2004年から2012年まで9年連続で、パ・リーグの「本塁打王」のタイトルは日本人選手が獲得していた。しかし、昨季は北海道日本ハムのレアード選手がその栄誉に輝き、埼玉西武のメヒア選手が次点につけた。現在、一振りで戦況をひっくり返す「主砲」の代名詞は、多くの場合外国人選手のものであると言えるだろう。ただ、ここにきて3人の和製大砲が、今季の本塁打王争いに堂々名乗りを上げている。
その3人のうちの1人は、2015年の本塁打王で、2年ぶりの王座奪還を目指す埼玉西武・中村選手だ。昨季は怪我に悩まされて思うような結果が残せず、オフの契約更改ではシーズンの成績に対して「最低最悪」と、自ら厳しい評価を下した。
これまで以上に強い気持ちで今季に臨んだ中村選手は、球団記録となる「開幕から17試合連続安打」を放つなど、申し分のない好スタートを切る。その後も順調に本塁打数を伸ばし、すでに2桁本塁打に到達し、そのうち2試合でおかわり本塁打も披露。前を打つ浅村選手とともに、埼玉西武打線を牽引している。では、そんな中村選手の昨季と今季の成績を比較してみよう。
※今季の成績は全て6月9日終了時点のもの
【中村選手の打撃成績】
2016年:108試合 387打数 92安打 21本塁打 61打点 打率.238
2017年: 52試合 202打数 46安打 13本塁打 42打点 打率.228
今季の中村選手の成績で特筆すべきは、なんと言っても三振の少なさだろう。昨季は125三振を喫し三振率は.323となっていたが、今季はここまで202打数で52三振。三振率は.257と改善されている。
現在の打率は2割3分前後と、決して高い数字であるとは言えないが、一振りでチームの流れや雰囲気を覆すことできるパワーが中村選手にはある。過去、規定打席に到達した年は、すべて本塁打王を獲得しているように、今季もこのまま怪我なくシーズンを過ごしていければおのずと結果はついてくるだろう。自身7回目となる本塁打王獲得となるか、中村選手のバッティングに注目していきたい。
2人目は、2010年以来となる本塁打王獲得を目指す、オリックスのT-岡田選手だ。吉田正選手やロメロ選手など、期待の長距離砲が戦列を離れてしまう時期があった中で、14本のアーチを描いた。さらにチームトップの30打点を挙げて、パ・リーグ最下位に沈んだ昨季の悔しさを晴らそうと気を吐いている。こちらも、昨季と今季の成績を比較してみよう。
【T-岡田選手の打撃成績】
2016年:123試合 454打数 129安打 20本塁打 76打点 打率.284
2017年: 56試合 197打数 59安打 14本塁打 30打点 打率.299
開幕直後は天秤気味の打法に挑戦するなど試行錯誤が続き、本人も本調子ではないと語る中で、本塁打量産を果たしている理由はどこにあるのか。注目したいのは、大幅な向上を見せている出塁率だ。昨季は47四球を選んで出塁率は.357だったが、今季はすでに38四球を選び、出塁率.423と数字を上げている。
さらに、56試合に出場して併殺打はなんと2本。狙った球を逃さず、正確に捉える意識がここまでの打撃成績に表れているのではないだろうか。2010年に33本塁打をマークして本塁打王に輝いて以来、30本に到達しないシーズンが続くT-岡田選手。このペースを維持して、自身初の40本塁打、さらにはその先にある7年ぶりのタイトルを見据える。
最後となる3人目は、打撃好調の福岡ソフトバンク・柳田選手を挙げたい。チームとしては2005年の松中選手以降、本塁打王のタイトルから遠ざかっている。13年ぶりのタイトル獲得へ向け、柳田選手は現在15本塁打で2位につけている。
【柳田選手の打撃成績】
2016年:120試合 428打数 131安打 18本塁打 73打点 打率.306
2017年: 57試合 203打数 63安打 15本塁打 52打点 打率.310
2015年にトリプルスリーを達成し、その時の成績に比べると、やや物足りない成績となった昨季。それでも打率3割をマークしたのはさすがといったところ。今季と昨季を見比べてみると、ここまでのハイペースで量産している本塁打数はもちろんのこと、得点圏打率の高さが非常に目立っている。
昨季は得点圏打率.314だったが、今季は2年前の.413に迫る.410を記録。内川選手を怪我で欠く現在のチーム状況において、デスパイネ選手とともに重要なポイントゲッターとなっている。少差で首位・楽天を追っているだけに、柳田選手が得点圏でどれだけのアーチを描けるかにチームの行方がかかっている。
自身7度目のタイトルを狙う中村選手と、7年ぶりの本塁打王奪還に燃えるT-岡田選手。そして自身初の本塁打王獲得も狙える位置に付けている柳田選手。パ・リーグが誇る稀代のホームランアーティストでありながら、たゆまぬ努力と苦悩を重ね、持ち得る技術にさらに磨きをかけた3選手の活躍から目が離せない。
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