【台湾プロ野球だより】21日開幕のWBC予選メンバー発表、呉念庭、孫易磊、翔聖らも選出

駒田英(パ・リーグ インサイト)

2025.2.20(木) 19:00

WBC予選の台湾代表に選出された呉念庭(台鋼ホークス)はチーム最年長。仕上がりは順調で活躍に期待集まる ©CPBL
WBC予選の台湾代表に選出された呉念庭(台鋼ホークス)はチーム最年長。仕上がりは順調で活躍に期待集まる ©CPBL

プレミア12優勝メンバーはキャプテン陳傑憲のみ、新たな布陣で本大会出場権獲得目指す

 台湾プロ野球を運営するCPBLは2月15日、台湾北部・台北市の台北ドームで21日から25日にかけ開催される「第6回ワールドベースボール・クラシック(WBC)」の予選1組に出場する台湾代表28人を発表した。

主にプレミア12未出場のCPBL主力選手と、若手「海外組」で構成されたメンバー。平均年齢は25歳、特に投手は23.4歳と、優勝したプレミア12よりぐっと若返った ©CPBL
主にプレミア12未出場のCPBL主力選手と、若手「海外組」で構成されたメンバー。平均年齢は25歳、特に投手は23.4歳と、優勝したプレミア12よりぐっと若返った ©CPBL

 昨年11月のプレミア12で優勝した台湾代表が、WBCでは予選から戦うことに驚かれる方もいらっしゃるだろう。前回2023年3月のWBCにおいて台湾代表は、地元台湾で開催された第1ラウンドA組で、初戦パナマには大敗も、多数のMLB経験者を擁するイタリア、オランダに連勝する健闘をみせ、勝てば東京ドームで行われる準々決勝にA組1位で進出となる最終キューバ戦を迎えた。しかし、台湾はキューバに完敗。全5チームが2勝2敗で並ぶ大激戦の結果、失点率で最下位となり、予選落ちとなってしまったのだ。今回、予選1組に入った台湾は、ニカラグア、スペイン、南アフリカと来年の本戦出場枠2枠をめぐって戦う。
 
 CPBLでは2月3日から代表合宿がスタートし、初日に参加メンバー36人を発表した。メディアもシャットアウトのCPBLチームとの非公開練習試合4試合の他、12日、13日には、南部・台南市で春季キャンプ中の韓国プロ野球、ロッテ・ジャイアンツとの交流試合2試合を台北ドームで行うなど、調整を行ってきた。
 
CPBLの蔡其昌コミッショナーは昨年12月の時点で、優勝したプレミア12の代表メンバーについては、コンディションを考慮し休ませる方針を示しており、プレミア12に引き続き選ばれたのは、本人が強く出場を志願した陳傑憲(統一セブンイレブン・ライオンズ)のみ。再びキャプテンを担う陳傑憲が新たなメンバーを率い、WBC本大会の出場権獲得を目指すこととなった。
 
 代表28人の内訳は投手15人、捕手3人、内野手6人、外野手4人。最少3試合、最多でも5日間で4試合ではあるものの、シーズン開幕まで時間があるうえ、WBCは厳格な球数制限、登板間隔が設けられていることから、投手が多めに選ばれ、野手は複数ポジション守れる選手が主体となった。平均年齢は25歳(投手は23.4歳、野手が26.8歳)で、プレミア12の27.14歳(投手27.3歳、野手27歳)に比べ、特に投手陣の若さが際立っている。

 なお、CPBL球団所属の選手は22人、MLB傘下及びNPB球団所属選手があわせて6人となっている。CPBL勢からは、コンディションの問題で、プレミア12に出場できなかった主力選手が多数選出された。
 
 レッドソックス時代の前回2023年WBCの第1ラウンドA組では、4試合で16打数7安打、2本塁打と大爆発、同組のMVPと大会ベストナインに選ばれた「台湾最強打者」張育成(富邦ガーディアンズ)、そして昨年8月末、強烈なゴロを顔面に受け、残りシーズン全休となった「得点圏の鬼」呉念庭(台鋼ホークス)は、いずれもロッテ・ジャイアンツとの交流戦で力強い打撃をみせ、順当に選出された。呉念庭の選球眼、粘りは、球数制限のあるWBCではより生きてくるだろう。若い選手の多い今大会の代表チームでは、31歳8カ月にして「最年長」となった呉念庭。ダグアウトでは高校(岡山県共生)の後輩、陳傑憲と共にムードを盛り上げていってくれるはずだ。

 また、CPBLでは期待通りのパフォーマンスを発揮できていないが、元MLBで国際大会経験豊かな林子偉(楽天モンキーズ)の攻守での貢献にも期待したい。このほか、ロッテ・ジャイアンツとの練習試合では2試合共に一番を任せられた22歳の外野手、宋晟睿(中信兄弟)、第2戦で勝ち越し満塁本塁打を放った20歳の林佳緯(統一)、昨季の新人王、21歳の曽子祐(台鋼ホークス)ら新世代野手の活躍も楽しみだ。

 投手では、アメリカ・データサイト「FanGraphs」の国際プロスペクトランキング入りを果たしたCPBLを代表する2人の投手がいずれも選出。直球、変化球と共に高い質を誇り、その評価は古林睿煬(北海道日本ハムファイターズ)に勝るとも劣らない同ランキング21位の右腕、徐若熙(味全ドラゴンズ)は先発候補の1人だ。また、剛腕セットアッパー、同23位の曽峻岳(富邦)は仕上がりがよく、ブルペンの軸となるだろう。

また、元阪神で、中信兄弟の平野恵一監督が優勝のキーパーソンと名指しした呂彦青は貴重な左腕、「強心臓」は頼もしい存在になってくれそうだ。この他、「支援メンバー」としてロッテ・ジャイアンツ戦で好投し、唯一、合宿メンバー外からサプライズ選出された陳宇宏(台鋼)はサブマリン。アマ時代も国際大会に強く、「第二先発」としての起用も面白そうだ。

 「海外組」の投手では、NPBからは、北海道日本ハムファイターズの育成選手、20歳の孫易磊と、東京ヤクルトスワローズの育成選手で日台ダブルの19歳、翔聖こと徐翔聖が選ばれた。孫易磊は17日の味全との練習試合で、最速152キロをマークするなど三者凡退、翔聖も13日のロッテ・ジャイアンツとの練習試合では、中軸打者を三者凡退に抑えた。「剛」の孫易磊、「柔」の翔聖、今大会は今季に向け、自信につながる投球をみせてもらいたい。

 ちなみに、2月3日にCPBLが発表した合宿メンバー36人リスト、並びに翌4日にWBC公式が発表したロースター(台湾代表は27人)には、古林睿煬の名前があったが、今回、選出は見送られた。日台メディアの報道によると、春季キャンプ入り直前に右脇腹を軽く痛めたものの、16日には初のブルペン入りを果たしており、あくまで大事をとった形といえそうだ。

 また、「MLBマイナー」組では、アスレチックスでスプリング・トレーニング(以下、ST)に招待されている荘陳仲敖(2A)のほか、陳柏毓(パイレーツ2A)、沙子宸(アスレチックス1A)、そして昨年6月、アスレチックスと台湾投手史上5位の135万ドルで契約した19歳の林維恩が選出された。このうち荘陳仲敖、陳柏毓、沙子宸の3人は先発候補と目されている。

 昨季、台湾プロ野球は、台北ドームの運用、第6の球団、台鋼の一軍参入もあり、観客動員数は過去最多をマークしたが、プレミア12優勝以降、野球熱はさらに高まっている。今回のWBC予選も2月21日から23日までの3日間の試合は、車いす席以外は全席売り切れとなっているほか、2月12日、13日に開催された韓国プロ野球、ロッテ・ジャイアンツとの練習試合は、平日の水曜、木曜であったにも関わらず、両日2万人を越える観客を集めた。
 
 4チーム中、特に野球が「国技」のニカラグア、中南米各国出身の選手が集まる欧州王者のスペインとの実力は均衡しており、MLB傘下のチームには属していない実力者も多い。奇しくも3チームの主戦投手はいずれもCPBLの経験者で、なかでもスペイン代表のエリアン・レイバは、2023年のWBCではキューバ代表でプレー、台湾を「天国から地獄」へと突き落とした試合の先発投手だ。

 合宿初日の訓話で、「プレミア12の成功はひとまず忘れよう」と訴えたCPBLの蔡コミッショナーのみならず、多くの台湾ファンの今大会に対する見方は「油断大敵」だ。昨年のプレミア12で、台湾自身がファンもびっくりの快進撃で優勝しただけに、そして、この予選は「負けられない戦い」だけにプレッシャーも大きい。できれば、2位と3位による最終日の決定戦にまわらず、3連勝、1位で、すっきりと本大会出場を決めたい。

 予選1組の勝ち上がりチームが、来年3月の本戦でどのグループに入るかは不明だが、台湾が突破となれば、東京ドームで行われるC組が最有力だろう。来年、東京での日本との「再戦」実現のため、日本からも台湾へエールを送っていただきたい。 

文:駒田英

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