初の打撃タイトルを獲得した2024年シーズン
2018年ドラフトの1位指名で東北楽天ゴールデンイーグルスに入団した辰己涼介選手。21年から4年連続でゴールデングラブ賞を獲得するなど、早くから外野の名手として名をはせており、今季は外野手のシーズン刺殺記録を76年ぶりに塗り替えるという快挙も成し遂げている。
一方の打撃は、最初の3年間こそ低調に終わったものの、22年から成績が向上。特に今季の活躍ぶりは目覚ましく、全143試合に出場してリーグ2位の打率.294をマーク。158安打を積み重ねて自身初の打撃タイトルとなる最多安打者賞に輝いた。プロ6年目にしてバットで飛躍を遂げた守備職人は、なぜヒットを量産することができたのか。その要因にデータで迫っていきたい。
今季は引っ張り方向への安打が増加
今季の辰己選手が放った安打の特徴として、右方向への安打が多かったということが挙げられる。左バッターである同選手にとって引っ張り方向への安打が増えたことになるが、今季は全安打の約半数に当たる45.6%を引っ張った打球で記録しており、割合としては6年間で最も高い数値となっている。そして、この引っ張り方向の安打の多くは内角球を捉えた打球で生み出されている。つまり、内角球への対応が今季のヒット量産のキーポイントというわけだ。
プロ入り当初から変わらず内角球を狙う打撃スタイル
次に、辰己選手が打席内でどのようなアプローチをする打者であるかを紹介したい。追い込まれる前のコース別スイング率を見ると、ルーキーイヤーから一貫して内角のスイング率が外角より10%近く高いことが分かる。これは狙い球を自由に絞れる状況において、内角のボールをより積極的にスイングしているということであり、彼が真ん中から内寄りのボールを好んで打つバッターであることを示している。
内角球をうまくさばいてライナー性の打球を飛ばせるように
プロ入りから内角球を積極的にスイングするスタイルを続けていた中で、今季になって見られるようになった変化が打球角度だ。内角への投球に対する打球性質を見てみると、例年と比べてライナー性の打球が増加していることが分かる。これまでは狙い通り内角球を捉えたとしてもゴロになってしまっていたが、今季はヒットを打つための理想的な角度で打球を飛ばすことができていたといえる。
今季は内角球に対して3割を超える打率をマーク
内角球に対してライナー打球が増加したことの効果は、内角打率の向上という形で表れている。昨季までの5年間は通算の内角打率が.240だったが、今季は同.313を記録。これは今季の規定打席到達者の中でリーグ3位の好成績だ。もともと好んでスイングを仕掛けていた真ん中から内寄りのボールで高打率をマークしており、このことが今季のヒット量産につながっていると考えられる。
早いカウントでの好成績がタイトル獲得をもたらした
今季の辰己選手は、追い込まれるまでは内寄りのボールに狙いを定め、それを力強く引っ張ってライナー性の打球を飛ばすことで多くのヒットを積み重ねた。早いカウントでのバッティングが飛躍をもたらしたといえるが、特に0ストライク時の数字は際立っており、打率.457は規定打席到達者の中でリーグトップ。加えて長打率も.733と非常に高く、リーグ3位の好成績となっている。0ストライク時に限れば、リーグ最高のヒットメーカーというだけでなく、リーグ屈指のスラッガーでもあるわけだ。
プロ6年目のシーズンに打撃面で進化を遂げ、走攻守にキャリアハイの働きを見せた辰己涼介選手。現在開催中の「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」の代表メンバーにも選出されている。プロ入り後初めて立つ国際大会の舞台でも、侍ジャパンを連覇へと導く活躍に期待したいところだ。
※文章、表中の数字はすべて2024年レギュラーシーズン終了時点
文・データスタジアム
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