月27日の千葉ロッテ戦で同点の延長10回に放った劇的なサヨナラ3ランをはじめ、4月28日の千葉ロッテ戦、5月28日の埼玉西武戦と逆転3ランも2度記録。来日1年目から33本塁打を記録した頼れる助っ人は、複数の走者が塁上をにぎわせている場面でも頼もしいバッティングを披露している。

 2位タイでは6名の選手が並んでいるが、今シーズン好調の長距離砲たちに並んで、シーズン11本塁打の渡邉選手が名を連ねているのが目を引くところ。全本塁打のうち、実に36.4%が3ランという計算だ。逆転3ランを2度記録していることに加え、8月10日には福岡ソフトバンクのエース・千賀滉大投手からも3ラン。大チャンスといえる状況でも臆することなく、持ち前のパンチ力を発揮していると言えそうだ。

 ソロや2ランと比べてトータルの本塁打数自体が少ないこともあり、8位タイには同数で7人が並ぶ結果に。今季わずか5本塁打の明石選手が含まれていたのはやや意外だったが、秋山幸二氏を彷彿とさせるホームイン時のバック宙で話題を呼んだ、4月25日のオリックス戦でのサヨナラ弾も3ランだった。今宮選手、清田選手、明石選手に加えて7位の角中選手も規定打席未到達者であり、顔ぶれとしてもなかなか興味深いものとなっている。

満塁

1位:4本
中村剛也選手(埼玉西武)
2位:3本
レアード選手(千葉ロッテ)
3位タイ:2本
中田翔選手(北海道日本ハム)
森友哉選手(埼玉西武)
5位タイ:1本
渡邉諒選手(北海道日本ハム)
ブラッシュ選手(楽天)
茂木栄五郎選手(楽天)
山川穂高選手(埼玉西武)
清田育宏選手(千葉ロッテ)
鈴木大地選手(千葉ロッテ)
江村直也選手(千葉ロッテ)
ロメロ選手(オリックス)
デスパイネ選手(福岡ソフトバンク)
柳田悠岐選手(福岡ソフトバンク)
福田秀平選手(福岡ソフトバンク)

 大方の予想通りと言うべきか、満塁の場面における圧倒的な勝負強さで知られる中村選手がリーグ最多の4本塁打を放った。中村選手は歴代最多となる通算20本の満塁本塁打を記録している日本記録保持者でもあるが、今季だけでその1/5となる本塁打を積み上げた計算だ。9月4日と9月6日には3日間で2本の満塁弾を放つ離れ業を演じており、今季の満塁時における打率.531、49打点という驚異的な相性の良さを証明している。

 2位に入ったのはレアード選手。移籍1年目から32本塁打を放った助っ人は、ソロ、2ラン、3ランの3部門を含めた全てのカテゴリーでトップ10入りを果たしたが、順位としてはその中でも満塁時が最も高くなっている。こちらも満塁では3本塁打に加えて打率.400、21打点と強さを見せており、中村選手には及ばずとも、十分に“満塁男”と形容できるだけの成績を残している。

 2本で3位タイに入ったのは、森選手と中田選手の2名。森選手は昨季も3本の満塁弾を放っており、今季の満塁時の打率は.571。打率だけなら同僚の中村選手をも上回っており、こちらもフルベースの状況で存在感を発揮している。中田選手は開幕戦で2者連続敬遠の直後にサヨナラ満塁弾というあまりにも劇的な一打を放ち、全国のファンに4番の意地を見せつけた。

 満塁ホームランという出来事自体がかなり珍しいこともあり、このランキングでも満塁ホームランを1本でも打った選手はもれなくトップ10に名を連ねる結果となった。各球団ファンの中には「この選手の満塁弾といえば、あの場面でのホームランのことかな」と、その光景やシチュエーションを思い出せる方も少なくないのではなかろうか。

4部門全てでトップ10入りを果たした選手は全部で4人

 以上のように、リーグ本塁打王の山川選手が、部門別のランキングでもソロと2ランの2冠に輝いている。また、3ラン部門はブラッシュ選手、満塁部門は中村選手がそれぞれ印象的な活躍を見せ、部門別でリーグ最多となる本塁打数を記録している。

 また、すべてのランキングに名前が載ったのは、山川選手、レアード選手、デスパイネ選手の3名だった。いずれもチームトップの本塁打数を記録している各球団の主砲であり、彼らがあらゆるシチュエーションで本塁打を放っていることは、相手に対する恐怖感や、チームにとっての期待値という点でも大きな意味を持ちそうだ。

 全体の数字としてはソロ本塁打が一番多く、2ラン、3ラン、満塁という順に、走者が多くなるにつれて順当に本塁打数が少なくなっていく。野球はそう簡単に複数の塁を埋められるスポーツではないため、こういった傾向が出るのは当然と言えるか。とりわけ、満塁の部門では1本でもホームランを打てばそれだけでリーグのトップ10に入れていたという事実が、その希少性を如実に物語っていると言えるだろう。

 秋山選手のように走者がいない場面で多くの本塁打を放っている選手もいれば、中村選手のように満塁で抜群の強さを発揮している選手もいる。単なる本塁打数を見るだけでは把握できない、選手個々の状況別の強さを頭に入れておけば、「この選手は走者2人の状況に強いから、この場面では期待ができる!」といった視点から野球観戦を行うことも、あるいは可能になってくるのではないだろうか。

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

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