球団創設20周年を迎え、今江敏晃新監督のもと始動した東北楽天は、67勝72敗、勝率.482でパーソル パ・リーグ4位で2024シーズンを終えた。
開幕後は4月下旬までカード負け越しが続き、5月には一時借金を「9」抱えたが、「日本生命セ・パ交流戦」を13勝5敗、勝率.722で終え、勢いをつける。以降は、シーズン終盤までパーソル CS パ進出をかけて3位争いを演じたが、10月1日に3位・千葉ロッテとの直接対決に敗れて、3年連続4位が確定。ここ数年は、ポストシーズン進出まであと一歩と、歯がゆい結果が続いている一方で、今季は球団史上初の「日本生命セ・パ交流戦」優勝を果たすなど、実りも多くあった。
今回は、東北楽天の投手陣の2024シーズンを振り返っていく。
チーム防御率は3年連続リーグワースト
チーム防御率3.73は3年連続のリーグワーストを記録。失点、自責点もリーグ最多と、昨季に引き続き課題の残る成績となった。それでも、早川隆久投手、藤井聖投手が球団左腕初の2桁勝利を達成すると、今季からクローザーに転向した則本昂大投手は最多セーブをマーク。藤平尚真投手、鈴木翔天投手も中継ぎで大きく飛躍するなど、収穫も多い1年となった。
早川隆久が球団左腕初の2桁勝利 自身初の規定投球回に到達
開幕戦(3月29日・埼玉西武戦)は、4年目を迎えた早川隆久投手が先発マウンドに上がった。味方の援護に恵まれず、敗戦投手となったものの、7.2回109球6安打1四球8奪三振1失点とエースらしい粘投を披露。以降は着実に白星を積み重ねると、9月6日千葉ロッテ戦、9回2死から失点し、惜しくも完封勝利を逃したものの、球団左腕では初となる2桁勝利を達成。結果としては自身初の規定投球回に到達し、11勝6敗、防御率2.54とキャリアハイの数字を残した。エースとして着実に力を伸ばし続ける早川投手に来季も期待したい。
2桁勝利達成の藤井聖は交流戦最多勝
藤井聖投手も、早川投手に続いて自身初の2桁勝利を達成した。昨季は先発、リリーフの両起用で存在感を示したが、今季は先発に専念。「日本生命セ・パ交流戦」ではトップタイの3勝をマークするなど、5月から尻上がりに調子を上げ、7月21日のオリックス戦では、7回4失点(自責点2)で自身8連勝を記録した。さらに9月18日の千葉ロッテ戦では、6回1失点と試合をつくり、球団左腕2人目となる10勝に到達。同試合の勝利によって、チームも一時3位に浮上するなど、チームをけん引する奮闘を続けた。
杜の都の新守護神・則本昂大 抑え転向1年目にしてセーブ王に輝く
昨季まで抑えを務めた松井裕樹投手のMLB移籍にともなって、今季から抑えに転向した則本昂大投手。4月2日の北海道日本ハム戦では、2点リードの9回裏に登板すると、わずか4球で試合を締め、プロ初セーブを挙げた。以降は苦しむ場面も見られたが、持ち前の力強い直球を武器とした気迫の投球で54試合に登板し、防御率3.46、32セーブをマーク。クローザー転向1年目にして見事セーブ王に輝いた。
開幕前から目標としていた、松井裕樹投手の抑え1年目の記録「33」セーブにはわずかに届かなかったが、杜の都の守護神として、そして投手キャプテンとして、チームをけん引した。
鈴木翔天、藤平尚真は飛躍の1年に。リリーフとしてフル回転
昨季リーグトップの61試合に登板した鈴木翔天投手は、今季も中継ぎとして躍動。49試合に登板すると、防御率1.66を記録し、ホールド、ホールドポイントともにキャリアハイの数字を残した。
5月1日の福岡ソフトバンク戦では、同点の7回裏、1死1塁の場面でマウンドに上がると、2者連続三振を奪い無失点で切り抜ける。続く8回裏も3者凡退に抑え、チームは9回表に勝ち越しに成功。勝利を呼び込む圧巻の投球で今季初勝利をマークするなど、シーズンを通して盤石のピッチングを披露した。また、8月10日の福岡ソフトバンク戦では1回0封に抑え、連続無失点の球団記録を28試合に伸ばしている。
今季からリリーフに転向した藤平尚真投手は、47試合に登板し、防御率1.75、20ホールドをマーク。5月に左内腹斜筋を損傷し、一時離脱したものの、6月25日に一軍復帰して以降、安定感のある投球を続けると、10月8日・北海道日本ハム戦では、2奪三振を含む3者凡退に抑え、プロ初セーブを記録した。
ともに勝ちパターンの一角を担った両投手は、「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」における日本代表に初選出されている。鈴木翔投手は左ひじ痛で無念の離脱となったが、国際大会での経験を糧とし、来季もブルペンを支える両投手の姿に期待したい。
ドラ1ルーキー・古謝樹は15試合に登板 岸孝之は球団最年長完封記録を更新
桐蔭横浜大からドラフト1位で入団したルーキー・古謝樹投手は、5月25日の北海道日本ハム戦で、プロ初登板初先発のマウンドへ。黒星を喫したものの、6回2失点とQSを達成し、降板後には「回を追うごとに自分の投球ができるようになっていったと思います」とほっとした表情で手ごたえを語った。プロ2戦目となった6月8日の中日戦では、6回2失点でプロ初勝利をマーク。以降はシーズン終了まで先発ローテーションを守り続け、5勝8敗、防御率4.32でルーキーイヤーを終えた。来季はさらにスタミナをつけ、できるだけ長いイニングを投げたいところ。
チーム最年長の岸孝之投手は、2021年以来3年ぶりに規定投球回に到達した。今季は打線の援護に恵まれず、6勝11敗でシーズンを終えたものの、防御率2.83は早川投手に次いでチーム2位の成績。7月13日の埼玉西武戦では、史上48人目となる通算2500投球回を達成すると、9回3安打無四死球の圧巻の投球で自身20度目の完封勝利を収めた。
また、9月23日の千葉ロッテ戦でも9回3安打で完封勝利を収め、球団最年長完封記録を更新し、10月1日の同カードでは、白星こそつかなかったものの9回途中5失点(自責点2)と今季最多121球の力投を見せた。39歳となっても衰え知らずな岸投手の活躍に、来季も期待せずにはいられない。
今季から先発転向の内星龍は6勝
今季から先発に転向した内星龍投手は、3月31日にプロ初先発のマウンドに上がると、4戦目となった4月27日の千葉ロッテ戦で自己最長の7イニングを投げ、3安打1失点で先発初勝利をマーク。シーズン終盤は体調不良もあったが、結果としては6勝8敗、防御率3.58と奮闘した。
投手力をさらに高め、三木肇一軍監督のもと悲願のリーグ優勝へ
リリーフとして49試合に登板し、26ホールドを記録した酒居知史投手は、国内FA権を行使せずに残留することを表明。パームボールを武器とする2年目・渡辺翔太投手は、苦しむ場面がありながらも2年間で100試合登板を達成しているだけに、来季の活躍にも期待がかかる。また、今季は7試合に登板し、1勝4敗、防御率6.98に終わり、9月に右肘関節クリーニング術を受けた荘司康誠投手の復活も待たれるところ。
来季は、三木肇監督が5年ぶりに一軍の指揮を執ることが決定している。2013年以来、12年ぶりのリーグ優勝に向けて、さらに投手力を上げていけるか。
文・後藤万結子
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