前人未到の大記録を達成した2024年
北海道日本ハムのチーム最年長・宮西尚生投手。2022年に自身初めて登板数が50試合を下回り、23年は後半戦を二軍で過ごすなど不完全燃焼のシーズンが続いていたが、今季は6月の一軍昇格からシーズン終了までブルペンを支え、防御率2.10の好成績をマーク。8月4日にはNPB史上初となる通算400ホールドを達成した。
プロ17年目で新たな球種を導入
宮西投手の特徴といえば、直球と大きく曲がるスライダーのコンビネーションだ。しかし今季はキャンプで金子千尋・二軍投手コーチの助言を受け、チェンジアップを本格的に使い始めた。昨季も少数ながら投げていた球種だが、今季は対右打者の投球の半分以上、全投球の33.3%を占めた。宮西投手のキャリアの中で、ストレートとスライダー以外の球種の割合が20%を超えたのは今季が初めてだった。
低めに集めたチェンジアップが威力を発揮
左投手のチェンジアップは右打者の外角方向に逃げながら落ちるボールで、宮西投手が長年使ってきたスライダーとはタイプが全く異なる。ベテランにとっては大きな挑戦だったはずだが、今季は二軍で開幕を迎えたこともあり、実戦のマウンドでじっくりと精度を高めることができたようだ。一軍での対右打者のデータを見ると、低めに投じた割合はリーグ平均を上回る70%台を記録。このゾーンでは18打数1安打と打者を圧倒し、スライダーに代わる新たな武器となった。
ストレートはインコース中心の配球に
チェンジアップを使い始めたことで、ストレートの使い方にも変化が見られた。右打者に対するコース別の投球割合を見ると、シーズンごとに変動はあるものの、昨季まではアウトコースが最多となっていた。しかし今季はインコースが42.6%で最多となり、いわゆるクロスファイアーの投球が増加した。ストレートで打者に内角を意識させることで、外に逃げるチェンジアップの効果を高める目的があったのだろう。
対右打者の安定感を取り戻した
昨季は右打者に対して被打率.378と苦戦していたが、今季はチェンジアップの効果もあり、同.143とリーグトップの成績まで改善。1割台をマークしたのは、登板50試合で防御率2.05の活躍を見せた2020年以来4シーズンぶりで、不振からの復活を象徴する数字となった。
一時は現役引退を考えるほどに追い込まれながらも、新球習得やトレーニング法の変更など、新たな挑戦によって活路を見いだした宮西投手。チームを9年ぶりのリーグ優勝と日本一に導くべく、不屈の左腕は来季もマウンドに立つ。
※文章、表中の数字はすべて2024年シーズン終了時点
文・データスタジアム
関連リンク
・目指せコンプリート! パ・リーグ6球団マスコットのカプセルトイが登場
・投球の95%がストレート&フォーク。セットアッパー・藤平尚真の強みは?
・和田康士朗がマリーンズ算数ドリル贈呈式に参加。自身の小学生時代は……?
・鈴木博志が登録名を「博志」に変更。パ・リーグにおける登録名変更の成功例を振り返る
・水谷瞬、長谷川威展が躍進! 23年度現役ドラフトでパ・リーグに移籍した選手の今季
記事提供: