昨季は規定打席まで惜しくも2打席足りなかったものの、自己最多の120試合に出場するなど飛躍のシーズンを過ごした東北楽天・小郷裕哉選手。今季は主に1番打者を任され、チーム唯一となる前半戦全試合でフルイニング出場。さらにここまで前年を上回る打率、出塁率を残しているほか、リーグ3位の20盗塁をマークするなど、リードオフマンとして多くの得点に絡む活躍を見せている。今回のコラムでは、1番打者として頭角を現した前半戦のバッティングについて探っていきたい。

今季はゾーンを問わず慎重なアプローチに

　まず注目したいのがアプローチ面の変化だ。今季の小郷選手は全体のスイング率が前年から低下。中でも初球へのスイング率が大きく下がっており、これまで30～40%台を推移していた初球のストライクゾーンスイング率は27.0%を記録。ファーストストライクに対して、例年よりも手を出さない打席が増えている。さらに、初球のボールゾーンに対してはスイング率7.3%と、パ・リーグの規定打席到達者で最も低い数字をマーク。その後の勝負に大きく影響する1球目で、結果次第では相手投手を助けてしまうボール球をしっかり見極められているのだ。

選球眼の向上でキャリア最多の四球数

　続いて、ボールゾーンスイング率をカウント別に見ていきたい。今季のボールゾーンスイング率は初球に限らず減少しており、いずれのカウントでもリーグ平均を下回るスイング率をマーク。ここ2年はボール球でも高いコンタクト率を残しているが、今季は手を出さずにしっかりと見極められている。その結果、選んだ四球はソフトバンク・近藤健介選手に次ぐリーグ2位の42個。これは現時点で自己最多の数字であり、前年からの出塁率アップに大きくつながっているだろう。

ボール球を見極めながらも光る好球必打

　例年よりもボール球を見極め、多くの四球を選んでいる小郷選手。以前より慎重な打撃スタイルとなった印象も受ける中、続いて注目したいのがストライクカウント別の成績だ。昨季は0ストライク時の打率が1割台に低迷するなど、初球もしくはバッター有利のカウントで仕留めきれない場面が多かった。一転して今季は、スイング率が低下しながらも0ストライク時に打率.339とハイアベレージを記録。また、ここまで放った本塁打は6本中4本がファーストストライクを捉えたもの。単に積極性を失ったわけではなく、スイングを仕掛ける球を選びながらも浅いカウント時に高打率を残していた。

得点圏では一転して積極的なスタイルに

　好球必打で結果を残す小郷選手だが、チャンスで迎えた打席では打撃スタイルに変化が出ている。状況別のカウント別ストライクゾーンスイング率を見てみると、非得点圏時は0ストライク時のストライクゾーンスイング率が28.6%にとどまっている一方、得点圏時には46.5%まで上昇。全体のスイング率が低下している中、好機の場面では積極的なアプローチへと変えているようだ。

チャンスでは1球で仕留める勝負強さを発揮

　積極性が増す得点圏時はファーストスイング時に打率.452をマーク。浅いカウント時に高打率を残している小郷選手だが、チャンスの打席では1球で捉える確率が一層上がっている。1番打者での起用が中心ながら、ここまで挙げた打点数はチーム2位の36を記録。出塁してチャンスを演出する役割にとどまらず、好機では1球で仕留める勝負強いバッティングで得点をもたらしていた。

　「ホームランを打てて、盗塁もできる選手が僕は理想」と自身も語るように、得点能力にたけた1番打者として躍進を続ける小郷選手。球団は今年で創設20周年を迎えて戦う中、前半戦終了時点でのリーグ順位は4位。後半戦からの逆襲には、多くの選手の飛躍が必要不可欠といえる。チームをけん引するリードオフマンとして、小郷選手の一層の活躍を期待したいところだ。

※文章、表中の数字はすべて2024年7月21日終了時点

文・データスタジアム

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