最後まで熾烈な争いが展開されるか
7月29日の試合終了時点で、周東佑京選手が26盗塁、小深田大翔選手が25盗塁を記録している。両選手は2023年に揃って36盗塁を記録してタイトルを分け合った経験を持つだけに、今季も最後まで目が離せないタイトル争いが展開される可能性も大いにありそうだ。
今回は、周東選手と小深田選手が直近3シーズンで記録した月別成績を見ていくとともに、両選手が示している傾向を確認。両選手の過去の成績と実績を振り返っていくとともに、今後の盗塁王争いについても展望していきたい。(※記録は7月29日の試合終了時点)
月間11盗塁以上を2度記録
周東選手が直近3シーズンで記録してきた、月別の成績は下記の通り。

2023年は4月から6月まで3カ月連続で月間打率1割台と不振にあえいだが、それでも6月末の時点で15盗塁を記録。また、6月から8月までは3カ月続けて打数が20未満と打席に立つ機会自体が少なかったが、7月は4盗塁、8月は5盗塁と着実に盗塁数を上積みし、足のスペシャリストとして持ち前の技術を発揮していた。
そして、9月は打率.360と打撃成績が劇的に向上し、出場機会も大きく増加。塁に出る回数が増えたことも手伝い、月間11盗塁と驚異的な数字を記録した。同年におけるタイトル獲得は、まさに9月における大活躍が直接的な要因であると考えられよう。

2024年は3月に3試合でわずか1安打ながら2盗塁を記録し、4月は6盗塁に加えて打率.346と打撃面でも活躍。5月には打率.200と不振に陥ったものの、月別最多となる9盗塁を挙げた。8月にも月間打率.215ながら8盗塁を記録しており、低打率にあえいだ月でも着実に盗塁数を稼いでいたことがうかがえる。
8月は月間打率.277で5盗塁、9月は月間打率.333で4盗塁と、後半戦では着実に盗塁数を積み上げるとともに、打撃面でも復調を示した。いずれの月でもコンスタントに盗塁数を稼いだ抜群の安定感が、4年ぶり2度目となるシーズン40盗塁超えの快挙にもつながっている。

2025年は3月に開幕3試合で5安打と絶好のスタートを切ると、4月も打率.347と好調を維持させ、19試合で6盗塁と3年連続の盗塁王に向けてまずまずの数字を記録していた。しかし、4月23日に死球を受けて離脱を余儀なくされてしまい、5月はわずか7試合の出場にとどまった。
6月は21試合で6盗塁と一定の数字を残したものの、6月末の時点で合計14盗塁とタイトル争いの面ではやや出遅れる格好となっていた。だが、7月に入ってからは19試合で12盗塁とまさに圧倒的なペースで盗塁数を積み上げ、3年連続4度目の盗塁王に向けて一気にギアを上げてきている。
今季も後半戦で大きく数字を伸ばせるか
続いて、小深田選手が直近3シーズンで記録した月別成績を見ていこう。

2023年は4月に打率.268、4盗塁と、打撃と走塁の両面でまずまずの数字を記録。5月は打率.186と苦しんだものの、月間7盗塁と走塁面では数字を伸ばした。6月と7月は2カ月続けて打率.259以上を記録していずれも4盗塁を積み上げるなど、総じて前半戦では安定した数字を残していた。
8月も月間打率.253と打撃面ではこれまで同様の成績ながら、盗塁数は7個に増加。続く9月には月別最高の数字となる打率.326を記録し、同じく月別最多の9盗塁を記録。同時期に盗塁数を伸ばした周東選手とのマッチレースを経て、タイトルを分け合うかたちで自身初の盗塁王に輝いた。

2024年は4月に打率.174と打撃不振に陥る中で月間7盗塁を記録し、5月には4盗塁に加えて打率.276とバッティングも復調。6月にも7盗塁を積み上げて6月末の時点で19盗塁を記録し、2年連続のタイトル獲得に向けて順調に盗塁数を積み上げていた。
しかし、7月以降は3カ月連続で月間3盗塁と盗塁のペースが低下し、7月以降の4カ月で合計10盗塁と数字を伸ばしきれず。同年の盗塁王に輝いた周東選手とは最終的に12個の差をつけられ、2年連続のタイトル獲得は果たせなかった。

2025年は開幕カードでは打率.167と苦戦したものの、4月には月間打率.267、6盗塁と復調を示した。5月は月間打率.211ながら9盗塁を記録し、6月にも月間打率.205とさらに打率が低下する一方で6盗塁を積み上げるなど、打撃面では苦しみながらも着実に盗塁を重ねてきた。
7月は17試合で34打数と打席に立つ機会がやや減少しているが、それでも4盗塁に加えて月間打率.265、月間出塁率.350と、打撃の状態が上向きつつある。打率と出塁率の差を示す「IsoD」は現時点でキャリア最高の.093と選球眼が向上しているだけに、このまま打率が上昇して出塁数が増加すれば、周東選手とのマッチレースを制する可能性も十分にありうる。
安定性と爆発力を加味すると、現状では周東選手が優位か
両選手が残した8月以降の成績を確認すると、2023年においては周東選手と小深田選手がともに17盗塁と、奇しくも全く同じ数字となっていた。両選手が終盤戦に突入してからも多くの盗塁を積み上げられるだけのポテンシャルを持つことが、この数字からも読み取れよう。
2024年における同期間の成績に関しては、周東選手が9盗塁に対して小深田選手が7盗塁と、同年にタイトルを獲得した周東選手に軍配が上がる結果となった。今季も7月に入ってから大きく盗塁数を伸ばし、負傷離脱による遅れを取り戻しつつあることを鑑みれば、現時点では周東選手がタイトル争いにおいて優位な立場にあると考えられる。
ただし、小深田選手も7月に入ってから打撃面で状態を上げつつあるだけに、2023年のように終盤戦においてハイレベルな成績を残すことができれば、タイトル獲得の可能性は十二分にあるはずだ。2年前のように盗塁王の座を争う熾烈なマッチレースが最終盤まで続くかどうか、2名の韋駄天が残るシーズンで見せる活躍は今後も要注目となりそうだ。
