過去10年、“外れ1位”で計55人が指名されている
10月25日、都内のホテルで、運命のドラフト会議が行われる。今年も、根尾昂や小園海斗などに複数球団が入札し、重複指名となることが確実な情勢となっている。そうなれば、交渉権の行方はクジ引きに委ねられ、クジに外れた球団は「外れ1位」を指名することになる。
各球団の編成担当がドラフト会議前のシミュレーションで一番頭を悩ませるのは、この「外れ1位」の想定だろう。意中の選手を外した場合、どの選手を指名するか。単純に2位以下で指名予定だった選手を繰り上げるのでは成果としては物足りない。他に抽選を外した選手は一体、どの選手に流れるか。再び競合を覚悟するのか、それとも他球団を出し抜いて指名できるか。スカウトたちの情報戦がモノを言う。その時になってみないと、決まらないケースもあるだろう。
過去10年で120人の選手がドラフト1位で指名されたが、このうち実に55人が「外れ1位」。ただ、その顔ぶれを見ると「本命は外したが、収穫はあった」といえるケースも多い。12球団別に、過去10年の外れ1位を見ていこう。まずは、パ・リーグから。
〇埼玉西武(2人)
2017年 齊藤大将 ×田嶋大樹
2012年 増田達至 ×東浜巨
埼玉西武はくじ運に恵まれ、2009年、2010年と6球団が競合した菊池雄星、大石達也を引き当てた。2012年は東浜を外したが、“外れ1位”で指名した増田はクローザーに成長している。
〇福岡ソフトバンク(4人)
2017年 吉住晴斗 ×清宮幸太郎 ×安田尚憲 ×馬場皐輔
2013年 加治屋蓮 ×松井裕樹 ×杉浦稔大
2010年 山下斐紹 ×斎藤佑樹
2008年 巽真悟 ×大田泰示
2013年に“外れ外れ1位”で指名された加治屋は今季セットアッパーとして急成長し、チームに不可欠な存在に。2017年はまさかの抽選3連敗で“外れ外れ外れ1位”で吉住を獲得した。
〇北海道日本ハム(4人)
2016年 堀瑞輝 ×田中正義 ×佐々木千隼
2015年 上原健太 ×高橋純平 ×小笠原慎之介
2013年 渡邉諒 ×松井裕樹 ×柿田裕太 ×岩貞祐太
2009年 中村勝 ×菊池雄星
北海道日本ハムは抽選に強く、ここ10年、清宮、有原、菅野(入団せず)、斎藤と重複指名で4人を引き当てている。その年最もいい選手を指名するという方針のため、重複指名は覚悟の上。そのため、2013年の渡辺は“外れ外れ外れ1位”となった。
〇オリックス(3人)
2012年 松葉貴大 ×藤浪晋太郎 ×松永昂大
2011年 安達了一 ×高橋周平
2010年 後藤駿太 ×大石達也 ×伊志嶺翔大 ×山田哲人
オリックスは2017年に田嶋を引き当てているものの、2010年には大石、伊志嶺、山田と立て続けに抽選に外れ、後藤駿太は“外れ外れ外れ1位”での指名となった。とはいえ、松葉、足立、後藤といずれも1軍の戦力となっている。
〇千葉ロッテ(4人)
2017年 安田尚憲 ×清宮幸太郎
2016年 佐々木千隼 ×田中正義
2012年 松永昂大 ×藤浪晋太郎
2010年 伊志嶺翔大 ×斎藤佑樹
2012年に藤浪を外した千葉ロッテだが、その“外れ1位”で指名した松永が、いまやチームに不可欠なリリーバーに。2017年、清宮の“外れ1位”として同じ高校生スラッガーの安田を指名。今後の成長に期待だ。
〇東北楽天(6人)
2017年 近藤弘樹 ×清宮幸太郎 ×村上宗隆
2015年 オコエ瑠偉 ×平沢大河
2011年 武藤好貴 ×藤岡貴裕
2010年 塩見貴洋 ×大石達也
2009年 戸村健次 ×菊池雄星
2008年 藤原紘通 ×野本圭
東北楽天は過去10年で6度抽選を外して“外れ1位”を指名している。戸村、塩見とまずまず1軍の戦力となっているものの、やはり1位としては物足りないか。球団創設以来、初めて1位で野手を指名した2015年は平沢を外し、オコエ瑠偉が“外れ1位”だった。
東京ヤクルトは過去10年のうち8年で抽選を外している
〇広島(4人)
2016年 加藤拓也 ×田中正義 ×佐々木千隼
2014年 野間峻祥 ×有原航平
2012年 高橋大樹 ×森雄大 ×増田達至
2010年 福井優也 ×大石達也
広島は2014年、地元出身の有原を抽選で外し、野間を指名。その野間は今季、準レギュラークラスとして活躍し、チームの3連覇に貢献した。2010年は早稲田の大石を外して、チームメートの福井を指名した。
〇東京ヤクルト(8人)
2017年 村上宗隆 ×清宮幸太郎
2015年 原樹理 ×高山俊
2014年 竹下真吾 ×安楽智大
2013年 杉浦稔大 ×大瀬良大地
2012年 石山泰稚 ×藤浪晋太郎
2011年 川上竜平 ×高橋周平
2010年 山田哲人 ×斎藤佑樹 ×塩見貴洋
2009年 中澤雅人 ×菊池雄星
12球団の中で特徴的なのが、この東京ヤクルトか。ここ10年で抽選は全敗。12球団最多となる8度も外している東京ヤクルトだが、2010年には斎藤、塩見の“外れ外れ1位”で山田哲人を指名。2012年には藤波晋太郎の“外れ1位”で石山泰稚を獲得。2015年の原樹理もまずまず活躍と、抽選で外しても、大きな収穫を得ている。
〇巨人(4人)
2017年 鍬原拓也 ×清宮幸太郎 ×村上宗隆
2016年 吉川尚輝 ×田中正義 ×佐々木千隼
2013年 小林誠司 ×石川歩
2011年 松本竜也 ×菅野智之
2011年、相思相愛だった菅野智之を外し、松本を獲得。しかし松本は1軍出場のないまま野球賭博で退団した。2013年の小林、2016年の吉川尚は1軍の主力メンバーとなっている。
〇横浜・横浜DeNA(6人)
2016年 浜口遥大 ×柳裕也 ×佐々木千隼
2014年 山崎康晃 ×有原航平
2013年 柿田裕太 ×松井裕樹
2012年 白崎浩之 ×東浜巨
2011年 北方悠誠 ×藤岡貴裕 ×松本竜也
2010年 須田幸太 ×大石達也
今や横浜DeNA不動のクローザーとなっている山崎康晃も、2014年の有原航平の“外れ1位”。ルーキーイヤーで10勝をマークした浜口は柳、佐々木の“外れ外れ1位”だった。
〇中日(4人)
2017年 鈴木博志 ×中村奨成
2015年 小笠原慎之介 ×高橋純平
2013年 鈴木翔太 ×松井裕樹
2009年 岡田俊哉 ×菊池雄星
中日は過去10年で4度、抽選を外して“外れ1位”で4人の投手が入団している。2009年の岡田を筆頭に、鈴木翔、小笠原、鈴木博と、4人ともに1軍の戦力となっており、決して悪い結果にはなっていない。
〇阪神(6人)
2017年 馬場皐輔 ×清宮幸太郎 ×安田尚憲
2014年 横山雄哉 ×有原航平 ×山崎康晃
2013年 岩貞祐太 ×大瀬良大地 ×柿田裕太
2010年 榎田大樹 ×大石達也
2009年 二神一人 ×菊池雄星
2008年 蕭一傑 ×松本啓二朗 ×藤原紘通
2008年、2013年、2014年、2017年と4度も2度抽選に外れている阪神。くじ運に恵まれていないだけでなく“外れ1位”指名でも苦戦している。10年で6人の“外れ1位”で1軍で戦力となっているのは岩貞のみ。2010年の榎田はトレードで移籍した埼玉西武で大ブレークした。
こうしてみると、本命の1位指名を外したとしても、“外れ1位”で活躍している選手は数多くいる。むしろ、1位で指名した選手よりも、結果的には“外れ1位”のほうが活躍しているケースだってある。まさに、そうなれば「残り物に福」。今年のドラフトには一体どんな「外れ1位」のドラマが待っているだろうか。
(広尾晃 / Koh Hiroo)
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