
◆SMBC日本シリーズ2023第3戦 阪神4―5オリックス(31日・甲子園)
東の快進撃には続きがあった。今季6勝0敗で昨年のデビューから無傷の7連勝。そしてこの日の大舞台で“8連勝”。「この経験はなかなかできることではないので、ホッとしています」。育成ドラフト出身で日本シリーズで先発勝利を挙げるのは史上4人目。球団では初の快挙を成し遂げた。
甲子園の雰囲気を問題にしなかった。「初回に(歓声が)すげぇ…と思ったけど、打者と勝負していたら聞こえない感じだった」。甲子園では、一昨年の2軍戦で打球が直撃し、右肘骨折による長期離脱を味わったが、たくましくなった右腕は「大丈夫」と気持ちを整えながら、冷静にアウトを積み重ねた。2回に内野ゴロで先取点を与えたが、5回2死一、二塁のピンチでは力を振り絞り、中野を148キロで左飛に仕留めた。登板当日は、緊張から、うどんを30分以上かけて食べていたが、今は強い精神力を身につけ、5回1失点に封じた。
5回の打席で相手の失策で出塁。ベンチからウィンドブレーカーの着用を命じられた。だが、手渡されたのが、ルールで禁止されていたフード付き。代えて持ってきてもらった上着はサイズが小さかった。「(相手を)待たせるのもアレなので『いいです』って」とユニホームのままで走者としてプレー。宗の二塁打で一塁から生還し「人生で一番足が速かったと思います」と笑わせた。
新人時代、インステップするフォームを修正したが、それまでの得意球だったスライダーの制球に苦労した。習得に励んだのがカットボールだった。「球をどう離すかだけだよ」とある時、山本がそっと助言をくれた。エースの投球動画が、飛躍の足がかりにもなった。カーブ、チェンジアップと球種が豊富で、ツーシームはフォークのようにストンと沈む。捕手の若月は言う。「100キロから150キロ台まで、すべての球速帯を持っている。調子がいいときは、まるで由伸みたいですよ」
無敗の右腕は「運がいいのか、たまたまなのか、分からないですけど、行けるところまで行きたい」と黒星知らずで飛躍の一年を締める。(長田 亨)