第2弾はビリヤード 球界初の試み、北海道日本ハム若手アスリート支援の誕生“秘話”

Full-Count 石川加奈子

2018.11.14(水) 10:19

「FIGHTERS CROWDFUNDING〜Be Ambitious〜」発案者の笹村さん(左)と石川さん※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)
「FIGHTERS CROWDFUNDING〜Be Ambitious〜」発案者の笹村さん(左)と石川さん※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)

クラウドファンディングで国内現役最年少ビリヤードプロ・平口結貴さんをサポート

 北海道日本ハムが北海道の若いアスリートを支援する「FIGHTERS CROWDFUNDING~Be Ambitious~」は、今夏にスタートした次世代スポーツ人材育成型クラウドファンディング。今年7月に第1号アスリートとして女子スキージャンプの渡邉陽さん(21)が選ばれ、今月7日には第2号アスリートとして国内現役最年少ビリヤードプロの平口結貴さん(21)のサポートを発表した。

 プロ野球チームがほかのスポーツを応援することは、地域貢献の新しい形として注目されている。その影響力の大きさによって、平口さんへの支援金は開始からわずか5日で100万円を突破した。

 このクラウドファンディングを利用した球界初の試みは、どのようにして誕生したのか。発案者である球団広報部SCグループの笹村寛之さん(40)とコミュニティリレーション部コミュニティグループの石川拓道さん(35)に話を聞いた。

――野球以外のスポーツにスポットを当てたクラウドファンディングが生まれたきっかけは?

 石川さん「プロ野球球団ではありますが、スポーツコミュニティを企業理念に掲げている中で、ほかのアスリートを支援できる形ができないかと以前から考えていました。直接出資して支援するのは難しく、思いついたのがクラウドファンディング。今年『北海道シリーズ2018 HOKKAIDO be AMBITIOUS』というシリーズの担当になり、そこで実現したいと思いました。SCグループでスポーツコミュニティを担当していた笹村に相談したところ、ちょうど同じことを考えていました」

 笹村さん「スポーツコミュニティという理念の中で、去年『ゆきのね奨楽金』というウインタースポーツの助成を始めました。ただ、これはウインタースポーツに限定したもの。クラウドファンディングというプラットフォームが世の中に生まれ、いろんな人が集まって支援する仕組みを使えば、今回の平口さんのようなビリヤードの選手でも、今流行のeスポーツでもできますし、新しい形として成立するかなと思いました」

――ファイターズが持つ影響力を生かせば、大きな広がりが生まれるのでは?

 笹村さん「僕たちが発信することによって、平口さんや渡辺さんが注目してもらえます。たとえ、そのプロジェクトが目標額に達しなくても、いろんな人に知ってもらえる機会にはなるのかなと思います」

 石川さん「続けていくことで認知され、『自分もやりたい』というアスリートが出てきてくれることを期待しています」

多くの競技同士がつながるスポーツコミュニティー作りで地域貢献

――ジャンプ、ビリヤードに続き、今後も新たなジャンルに目を向けていく?

 石川さん「いろいろなスポーツのつながりができることが、スポーツコミュニティだと思っています。今、球団のアカデミーグループにはベースボールとダンスがありますが、スキーのジャンプだったり、ビリヤードだったり、ほかのスポーツだったり、クラウドファンディングで支援したアスリートと球団が将来的にまた何か一緒にできればいいなという思いもあります」

 笹村さん「こうやって渡辺さんと平口さんが知り合い、仲良くなって、競技を越えたつながりができる。これもスポーツコミュニティですし、そういう輪がどんどん広がっていくといいなと思います」

――野球以外のことをやることに対して否定的な声はなかった?

 笹村さん「野球の競技人口が減っているという問題がある中で、そこを見過ごしていけないというのは僕たちも会社のみんなも思っていることではあります」

石川さん「野球に特化するならベースボールコミュニティ。『ベースボール』ではなくて『スポーツ』と理念で掲げていることが大きいのではないかと思います。もちろん、野球をおろそかにするわけにはいかないです」

――2人ともアメリカの大学院でスポーツ経営学を学び、最初は通訳として球団に入った。これまでの経験が生きている?

 石川さん「アメリカではスポーツを見る文化が定着していると感じました。ここだという場面になると自発的にスタンディングオベーションが起こってみんなが一体になって応援するというのは凄い。そういう文化が日本、北海道でもできればいいなと思っていました。それを実現させる一歩がファイターズでこういった活動をしていくことなのではないかと思っています」

 笹村さん「アメリカにいた時にはスポーツが生活の近くにありました。メジャーなNFLやMLBだけじゃなくて、いろんなスポーツが身近にあるのを肌で感じてきた部分があります。海外に出て暮らすと、自分の国とか自分の故郷に対する思いが強くなるので、帰ってきて北海道でスポーツに貢献できることにやりがいを感じています」

 部署の垣根を越えて誕生した次世代スポーツ人材育成型クラウドファンディング。先日発表された新球場建設と同様、「スポーツコミュニティ」という理念の下で球団内には斬新なアイデアが次々と生まれ、新しい挑戦を行っている。

☆「FIGHTERS CROWDFUNDING~Be Ambitious~」 今年7月に第1号アスリートとして女子スキージャンプの渡邉陽さん(21)が選ばれ、目標額の112万円を超える121万8000円が集まった。現在、第2号アスリートとなる国内現役最年少ビリヤードプロの平口結貴さん(21)の支援金をクラウドファンディングサイト「FAAVO」で募集している。140万円を目標に今月5日からスタートし、支援金は13日現在で122万7000円を超えている。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

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