高卒1年目でイースタン2位の打率をマーク
2023年ドラフトで5位指名を受け、明徳義塾高校から千葉ロッテマリーンズに入団した寺地隆成選手。プロ1年目のシーズンとなった2024年はイースタン・リーグで規定打席に到達し、リーグ2位の打率.290を記録。高卒ルーキーとしては破格の好成績を残した。今回は、そんな寺地選手のバッティングを深掘りしていきたい。
高卒新人離れしたコンタクト能力と選球眼
初めに、寺地選手のバッティングの優れた点を紹介したい。まず表に示したのは球種別のコンタクト率だ。スイングを試みたうちバットに当たった割合を示すコンタクト率は、ストレートと変化球のどちらにおいてもリーグ平均を上回る数字を記録。変化球のコンタクト率は特に優れており、2024年のイースタン・リーグにおける高卒新人の平均と比べて14.6ポイントも高くなっている。大学や社会人、独立リーグ出身の選手ですらプロの壁にぶつかるルーキーが多いなか、寺地選手の対応力の高さを示すデータといえるだろう。
次にゾーン別のスイング率を見ると、ボールゾーンのスイング率は25.5%を記録。リーグ内の高卒新人の平均を9.5ポイントも下回っており、リーグ全体で見ても優秀な数値となっている。その一方でストライクゾーンの投球に対しては決して消極的になっておらず、打ちにいくべきボールをしっかりと見極めてスイングを仕掛けることができていたといえる。この優れた選球眼は四球の多さにつながっており、1年目に記録した41四球はリーグ8位の好成績だ。
以上のように、寺地選手はコンタクト能力と選球眼の2点において、すでに二軍平均以上の力を持っている。高卒1年目で打率ランキングの上位に食い込んだのもうなずけるだろう。
打球の質の向上が今後の課題か
ここからはボールをコンタクトした後に視点を移し、打球の質について見ていこう。高校時代から広角に打球を飛ばすバッティングが評価されていたが、プロの試合でも打球方向の偏りは少なく、センターからレフトへの打球がやや多めとなっている。少し気になるのは、安打に限ると左打者にとって逆方向にあたる、レフト方向の割合が48.5%と大きくなる点だ。放った2本のホームランもレフト方向への当たりであり、逆方向に長打を飛ばすだけのポテンシャルを持っているともいえるが、一方で引っ張り方向に強い打球を飛ばすことができていないとも考えられる。
さらに、打球性質としては6割以上がゴロ打球で、長打につながりやすいフライ打球の割合は同期の高卒ルーキーと比べても10ポイント以上低い数字となっている。ヒットを打つ能力に優れる同選手が、今後その中身を単打から長打に変えていくためには、引っ張り方向への打球や角度のついた打球を飛ばす力を身につけることが大事になってくるだろう。
寺地選手の目標となり得る2人の侍戦士
最後に、プロ1年目に残した二軍成績を2人の一流選手と比較する形で表にしてみた。広島東洋カープの坂倉将吾選手と福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手は、いずれも侍ジャパンでも活躍している日本球界を代表する選手だ。3選手には高卒選手、左打者、入団時のポジションが捕手である、ドラフト順位が上位指名ではなかったなど共通点が多い。年度の違いなどから単純な比較はできないかもしれないが、3割に迫る打率や三振、四球の割合など、彼らはプロ1年目のシーズンで非常に似通った二軍成績を残している。両先輩の2年目の成績を見ると坂倉選手が打率.329、近藤選手が打率.355とさらに数字を伸ばしており、以降の活躍ぶりは皆さんがご存じの通り。寺地選手も2年目で順調に成績を伸ばすことができれば、2人のような一流の打者に成長できるという期待が膨らむ。
シーズンの終盤には一軍の舞台でプロ初安打となる二塁打を放つなど、プロ野球選手として素晴らしいスタートを切った寺地選手。将来は坂倉選手のようなチームを攻守でけん引する「打てる捕手」となるか。はたまた近藤選手のように打力を生かして他のポジションへ移り、MVP級の選手へと進化を遂げるのか。無限の可能性を秘める彼の未来を想像しつつ、まずは2025年の活躍に注目したい。
※文章、表中の数字はすべて2024年シーズン終了時点
文・データスタジアム
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