千葉ロッテのリアルすぎる「AIダンス」の舞台裏。山本大斗「本当にオレが踊っているのかと思いました」

パ・リーグ インサイト

2025.8.14(木) 15:00

『APT』ダンスを披露する中森俊介投手と寺地隆成選手の若手バッテリー 【写真:球団提供】
『APT』ダンスを披露する中森俊介投手と寺地隆成選手の若手バッテリー 【写真:球団提供】

 パ・リーグファンにはすっかりおなじみの、千葉ロッテ夏の一大イベント「BLACK SUMMER WEEK supported by CooLish」。その期間中に行われた、7月31日の千葉ロッテ対東北楽天戦(東京ドーム)は、イニング間イベントも東京ドームならではのビジョンを生かした特別仕様だった。

 会場が暗転し音楽が流れ出すと、バックスクリーンに千葉ロッテの選手が登場。プロ顔負けのキレと滑らかさで、音楽に合わせて踊る姿にファンからは驚きと歓声がーー今回はそのAIダンスの模様と、その裏側について紹介する。

どんなセトリ? 「AIダンス」ショーの全貌

 5回裏終了後、球場が暗転。場内に流れ始めたのは、千葉ロッテ・山本大斗選手の登場曲でもある、ケンドリック・ラマーの『tv off』だった。観客席にはペンライトがきらめき、大型バックスクリーンには「BLACK SUMMER DISCO」のネオンカラーのタイトルが浮かび上がる。

 その瞬間、スクリーン上に登場したのは、山本選手と池田来翔選手。曲に合わせてジャンプしたり、手を交差させたりと、ノリノリでHIP HOPダンスを披露する姿が映し出された。あまりにも滑らかでリアルな動きに、思わず本物かと戸惑う声も。実は、AI技術を駆使した「ダンス映像」だったのだ。

 続いて流れたのは、ロゼ&ブルーノ・マーズのヒットチューン『APT』。中森俊介投手と寺地隆成選手が、軽快にAPTダンスを披露すると、意外な組み合わせに会場はどよめきと笑顔に包まれた。

 3曲目は今年のSNS界隈を席巻したCANDY TUNE『倍倍FIGHT!』。今度は藤原恭大選手と西川史礁選手が、ユーロビート調のアップテンポに乗せてキレのあるダンスを展開。普段のプレースタイルからは想像できない軽快な動きに、制作の裏側が気になるほどの完成度だった。

ティーンに人気の『倍倍FIGHT!』に合わせて踊る藤原恭大選手と西川史礁選手【写真:球団提供】
ティーンに人気の『倍倍FIGHT!』に合わせて踊る藤原恭大選手と西川史礁選手【写真:球団提供】

 フィナーレは、この日「ガンホースペシャルナイター」で始球式を務めた二宮和也さんにちなんだ『A・RA・SHI』。スクリーンには6人組のシルエットが映し出される。これまで登場した6選手が再登場し、本家さながらのキレキレのダンスでファンを魅了した。

 誰もが知る国民的ソングと、完璧にシンクロする映像に観客は騒然。東京ドームが一体となって盛り上がる夏の特別なイニング間イベントとなった。

「参加していただきたい選手が多く、本来嵐は5人組のところ6人になってしまったのはご愛嬌です(笑)」と千葉ロッテマリーンズの奈良林希さん【写真:球団提供】
「参加していただきたい選手が多く、本来嵐は5人組のところ6人になってしまったのはご愛嬌です(笑)」と千葉ロッテマリーンズの奈良林希さん【写真:球団提供】

千葉ロッテの「本気演出」に込められた舞台裏

 球場中が盛り上がった「AIダンス」。斬新な演出はどのようにして生まれたのか? 演出を企画した奈良林希さんは、舞台裏をこう話す。

「東京ドーム開催は、一種のお祭りのような特別な日。演出チームも気合を入れて準備するのですが、前日に東京ドーム側の都合で仕込み時間が確保できず、そのなかで浮かんだのが“AIを使ったダンス動画演出”というアイデアでした。新しい挑戦に快く協力してくれた選手には大変感謝しています」

 今回のAIダンスは、単に写真を動画化させ“踊らせてみた”ものではない。選手のダンスを自然な動きに見せるため、生成AIに学習させる「お手本動画」を撮影する必要があったという。

「おふざけではなくキレッキレでかっこ良いダンスを目指しました。そこで、プロのダンサーさんとスタジオにこもり、学習用の動画を撮影。よりリアルに近づけるため、選手のポーズなども盛り込みました」とのこと。リアルな仕上がりの裏には、こんな準備があったようだ。

「一見、AIなら簡単にできそうに思われがちですが、実際にはクリエイターの皆さんが細部まで何度も調整してくれたおかげです。粘り強い作業の積み重ねが、この一体感につながったのだと思います」とクリエイターへ深い感謝の意を示した。

気になる選手の反応は……?

 一方で気になるのは、華麗なるダンスを披露した選手の反応だ。BLACK SUMMER WEEK全日程を終えた寺地選手と山本選手が当日の様子を振り返ってくれたが、2選手とも映像の完成度に心底驚いていた様子だ。

寺地選手
「おもしろかったです。(どのタイミングで目にしましたか?)生で見ました。あんなのができるのかあと思いました。普通に写真が映し出されるのかなあくらいの印象だったので、あそこまで再現するのかあと思いました。ベンチの周りも笑っていました。(ご自身のダンスの経験は?)中学校の体育でダンスの時間があったので、その時にやったことがあるくらいですね」

山本選手
「本当にオレが踊っているのかと思いました。普通に正面、横、後ろを撮影しただけだったので、あんな感じのができるとは思っていませんでした。練習前にたぶんリハーサルでビジョンに流れていたと思うのですが、オレの登場曲(ケンドリック・ラマー『tv off』)がグラウンドから流れてきたので、あれ、なんだろう? と思ってグラウンドにいってみたらビジョンで流れていて笑いました。周りにいた選手も笑っていました。(ダンス経験は?)ダンスの経験はないですし、自信もないですね。自分ではできないので今後もAIでお願いします」

山本選手も驚きのキレキレダンス【写真:球団提供】
山本選手も驚きのキレキレダンス【写真:球団提供】

“AIの選手が踊る”という大胆な発想も、現場の地道な努力と多方面の協力によって初めて成立する。ファンの記憶に残る特別な演出となった今回の試み。今季のBLACK SUMMER WEEKは11日で終了したが、今後のマリーンズのイベント、はたまた来季のBLACK SUMMER WEEKにも大きな期待がかかる。そんな明らかな爪痕を残したクリエイティブだった。

文・波多野アイ
写真・千葉ロッテマリーンズ提供

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