35歳からの転身で、「好き」を仕事に。埼玉西武ライオンズ ボールパーク推進部 丸山雅之さん【パ・リーグお仕事名鑑 Vol.7】

パ・リーグ インサイト 岡田真理

グラウンドの上で輝く選手やチームを支えているのはどんな人たちなのか。
本連載「パーソル パ・リーグTVお仕事名鑑」でパ・リーグに関わるお仕事をされている方、そしてその仕事の魅力を紹介していきます。

広告業界から転身し、野球への恩返しを

2015年4月に西武ライオンズに入社し、現在はボールパーク推進部でアシスタントマネージャーを務める丸山雅之さん。球団に入る前は広告業界に身を置き、セールスプロモーションのプランニングからディレクション、プロデュースまで、マーケティング全般に携わっていた。

広告代理店としてメジャーリーガーによる野球教室やサッカーワールドカップ関連のプロモーションにも携わったことがあり、スポーツビジネスとまったく無縁ではなかったというが、以前は自分がスポーツコンテンツに直に関わるというイメージはなかったそうだ。

「高校まで野球をやっていたので何か野球に還元したいという思いはあったのですが、特に私が20代の頃は『球団で働く』という選択肢を持つことが、一般的にはあまり身近なことではありませんでした。

そんな中、ライオンズの関係者とたまたまお会いする機会があり、そのご縁がきっかけで転職することになったんです」

12年も関わり続けた広告業界から、35歳での転身。前職の経験はそれなりに活かせるだろうと自負があった一方で、「好き」を仕事にすることには不安もあったと丸山さんは言う。

「ある程度社会経験を積んで、『好き』だけではやっていけないこともわかっていましたので、仕事にしてしまったら、好きだった野球やライオンズを嫌いになってしまうんじゃないかという不安もありました。

ただ、やらないで後悔するよりやって後悔するほうがいいと思い、最終的にはチャレンジすることに決めました」

入社当初は営業部に配属され、主に法人向けの各種スポンサーメニュー・シーズンシートの企画制作や、ファンサービスを手掛ける事業部との連携などを行った。入社1年目には広告業界との違いを目の当たりにし、戸惑うことも多かったという。

「以前の会社はある程度ベンチャー系で、スピード感がありました。スポーツ業界は、ライオンズの場合は特にですけど、それなりに歴史が長い。そのため、業界のルールや規定など様々な制約があります。

それを調整しながらやっていくと、全力で走ってもなかなか進めていないのでは?という感覚がありました。転職したての頃は、そのスピード感と調整業務のバランスをとることに苦労しました」

歴史を重んじながらも、新しい時代を作り出す

ライオンズが埼玉に拠点を移してから今年で40周年となり、その周年記念事業の一つとして「メットライフドームエリア改修計画」が昨年11月に発表された。

この計画では、本拠地のボールパーク化と、練習施設整備による選手育成の強化を推進しているが、今年2月にその専任部署である「ボールパーク推進部」が新設され、丸山さんは同部署に配属された。

「改修事業自体は何年も前から構想として存在していて、私自身も新部署ができる1年くらい前から参画しています。私は営業部の仕事を兼務していました。工事が始まり、いよいよ改修事業が本格化してきたということで、今年の2月から専任となりました」

現在、建設会社とのやりとりや、業務が改修工事の影響を受ける社内各部署とのコミュニケーションが主な仕事だ。どのスタッフも、球団の一大事業に参画することに大きなやりがいを感じているという。

「ライオンズとしてこれだけの改修事業をおこなうのはこの40年で初めてのことですし、おそらくこの規模の改修は今後しばらくないはずなので、そのような事業に関われることは非常に有難いですね。一方で、それだけの投資をするからにはそれなりのリターンも求められますから、当然ながら責任やプレッシャーも感じています。

また、営業部時代は球団のマネタイズを中心に考えていく仕事の仕方でしたが、今はファン・スポンサー・地域・グループ会社など様々なステークホルダーのことをより一層意識する必要もあるので、また違った大変さもあります」

球団事務所が入っているオフィスビルも拡張が予定されている。数年後には、スタッフが働く環境も一変することになり、モチベーションの向上にもつなげられるのではと期待しているそうだ。

「球団スタッフはみんな日々の仕事に追われているので、それぞれ『球団をもっとよくしていきたい』という想いは持ちつつも、なかなかお互いのコミュニケーションが足りていない現状もあったりすると思います。

そんな中で、改修事業が未来に向かって想いを共有するきっかけになれる気もしています。まだ実感のないスタッフも、工事が進んで改修が現実のものとして見えてくると、だんだん自分事として捉えてくれるようになるんじゃないかなと」

自分自身のやりがい、そしてスタッフのモチベーション向上はもちろんのこと、やはりその先に思い描くのはファンの喜ぶ顔だ。熱狂的なことで知られるライオンズファンも、生まれ変わったメットライフドームを心待ちにしているに違いない。

「ファンの熱意も肌で感じながら日々仕事をしています。皆様の期待を裏切らないようなものを生み出さなければいけないと思っていますし、新たなファンも獲得していける魅力的なハードを作っていかなければなりません。

また、ライオンズは歴史ある球団なので、それに敬意を払いつつ継承していけたらという思いはあるのですが、個人的には私たちは、これまでの歴史や伝統を次のフェーズに新しいカタチでどのようにつなげていくかを考えるべき。これから球団の新しい時代を作っていかないといけないですからね」

当初は「好き」を仕事にすることに不安を感じていた丸山さんも、4年目を迎えた今となっては、野球やライオンズを嫌いになる心配はもはや微塵もなさそうだ。

「思い入れのあることを仕事にできている喜びは確かにありますね。ただ、野球に限らず、スポーツビジネス事業は難しいという印象も一般的にはまだあると思うので、そこを突破できるように貢献していけたらいいなと思います。

私自身は、2021年春の改修完了を見届けるまで、これからの約2年半は怒涛の日々です。今は終わりが見えない中で悪戦苦闘していますが、終わってみればきっとあっという間なんだろうなと。その瞬間が今から楽しみでなりません」

◇お仕事名鑑はパーソルの特設サイトからご覧いただけます。
https://www.persol-group.co.jp/special/pacificleague/index.html

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