4年ぶりのリーグ優勝に続いて、日本一も勝ち取ることができるか
9月23日、福岡ソフトバンクが4年ぶりのリーグ優勝を果たした。過去3年間はリーグ制覇を逃し、クライマックスシリーズでも勝ち上がることはできていなかっただけに、このまま2020年以来となる日本一を達成できるかに注目が集まるところだ。
今回は、福岡ソフトバンクが前回日本一に輝いた2020年シーズンにおいて、主力として活躍した選手たちの顔ぶれを確認。それに加えて、それから4年が経過した今シーズンも主力を務めている選手を紹介し、ポストシーズンでのさらなる活躍にも期待をかけたい(成績は9月29日の試合終了時点)。
エースの千賀投手をはじめ、先発投手は質・量ともに充実の陣容
2020年に主力を務めた福岡ソフトバンクの投手たちと、同年の成績は下記の通り。
エースの千賀滉大投手が11勝、149奪三振、防御率2.16を記録し、最多勝、最多奪三振、最優秀防御率の投手3冠を獲得。石川柊太投手も千賀投手と同じく11勝を挙げて敗戦をわずか3つにとどめ、最多勝と最高勝率の2冠に輝くキャリアハイのシーズンを過ごした。
東浜巨投手は規定投球回までわずか1イニング足りなかったものの、短縮シーズンながら9勝を挙げて防御率2.34と好投。ムーア投手も防御率2.65、奪三振率10.27と出色の投球を披露し、日本シリーズでも7回をノーヒットに抑える快投を見せて戴冠に貢献している。
和田毅投手は16試合で8勝1敗と言う驚異的な勝率を記録し、防御率2.94とベテランらしい落ち着いた投球でチームを支えたほか、先発陣は質・量ともに充実の布陣を備えていた。
多士済々のブルペン陣が、モイネロ投手と森投手の必勝リレーにつなぐ
リリーフでは前年に先発として12勝を挙げて新人王に輝いた高橋礼投手が、52試合で23ホールド、防御率2.65と新たな持ち場でも活躍。2年目の泉圭輔投手も40試合で防御率2.08とフル回転の活躍を見せる。
左キラーの嘉弥真新也投手も50試合に登板し、防御率2.10、奪三振率9.90と見事に役割を果たした。そして、モイネロ投手は50試合で38ホールド、防御率1.69、奪三振率14.44とまさに支配的な投球を見せ、自身初タイトルとなる最優秀中継ぎにも輝いた。
クローザーの森唯斗投手は52試合で6ホールド32セーブを記録し、防御率2.28と安定した投球を見せて幾度となくチームを勝利に導いた。現在もチームを支える松本裕樹投手や津森宥紀投手も台頭を見せており、ブルペンにも強力なメンバーが揃っていたことがわかる。
内野の分厚い選手層が、故障の影響で流動的だった遊撃手をもカバー
2020年に主力を務めた福岡ソフトバンクの野手たちと、同年の成績は下記の通り。
一塁手の中村晃選手は100試合で打率.271、出塁率.341を記録し、守備では自身初のゴールデングラブ賞を受賞するなど、攻守にわたって堅実な活躍を見せた。二塁手の周東佑京選手は打率.270、出塁率.325に加え、短縮シーズンながら50盗塁という圧倒的な数字を残した。自身初の盗塁王に輝く活躍を披露し、中心選手としての立場を確立している。
故障の影響で43試合の出場にとどまった今宮健太選手の、代役を務めた川瀬晃選手が打率.191と打撃面で苦しんだこともあり、シーズン終盤は牧原選手や周東選手が遊撃を守る機会が増え、全員野球で今宮選手の離脱した穴を埋めていった。
三塁では松田宣浩氏がレギュラーとして116試合に出場。打率やOPSはインパクトに欠けるものの、13本塁打を放ってパワーの一端を示した。また、明石健志氏が63試合で打率.253、川島慶三氏が59試合で打率.263、出塁率.369と、両者ともに頼れるベテランとしてスーパーサブの役割を果たしている。
リーグMVPに輝いた柳田選手と、ブレイクした栗原選手が打線をけん引
外野では柳田悠岐選手が圧倒的な存在感を発揮。最多安打に加えて自身2度目のリーグMVPにも輝き、球界屈指の強打者としてチームを力強くけん引した。
主にライトを務めた栗原陵矢選手は118試合に出場し、自身初の規定打席に到達。中心打者の一人として17本塁打、73打点を記録し、日本シリーズでは14打数7安打の打率.500と大活躍を見せてMVPを受賞。捕手からのコンバートが奏功し、一躍ブレイクを果たした。
ただし、加入1年目だったバレンティン選手をはじめ、長谷川勇也氏、上林誠知選手といった、実績ある選手たちが少なからず打撃不振に苦しんだ。その一方で、真砂勇介選手が打率.314、OPS.929と活躍を見せており、チームとしての層の厚さをあらためて示している。
先発転向のモイネロ投手と復活の石川投手、成長を示す2名のリリーバーが躍動
次に、2020年にチームの主力を務めた投手たちのうち、今季も活躍を見せている投手たちの顔ぶれを確認していきたい。
2020年は25試合に登板して防御率3.49という数字だった松本投手は、今やリリーフ陣の柱の一人に成長し、オスナ投手の離脱時にはクローザーも務めた。津森投手も同年は15試合の登板だったが、今ではセットアッパーとして欠かせない存在となりつつある。
石川投手は8月以降に5連勝を記録するなど終盤戦に大きく調子を上げ、防御率2.56と安定感を取り戻しつつある。東浜投手はやや登板機会を減らしたものの、和田投手は43歳にしてキャリア初ホールドを記録するなど、リリーフとして新境地を開拓しつつある。
さらに、2020年は最優秀中継ぎを受賞する活躍を見せたモイネロ投手が、今季は先発として躍動。リーグトップの防御率1.94を記録する安定感抜群の投球を見せ、リリーフに続いて先発としてもタイトル獲得を視界に捉える圧巻の活躍を見せている。
捕手と内野の主力を務めた面々が、今季のリーグ優勝にも大きく貢献している
最後に、2020年の主力野手のなかから、今季も活躍を続けている選手たちの顔ぶれを紹介しよう。
周東選手は主戦場をセンターに移し、41盗塁を記録して2年連続3度目の盗塁王に大きく近づいている。牧原大選手もユーティリティを務めながらチームの主軸に成長し、今季は主に二塁手として好成績を残している。
甲斐選手は4年間にわたって正捕手の座を維持し続け、今季は打率.254と打撃面でも好調さを示している。2020年は故障に泣かされた今宮選手も、今季は130試合に出場して打率.262と安定した活躍を見せ、遊撃手のレギュラーとしてチームを支えている。
2020年は外野を務めていた栗原選手は昨季から三塁手に移り、今季は136試合で打率.269、17本塁打、80打点を記録。中村晃選手は打率.215と不振に陥っているが、川瀬選手は102試合に出場して打率.267と、打率1割台に終わった2020年からの大きな成長を示した。
2020年のリーグMVPに輝いた柳田選手は今季も打率.293、OPS.819と好成績を残していたが、5月31日の試合で負傷して長期離脱を強いられた。ポストシーズンでの実績も豊富な大黒柱の復帰は、日本一奪還を目指すチームにとっても大きな後押しとなり得る。
ポストシーズンで無類の強さを誇ったV戦士が、成功体験をチームに還元するか
移り変わりの激しいプロ野球の世界においては、4シーズンが経過すれば主力選手の顔ぶれも大きく変化するもの。MLBに挑戦したエースの千賀投手、精神的支柱の松田氏、優良助っ人コンビのグラシアル選手とデスパイネ選手をはじめ、既にチームを離れた名選手たちの数は決して少なくはない。
その一方で、ドラフトや補強によって多くの優秀な選手たちがチームに加入し、3年間遠ざかっていたリーグ制覇へとチームを導いている。そうした状況下において、ポストシーズンで無類の強さを誇った時期のチームを知る選手たちが持つ成功体験が、今後大きな価値を持つ可能性は大いにあるはずだ。
これから迎えるクライマックスシリーズを勝ち抜き、再び優勝旗を福岡に持ち帰ることができるか。ポストシーズン6試合を全勝で圧倒した2020年のV戦士たちが短期決戦の舞台で見せるプレーに、あらためて注目してみる価値は大いにあることだろう。
文・望月遼太
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