「この選手はこの球団、あるいはこの選手に強い」という、いわゆる「○○キラー」と呼ばれる選手は、どのシーズンにも往々にして存在してきたものだ。もちろんそれは2019年も例外ではなく、多くの選手がそれぞれの得意とする相手に対して出色の活躍を見せている。
そこで、今回は7月末時点での成績をもとに、各球団の主力選手の中から特に相性の優れた対戦相手を持つ面々を紹介。各チームにとっての「○○キラー」は誰なのか? おのおのの相性について、数字をもとに考えていきたい。
(チーム別の対戦成績は7月31日時点、個人の対戦成績は8月5日時点の数字を参照)
北海道日本ハム
金子弌大投手
対オリックス:4試合 2勝0敗 21回 17奪三振 防御率0.86
加藤貴之投手
対楽天:6試合 0勝0敗1ホールド 15.2回 11奪三振 防御率0.57
有原航平投手
対福岡ソフトバンク:3試合 2勝1敗 21回 15奪三振 防御率1.29
堀瑞輝投手
対楽天:6試合 2勝0敗 8回 8奪三振 防御率0.00
石川直也投手
対埼玉西武:7試合 0勝0敗3ホールド1セーブ 7回 11奪三振 防御率0.00
近藤健介選手
対楽天:16試合 0本塁打 7打点 21安打 打率.356 出塁率.466
大田泰示選手
対千葉ロッテ:14試合 0本塁打 5打点 20安打 打率.364 出塁率.407
対埼玉西武:15試合 2本塁打 11打点 22安打 打率.349 出塁率.408
西川遥輝選手
対埼玉西武:18試合 1本塁打 10打点 26安打 打率.347 出塁率.430
王柏融選手
対オリックス:9試合 2本塁打 7打点 17安打 打率.447 出塁率.488
中田翔選手
対埼玉西武:18試合 6本塁打 16打点 24安打 打率.338 出塁率.422
対千葉ロッテ:17試合 6本塁打 11打点 20安打 打率.333 出塁率.429
田中賢介選手
対千葉ロッテ:9試合 1本塁打 4打点 6安打 打率.429 出塁率.467
対埼玉西武:10試合 0本塁打 2打点 8安打 打率.364 出塁率.417
対福岡ソフトバンク:7試合 0本塁打 4打点 4安打 打率.364 出塁率.385
金子投手はやはり古巣のオリックスを知り尽くしているということか、7月23日の対戦では6回を無安打に抑えるなど、4試合で防御率0.86という抜群の投球内容を見せている。また、今季はショートスターターとしての登板も増えている加藤投手は、楽天戦で4度の先発、2度の中継ぎを経験して自責点はわずかに1(失点2)。起用法を問わずに快投を見せ、楽天打線を封じ込めている。
打線では近藤選手が楽天、西川選手が埼玉西武を得意としており、王選手もオリックス戦で打率.447に加え2本塁打を記録。ほか、千葉ロッテ戦では大田選手と中田選手が相性の良さを見せ、対戦成績の勝ち越しにも貢献している。そして、今季限りでの引退を表明している田中賢介選手も3球団に対して好成績を残しており、現役最終年もさすがの打撃技術を披露している。
選手個々の対戦成績に目を向けてみると、近藤選手が岩下大輝投手(千葉ロッテ)から4打数4安打、相内誠投手(埼玉西武)から3打数3安打と、それぞれ打率10割を記録。大田選手も涌井秀章投手(千葉ロッテ)から3打数3安打で、渡邊諒選手は十亀剣投手(埼玉西武)から5打数4安打の打率.800、今井達也投手(埼玉西武)とチェン・グァンユウ投手(千葉ロッテ)の2人からそれぞれ4打数3安打の打率.750と、好相性の投手を3人作っている。
楽天
松井裕樹投手
対福岡ソフトバンク:8試合 1勝0敗2ホールド5セーブ 8回 13奪三振 防御率0.00
美馬学投手
対福岡ソフトバンク:3試合 2勝0敗 23回 17奪三振 防御率0.78
ブセニッツ投手
対北海道日本ハム:6試合 0勝0敗1ホールド 6回 9奪三振 防御率0.00
ハーマン投手
対埼玉西武:5試合 0勝0敗5ホールド 4.2回 2奪三振 防御率0.00
森原康平投手
対オリックス:9試合 0勝0敗4ホールド 8回 12奪三振 防御率0.00
茂木栄五郎選手
対千葉ロッテ:13試合 2本塁打 7打点 19安打 打率.373 出塁率.467
対埼玉西武:11試合 1本塁打 6打点 16安打 打率.364 出塁率.462
藤田一也選手
対北海道日本ハム:8試合 1本塁打 2打点 8安打 打率.533 出塁率.563
銀次選手
対福岡ソフトバンク:17試合 1本塁打 7打点 25安打 打率.385 出塁率.429
浅村栄斗選手
対千葉ロッテ:14試合 5本塁打 11打点 20安打 打率.357 出塁率.431
ブラッシュ選手
対北海道日本ハム:12試合 4本塁打 10打点 12安打 打率.343 出塁率.511
対福岡ソフトバンク:16試合 5本塁打 13打点 18安打 打率.340 出塁率.444
ウィーラー選手
対千葉ロッテ:14試合 6本塁打 17打点 22安打 打率.431 出塁率.517
美馬学投手といえば、7月19日に福岡ソフトバンク打線を8回まで無安打無走者に封じ込めた快投が記憶に新しいところ。今季はその試合を含め、福岡ソフトバンクを3試合で2勝、防御率0.78と、まさに“カモ”にしている。また、守護神の松井投手も福岡ソフトバンク相手に8試合の登板で無失点と抑え込んでおり、強豪を相手に先発陣の一角とクローザーが揃って相性の良さを見せている。
打線でも銀次選手が福岡ソフトバンク相手に打率.385と活躍し、ブラッシュ選手も対戦相手別で最多の5本塁打を放っている。また、ウィーラー選手は千葉ロッテに対して打率.431、6本塁打、出塁率.517と抜群の好相性を誇っており、茂木選手と浅村選手も対戦相手別で最も高い打率を記録。ベテランの藤田選手は北海道日本ハムに対して打率.533と驚異的な数字を残しており、主力選手の多くがそれぞれ得意な相手を見出していると言えそうだ。
相性面では藤田選手が玉井大翔投手を4打数4安打と得意としており、銀次選手も甲斐野央投手(福岡ソフトバンク)から3打数3安打、金子弌大投手(北海道日本ハム)から8打数5安打。茂木選手は公文克彦投手(北海道日本ハム)とボルシンガー投手(千葉ロッテ)の2人からそれぞれ4打数3安打で打率.750を記録しているのに加え、有原航平投手(北海道日本ハム)から11打数6安打の打率.545と、今季絶好調の右腕に対しても好相性を誇っている。
埼玉西武
本田圭佑投手
対千葉ロッテ:4試合 4勝0敗 27回 9奪三振 防御率1.67
十亀剣投手
対福岡ソフトバンク:2試合 1勝1敗 13回 11奪三振 防御率1.38
増田達至投手
対オリックス:6試合 1勝0敗1ホールド1セーブ 6回 8奪三振 防御率0.00
平井克典投手
対オリックス:8試合 2勝0敗4ホールド 8.1回 8奪三振 防御率0.00
ヒース投手
対北海道日本ハム:7試合 1勝0敗1ホールド1セーブ 7回 7奪三振 防御率0.00
秋山翔吾選手
対オリックス:15試合 0本塁打 3打点 21安打 打率.368 出塁率.486
対北海道日本ハム:18試合 7本塁打 11打点 25安打 打率.338 出塁率.410
対楽天:11試合 3本塁打 6打点 15安打 打率.357 出塁率.491
森友哉選手
対千葉ロッテ:16試合 1本塁打 14打点 23安打 打率.365 出塁率.412
山川穂高選手
対福岡ソフトバンク:16試合 9本塁打 18打点 17安打 打率.274 出塁率.357
木村文紀選手
対千葉ロッテ:14試合 2本塁打 5打点 12安打 打率.353 出塁率.436
メヒア選手
対楽天:10試合 3本塁打 8打点 6安打 打率.462 出塁率.500
本田投手は今季挙げた5勝のうち4勝を千葉ロッテから挙げており、対戦防御率も1点台。まさに“千葉ロッテキラー”だ。松田宣浩選手と十亀剣投手の相性(通算打率.591)はよく話題になるが、チーム全体に目を移せば話は別。今季は2試合で対戦防御率1点台と、十亀投手が福岡ソフトバンクを抑え込んでいる。救援陣を支える平井投手と増田投手はそれぞれオリックスを無失点に封じ込めており、10勝5敗という対戦成績にも貢献している。
打線では森選手に加えて木村選手が千葉ロッテ戦で活躍を見せており、こちらは打の千葉ロッテキラーと言えそうだ。秋山選手はオリックス、楽天、北海道日本ハムの3球団に対して好相性を示しており、さすがの打撃センスを見せている。また、山川選手は福岡ソフトバンク戦だけで9本塁打と荒稼ぎ。目標の50本塁打を目指すためにも、この相性を終盤戦も維持していきたいところだ。
秋山選手は4打数4安打1本塁打と得意にしている金子弌大投手(北海道日本ハム)に加え、石橋良太投手(楽天)と酒居知史投手(千葉ロッテ)にも3打数3安打と、3人の投手に対して打率10割を記録。金子侑司選手もエップラー投手(オリックス)に対して3打数3安打で、源田壮亮選手は榊原翼投手(オリックス)への3打数3安打を筆頭に、大竹耕太郎投手を8打数5安打の打率.625、涌井投手を16打数8安打の打率.500と、ローテーション投手を得意にしている。
千葉ロッテ
二木康太投手
対楽天:3試合 1勝0敗 19.2回 19奪三振 防御率0.92
岩下大輝投手
対オリックス:5試合 1勝0敗 29.2回 24奪三振 防御率1.52
石川歩投手
対埼玉西武:3試合 1勝0敗1ホールド 9回 7奪三振 防御率1.00
西野勇士投手
対埼玉西武:7試合 0勝0敗ホールド1セーブ 7回 7奪三振 防御率0.00
チェン投手
対埼玉西武:7試合 0勝0敗1ホールド 11回 7奪三振 防御率0.00
荻野貴司選手
対福岡ソフトバンク:13試合 0本塁打 3打点 14安打 打率.341 出塁率.404
レアード選手
対埼玉西武:17試合 5本塁打 13打点 24安打 打率.375 出塁率.438
清田育宏選手
対福岡ソフトバンク:10試合 2本塁打 4打点 10安打 打率.357 出塁率.455
対楽天:11試合 1本塁打 8打点 10安打 打率.357 出塁率.438
井上晴哉選手
対福岡ソフトバンク:10試合 6本塁打 14打点 15安打 打率.469 出塁率.585
二木投手は楽天戦で3度登板し、白星こそ1勝ながら防御率は0.92。相性がいいのは今季だけではなく、2017年は5試合で防御率1.97、2018年は4試合で防御率3.00と、例年得意としている傾向にあるようだ。岩下投手はオリックス戦で5試合登板して安定した投球を見せており、対戦防御率19.29と打ち込まれた昨季とは違った姿を示している。7試合、11イニングを自責点0に抑えているチェン投手をはじめ、埼玉西武に強い投手が多いのも特徴か。
野手陣ではレアード選手が埼玉西武から高打率に加えて5本塁打を記録しており、スシボーイにとっては文字通りの“お得意様”と言えそう。また、福岡ソフトバンクに対して打率.469、6本塁打と打ちまくっている井上選手をはじめ、清田選手と荻野貴選手も好相性を示している。このあたりにも、チーム全体がホークスを得意としている理由の一端が見えてきそうだ。
相性面に目を向けると、レアード選手が埼玉西武の助っ人右腕2人、ニール投手とマーティン投手に対してそれぞれ3打数3安打と強さを見せ、対戦チーム別の好相性にもつなげている。荻野貴選手も平井克典投手(埼玉西武)に4打数4安打、澤田圭佑投手(オリックス)に3打数3安打とそれぞれ打率10割で、高橋光成投手に対しても7打数5安打の打率.714と多くの投手をカモに。鈴木大地選手もエップラー投手(オリックス)を3打数3安打の打率10割、武田翔太投手(福岡ソフトバンク)を4打数3安打の打率.750と、複数のお得意様を作っている。
オリックス
山本由伸投手
対埼玉西武:2試合 1勝0敗 16回 16奪三振 防御率0.00
対福岡ソフトバンク:5試合 2勝1敗 39.2回 39奪三振 防御率1.59
山岡泰輔投手
対楽天:6試合 5勝1敗 44回 43奪三振 防御率2.05
近藤大亮投手
対福岡ソフトバンク:6試合 2勝0敗2ホールド 6.1回 7奪三振 防御率0.00
山崎福也投手
対北海道日本ハム:6試合 0勝0敗 7.1回 5奪三振 防御率0.00
海田智行投手
対埼玉西武:5試合 0勝0敗2ホールド 5回 2奪三振 防御率0.00
吉田正尚選手
対埼玉西武:15試合 6本塁打 11打点 21安打 打率.420 出塁率.525
福田周平選手
対福岡ソフトバンク:15試合 0本塁打 4打点 20安打 打率.339 出塁率.400
大城滉二選手
対千葉ロッテ:13試合 0本塁打 3打点 14安打 打率.368 出塁率.455
安達了一選手
対千葉ロッテ:5試合 0本塁打 1打点 6安打 打率.462 出塁率.533
マレーロ選手
対千葉ロッテ:6試合 1本塁打 5打点 7安打 打率.438 出塁率.500
山本投手はシーズン防御率1.89と相手を問わずに抜群の安定感を示しているが、埼玉西武には2試合で自責点0。福岡ソフトバンクに対しても防御率1点台で、上位チームに対しても強さを見せているといえそうだ。山岡投手は7月末までに挙げた8勝のうち5勝を楽天戦だけで記録し、対戦防御率も2.05。対戦機会自体も他球団の倍以上となっており、今後もお得意様を相手に勝ち星を重ねていくことができるかに注目だ。
打線では吉田正選手が、埼玉西武を相手に6本塁打、打率.420、出塁率.525と大暴れ。中でも多和田真三郎投手のことは12打数8安打2本塁打とカモにしており、今後も相性の良さを保っていけるか。また、大城選手、安達選手、マレーロ選手と千葉ロッテを得意としている選手が多いのも特徴で、このあたりが対戦成績の勝ち越しにも寄与していそうだ。
吉田正選手は先述の多和田投手に加え、高橋光投手を5打数4安打の打率.800、美馬学投手(楽天)を12打数7安打の打率.583、ニール投手(埼玉西武)を6打数4安打の打率.667と、複数の投手を打ち込んで相性面でも存在感を発揮。多和田投手に対しては中川圭太選手も7打数5安打の打率.714で、福田選手は大竹投手(福岡ソフトバンク)を10打数7安打の打率.700、上沢直之投手(北海道日本ハム)を4打数3安打の打率.750と得意にしている。
福岡ソフトバンク
千賀滉大投手
対北海道日本ハム:3試合 3勝0敗 20回 25奪三振 防御率1.35
対埼玉西武:2試合 1勝0敗 14回 17奪三振 防御率0.00
高橋礼投手
対埼玉西武:5試合 4勝1敗 30回 17奪三振 防御率2.70
甲斐野央投手
対オリックス:7試合 0勝0敗5ホールド1セーブ 6回 8奪三振 防御率0.00
嘉弥真新也投手
対北海道日本ハム:7試合 0勝0敗2ホールド 3回 3奪三振 防御率0.00
武田翔太投手
対オリックス:6試合 2勝0敗3ホールド 19.1回 15奪三振 防御率1.86
グラシアル選手
対オリックス:12試合 4本塁打 8打点 17安打 打率.378 出塁率.408
対千葉ロッテ:7試合 1本塁打 1打点 10安打 打率.370 出塁率.433
松田宣浩選手
対千葉ロッテ:15試合 7本塁打 8打点 18安打 打率.321 出塁率.377
福田秀平選手
対千葉ロッテ:3試合 1本塁打 3打点 4安打 打率.500 出塁率.556
対楽天:8試合 0本塁打 0打点 11安打 打率.407 出塁率.448
甲斐拓也選手
対オリックス:18試合 1本塁打 4打点 18安打 打率.340 出塁率.410
川島慶三選手
対北海道日本ハム:5試合 1本塁打 3打点 6安打 打率.462 出塁率.467
対楽天:8試合 0本塁打 0打点 5安打 打率.455 出塁率.538
高橋礼投手は埼玉西武を相手に開幕から4戦4勝だったが、7月30日に6回3失点ながら初黒星。快進撃を続けるサブマリンは、今後も強力打線を相手に好成績を保てるか。千賀投手も北海道日本ハムを相手に3戦3勝、埼玉西武に2試合で防御率0.00と圧巻の投球を見せており、先発2人が上位を争う2チームに強さを見せているのは今後に向けても大きそうだ。また、リリーフの甲斐野投手と嘉弥真投手も、それぞれ対戦防御率0.00の“お得意様”を作っている。
今季の福岡ソフトバンクは千葉ロッテを苦手としているが、選手個々に目を向けると、松田選手、グラシアル選手、福田選手と好相性を示している選手も存在する。7本塁打を放っている松田選手の前にいかに走者を溜めていくかが、苦手克服のためのカギとなりそうだ。また、川島選手が北海道日本ハムと楽天の2球団を打ち込んでおり、今季もベテランならではの存在感を発揮している。
個々の相性では内川聖一選手が岸孝之投手(楽天)を5打数5安打1本塁打、竹安大知投手(オリックス)を5打数5安打とそれぞれカモにしている。また、甲斐選手も竹安投手に対しては3打数3安打と相性が良い。今宮選手は宋家豪投手(楽天)に4打数3安打1本塁打の打率.750、アルバース投手(オリックス)に7打数5安打1本塁打の打率.714、岩下投手(千葉ロッテ)に7打数4安打2本塁打の打率.571と多くの投手を捉えており、打者としての成長ぶりがうかがえる。
以上のように、特定のチーム、あるいは選手に強い「○○キラー」と呼べる選手は、今季も各球団に存在している。シーズンが終わるまでこの相性が継続していくのか、あるいは“カモ”にされている球団や選手が研究と意地を見せてやり返すのか。いよいよペナントレースも佳境に入ってくる中で、各選手の相性といった角度から試合を見ていくのも面白いのではないだろうか。
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