あの打席、外崎と山川の脳裏に浮かんだのはーールーキー甲斐野との対戦をプレイバック

中島大輔

2019.3.31(日) 19:27

福岡ソフトバンクホークス・甲斐野央投手(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・甲斐野央投手(C)パーソル パ・リーグTV

ルーキーらしからぬ堂々とした投球に、埼玉西武の強打者からも賛辞の声

「ホームランを狙っていましたよ。当たらなかったですね」
前日まで2試合連続本塁打の埼玉西武の主砲・山川穂高がそう振り返ったのは、3月31日に行われた福岡ソフトバンク戦の8回表、1対3で迎えた1死1塁の場面だった。

 先制された福岡ソフトバンクは6回に柳田悠岐のツーランで逆転すると、7回には上林誠知がライトにソロ本塁打を放ってリードを広げる。あと1イニングを抑えればクローザーの森唯斗につなげる8回、3番手の嘉弥真新也が1死から3番・秋山翔吾にレフト前安打を打たれると、一発出れば同点の場面でドラフト1位ルーキーの甲斐野央がマウンドに送り込まれた。
「緊張していました。山川さんには単打はOK。一発より単打の方が(まだいい)と思っていました」

 開幕戦で延長10回から登板し、2イニングで5三振を奪って初勝利を飾った右腕は言葉とは裏腹に、冷静に状況を見極めると埼玉西武打線に立ちはだかった。
「あまりイメージになかったです」と山川が振り返ったスライダーを初球から続け、1ボール、1ストライク。3球目は152km/hの内角ストレートでバットに空を切らせると、フォークを3連投して空振り三振に斬って取った。

埼玉西武・山川に対する福岡ソフトバンク・甲斐野の配球(C)PLM
埼玉西武・山川に対する福岡ソフトバンク・甲斐野の配球(C)PLM

 しかし、続く森友哉はフルカウントから四球で歩かせて2死1、2塁。打席にはここまで3打数無安打、打率.083の外崎修汰が向かう。
「チャンスだったので、1本出れば自分自身もチームの流れも変わるので、とにかく積極的に行きたいなという感じでした」

 初球は真ん中低めのフォークを空振り。そして結果球となる2球目、勝負の伏線となったのは、開幕戦で外崎の脳裏に刻まれた甲斐野のイメージだった。
「(甲斐野は)プレートを踏む位置が一塁側なので、結構(内に)入ってくる感じがあります。それで詰まらされた? 逆ですね。インコースを意識しすぎて、(体が)開いて。バットも外側に出てきちゃって」

 外崎は外角の152km/hストレートに詰まらされてサードゴロ。8回途中から登板した甲斐野は埼玉西武の強力打線を見事に封じ、守護神・森にバトンをつないだ。試合後、自身の役割を聞かれた甲斐野はこう話している。
「(8回を投げることは)意識はしていません。試合に入り込んで、初球からいい球を投げることを意識しています」

「緊張した」と言いながら、一発同点の場面で実に堂々とした投球だった。最速155km/hの豪腕について、山川は「2回の対戦ではまだわからない」としつつ、「追い込まれるまでに勝負をつけないといけないピッチャー」と話した。森が「真っすぐも速いですし、フォーク、スライダーとすべてにおいてキレがあるなと感じました」と言えば、外崎は「真っすぐが強い」と話している。強力ブルペンを誇る福岡ソフトバンクは、頼もしい駒を加えて開幕3連勝を飾った。

 一方、埼玉西武は「鬼門」ヤフオクドームで5年ぶりの開幕3連敗。自慢の山賊打線はまだ状態が上がっておらず、山川が「修正するところがたくさんあります。まだ3試合ですし、まずそこを直していきたい」と言えば、外崎は「バットが外側から出ていたので、そこを修正しないといけない」と振り返った。

 両チームの明暗がくっきり分かれる開幕3連戦となったが、いずれも勝負の行方は紙一重だった。福岡ソフトバンクは甲斐野や3戦目にプロ入り初勝利を飾った高橋礼などフレッシュな面々が活躍、対する埼玉西武は先発の今井達也、髙橋光成がともに持ち味を発揮し、今後に期待が持てる投球だった。昨季の上位2チームは実力伯仲しており、今年も白熱した争いが見られそうだ。

文・中島大輔

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中島大輔

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