能見篤史が台湾強豪校に熱烈指導。パ・リーグと台湾野球の未来をつなぐ活動【パ・リーグ台湾プロモーション前編】

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2025.9.29(月) 08:00

指導を行う能見篤史氏【©PLM】
指導を行う能見篤史氏【©PLM】

 パシフィックリーグマーケティング(以下、PLM)は、9月5日から7日までの3日間に渡って、台湾でパ・リーグ6球団のプロモーション活動を展開した。

「プロ野球の新しいファンを増やす」というミッションを掲げ、常に新しいファン市場の拡大を目指しているPLM。2025年のパ・リーグ主催試合は北米、台湾、韓国、中南米で放映・配信されているが、特に結びつきが強いのが台湾だ。

 台湾での放送・配信が12年目を迎えた今シーズンは、DAZN台湾がパ・リーグ6球団の主催試合を連日放送・配信している。2017年、孫易磊投手(現・北海道日本ハムファイターズ)が「WBSC U-12ワールドカップ」の代表選手アンケートで、憧れの選手として、当時北海道日本ハムに所属していた大谷翔平選手の名を挙げていたが、きっと孫投手も中継を見ながら、夢を膨らませていたのだろう。 

 PLMは一昨年、台湾プロ野球チーム・楽天モンキーズ主催の日本イベント「YOKOSO桃猿」においてパ・リーグ6球団のブースを出展以来、台湾現地でのプロモーションにも力を入れており、昨年は台湾プロ野球チーム・富邦ガーディアンズとの共同企画イベント「わくわく日本祭」を実施。杉谷拳士氏による現地の子どもたち向けの野球教室は好評を博した。

昨年のパ・リーグ台湾プロモーションの様子【前編】
昨年のパ・リーグ台湾プロモーションの様子【後編】

 そして今年は、オリックスOB・能見篤史氏を特別ゲストに迎え、台湾高校野球強豪チーム向けの野球教室や2年連続となる富邦との共同企画イベントに加え、ファンミーティングを開催した。今回は、それらを中心とした今年の台湾プロモーションについて、前編と後編に分けてお伝えしよう。

能見篤史がブルペン入りし、“台湾の大阪桐蔭”穀保家商投手陣に熱烈指導

 台湾入りした9月5日、現地のYouTubeコンテンツの収録に臨んだ能見氏。翌6日は、朝から富邦ガーディアンズの本拠地であり、台湾北部に位置する新北市の新荘球場に赴き、同市の強豪高校・穀保家商の選手たちに向けた野球教室を行った。

 かつてパ・リーグでプレーした楽天モンキーズ・陳冠宇投手や台鋼ホークス・王柏融選手らの母校でもある穀保家商。現在は台湾プロ野球にOBが46名在籍しているほか、楽天イーグルスの王彦程投手、蕭齊投手、北海道日本ハムの孫易磊投手、オリックスの陳睦衡投手、福岡ソフトバンクの張峻瑋投手らを輩出しており、陳冠宇投手は穀保家商を「台湾の大阪桐蔭」と表現するほどの強豪校だ。この日は主に新1、2年生の投手が参加しており、中には元U-15代表やU-18の代表候補の選手も複数いた。

 アップ、キャッチボールの後、早速ブルペンで指導が行われた。能見氏は各選手のフォームをチェックすると、それぞれの選手の課題をすぐさま指摘。特に、多くの選手に共通する課題として挙げられたのは、身体が開いてしまっているという点と、まっすぐ踏み込めていないために力がしっかり伝えられていないという点であった。能見氏は「自分が投げやすい歩幅をしっかり確認してください」、「高校時代はまず、フォーシームできれいな回転のボールを投げることを意識してください」などとアドバイスし、基本の大切さを強調した。

PLMと富邦の共同企画 野球教室記念撮影【©PLM】
PLMと富邦の共同企画 野球教室記念撮影【©PLM】

 その後、能見氏は、決め球のフォークをはじめとした各球種を実際に披露。現役時代さながらの美しいフォームに歓声が起きる中、フォークについては「挟んでも挟まなくても自由だけど、落とそうとして投げるのではなく、皆さん上背があるので、まっすぐの感じで真ん中低めに投げれば自然に落ちてくれる。ワンバンでも問題ない」と助言。さらに、スライダーについては「この握りで投げれば自然に曲がる。曲げようと意識するのではなく、どこでボールを離すかという意識をもってください」と、“フォームの再現性”を重視する能見流のコツが伝授された。さらにこの日は、リクエストに応え、けん制の指導も行われた。

「試練乗り越えないと、違う景色は見えてこない」台湾の未来のスターに金言送る

 ブルペンでの指導後は、室内でQ&Aの機会が設けられた。能見氏を前に、選手たちがなかなか質問できないでいると、能見氏は自ら「ピッチャーにとって一番だめなのは、マウンドあがってうまくいかなかった時に、『今日ダメでした』で終わってしまうこと。悪くても何かはできるはずなので、自分でどうすべきかを知っておかないといけない。そうすれば大崩れすることはない」とアドバイス。これには選手たちも深く頷いていた。

 続いて「試合中にストライクが取れなくなったが、スピードも下げたくない、という時にどうすればいいか」というコーチからの質問に対しては、「力みから発生するものかもしれないけど、どこでボールを離すかが重要。イメージとしては八割の力。腕を一生懸命振ろうとするより、バランスよく投げる方がボールの質はいいはず。そして、ピッチングというのは基本、相手との騙し合い。『いいボール=抑えられる』ではない。バッターを打ち取るために何をすべきか、そう考えると変わってくると思う」と能見氏。意識、発想の変化を求めた。

 そして結びの言葉として「皆さん、めちゃめちゃ能力が高いです。でも、その能力を生かすか殺すかは自分次第。野球はうまくいかない事の方が多いです。そこに対し、向き合って克服できるのか、それとも逃げるのか。乗り越えないと違う景色は見えてこないと思います。ここから何人かはプロになると思うので、非常に楽しみです」と激励のメッセージを送った。

指導後のQ&Aセッションの様子【©PLM】
指導後のQ&Aセッションの様子【©PLM】

 今回、野球教室に参加した選手たちは、来年や再来年のU-18大会の台湾代表の有力候補だ。厳しいプロの世界で18年間、43歳まで第一線で活躍した“能見コーチ”の金言をきっかけに、彼らが飛躍的に成長し、先輩たちのようにパ・リーグでプレーする機会をつかむ選手が生まれることを期待したい。

台湾のファンを前に「世界一美しい」ワインドアップ披露

 富邦との共同企画イベントでは、球場開門後、屋外ステージでクイズ大会とサイン会が行われた。クイズ大会では、パ・リーグおよび能見氏に関する問題が出題され、能見氏が直接回答者を指名。正解者にはパ・リーグで活躍する台湾選手のグッズが手渡されることもあって、大いに盛り上がりを見せた。また、サイン会では、現役時代の能見氏のグッズを手に、日本語でメッセージを伝える熱烈ファンもいた。

 その後、オリックス時代の教え子である張奕投手や埼玉西武でプレーした廖任磊投手、今季途中から富邦に入団した元BCリーグの鈴木駿輔投手を交え、談話の機会が設けられた。貴重な機会を生かそうと質問攻めの後輩たちに、能見氏は惜しみなく自身の経験をシェア。「以前おっしゃっていた事が、最近ようやくわかった気がします」と語る張奕投手には、「遅いよ」と笑顔で突っ込む場面もあった。

 そして、能見氏はこの日の始球式に登板。富邦が準備したネーム入り特製ユニフォームに袖を通し、「世界一美しい」といわれるワインドアップを台湾のファンの前で披露すると、スタンドから大きな歓声がおこった。

能見氏の「世界一美しい」ワインドアップ【©PLM】
能見氏の「世界一美しい」ワインドアップ【©PLM】

 後編では、9月7日に台北市内で開催されたファンミーティングイベント、そして、記念すべき台湾限定パ・リーググッズ販売のトピックを紹介する。

文・駒田 英

関連LIVE配信

特集
特集
パ・リーグ.com ニュース

能見篤史が台湾強豪校に熱烈指導。パ・リーグと台湾野球の未来をつなぐ活動【パ・リーグ台湾プロモーション前編】