福岡ソフトバンクに所属する2名の打者が、OPSランキングの上位に
福岡ソフトバンクの栗原陵矢選手が本塁打と打点の2部門でパ・リーグのトップに立ち、交流戦終了時点でOPS.918を記録する圧巻の活躍を見せている。そして、同じくホークスに所属する近藤健介選手が、栗原選手を上回るOPS.960という数字を残している点も興味深い要素だ。
今回は、近藤選手と栗原選手がこれまで記録してきた各種の指標と、実際のデータに基づく選手としての特徴を紹介。両選手が高い生産性を示している理由について確認するとともに、栗原選手が今シーズンに入ってから示している「変化」についても見ていきたい。(※成績は2026年6月14日終了時点)
長年にわたってハイレベルな水準を維持
近藤選手がこれまでのキャリアで残してきた、年度別の指標は下記の通り。

故障の影響で規定打席に到達できなかったシーズンも存在するものの、2017年から9年連続で打率.298以上を記録するなど、出場した試合では常に安定した打撃を見せ続けている。それに加えて、出塁率に関しても2017年から9年連続で.410以上と優れた水準を維持し、4度にわたって最高出塁率のタイトルを手にしている点も注目すべきポイントだ。
さらに、四球を三振で割って求める、打者の選球眼を示す指標の一つである「BB/K」は、キャリア通算の数字が1.062と非常にハイレベルな数字を残している。今季のBB/K.950という数字も現時点でリーグトップであり、ボールの見極めに関してもリーグトップクラスの能力を持つことが示されている。
打率と出塁率の差を示す、同じく選球眼を示す指標である「IsoD」に関しても、キャリア平均の数字が.111と、一般的に非常に優秀とされる.100という水準を大きく上回っている。2017年から9年連続でIsoDが.100を上回っている事実が示す通り、卓越した選球眼を長年にわたって維持している点にも近藤選手の非凡さが現れていると言えよう。
移籍後は長打力にも磨きがかかり、さらに生産性を高めている
ただし、2020年以降に長打率が6年続けてキャリア平均を上回るなど、近年に入ってから成績の傾向にも変化が見られる。26本塁打、87打点を記録して本塁打と打点の2冠王に輝いた2023年を筆頭に、移籍後は強打者としての側面が強まりつつある点も特徴的だ。
長打率から単打の影響を省いた、いわば“真の長打率”とも形容される「ISO」に関しても、移籍初年度の2023年から2年連続で.200を上回る数字を記録。2025年も.191と一定以上の数字を残し、今季は.259とキャリアベストの水準に達するなど、さらに長打力に磨きをかけつつある点も頼もしい限りだ。
ホームランを1本放つまでに必要な打数を示す「AB/HR」はキャリア平均で39.22と、約40打席に1本のペースとなっている。しかし、2023年以降は3年続けて26以下の数字を記録し、本塁打王に輝いた2023年には18.92とキャリア最高の数字を残した。本塁打を放つペースが大幅に向上している点が、近藤選手の打者としての価値をさらに高めている。
その結果として、2023年の移籍以降は3年連続でOPSが.900以上に到達し、2023年と2024年には2年続けてリーグトップのOPSを記録。また、2025年の近藤選手は故障の影響で規定打席に到達できなかったが、同年には規定打席到達者の中で最も高いOPS.861を記録したレイエス選手を上回る、OPS.903という数字を残していた点も注目に値しよう。
昨季に比べて積極的な打撃スタイルに回帰
続いて、栗原選手がこれまで記録してきた年度別の指標を見ていきたい。

キャリア通算の打率.262に対して出塁率は.328、IsoDに関しては.067と、概ね基準値に近い値を残している。また、BB/Kもキャリア平均の数字が.472、BB/Kは規定打席到達者26名のうち19位と、選球眼に関する指標は際立って高いと言える水準には達していない。
2025年にはIsoD.090、BB/K.597と選球眼に大きな改善の兆しが見られたものの、2026年はIsoD.061、BB/K.386といずれもキャリア平均を下回る数字となっている。じっくりとボールを見極めるアプローチを取った昨季の経験を経て、今季は積極的な打撃スタイルに回帰して結果を残しているという点は興味深いところだ。
その一方で、今季のAB/HRはリーグトップの12.95と大幅に向上し、キャリア平均の倍近いペースで本塁打を量産している。今季はISOに関してもリーグトップの.305と驚異的な水準に到達しており、劇的な長打力の向上は各種の指標にも示されている。
今季は長打率も.581とキャリア平均を大きく上回り、より多くの塁打を生み出せる打者となっている。その結果として、今季のOPSはキャリア最高の.918と非常に優秀な数字を記録。抜群の選球眼がOPSの高さにつながっている近藤選手とは異なり、長打力の劇的な向上によってOPSを飛躍的に伸ばしている点は、まさに好対照といえよう。
キャリアを通じて運に恵まれてこなかったことが示唆されているが……
最後に、本塁打を除くインプレーとなった打球が安打になった割合を示す、「BABIP」という指標に目を向けたい。BABIPは運に左右されやすい側面があると考えられており、一般的な基準値は.300とされている。
近藤選手のBABIPはキャリア平均で.348と非常に高く、打球の強さと左打者という特性を活かして安打の量産につなげてきたことが示されている。その一方で、栗原選手の通算BABIPは.288と基準値を下回っており、やや運に恵まれてこなかった点が示唆されている。
ただし、好調な打撃を見せている今季もBABIPは.283と基準値を下回る数字であり、キャリア平均よりも低くなっている点は特筆に値する。本塁打となった打球はBABIPの計算対象外となる点も含めて、今季の栗原選手の活躍は運に恵まれたものではなく、実力の成長によるものであるという考え方もできそうだ。
リーグ屈指の強打者2名が見せる活躍は、チームの浮沈を握る要素にもなり得る
それぞれリーグ1位と2位のOPSを記録している近藤選手と栗原選手のコンビは、現在の福岡ソフトバンク打線にとって大きなストロングポイントとなっている。卓越した選球眼を武器とする近藤選手と、抜群の長打力を開花させつつある栗原選手は打者としてのタイプが大きく異なるという点も、打線全体のバランスを考えれば大きな要素と言えよう。
栗原選手は今後も本塁打と打点をハイペースで量産し、自身初タイトルを手にすることができるか。そして、近藤選手も自身5度目の最高出塁率や同2度目の打点王といった、主要タイトルを射程圏内に捉えている。リーグトップクラスの生産性を誇る2名の主力打者の今後の活躍は、リーグ3連覇に挑む福岡ソフトバンクの浮沈を握る要素にもなり得るだろう。
文・望月遼太
