5月28日から「日本生命セ・パ交流戦 2024」が開幕。今季の交流戦も、指名打者制はパ・リーグ球団の主催試合のみに採用される。つまり、セ・リーグ球団主催試合では普段打席に立つことがないパ・リーグ投手陣のバッティングを見ることができる。
そこで2024年5月27日時点で今季先発したパ・リーグ6球団の投手を対象に、これまでの打撃成績を調べてみた。
北海道日本ハム
伊藤大海投手は2023年6月17日中日戦で長打でプロ初安打を記録。0対3で迎えた5回表、2死1塁の場面、中日・松葉貴大投手の浮いた変化球を振り抜くと、打球は左中間を真っ二つ。自らのバットで反撃の狼煙をあげると、その後マルティネス選手に3ランが飛び出し、チームは逆転勝利。伊藤投手は本業の投球でも7回3失点で白星を手にしている。
昨年、6月4日巨人戦に先発した北山亘基投手。1回裏に先制点を許すも、直後の2回表2死1、2塁。プロ初打席で初安打初打点となる同点タイムリーを自ら打った。さらに3点リードの6回表、無死2、3塁では高く打ち上げると、打球がセカンド後方にぽとり。ラッキーな当たりで再び打点を挙げ、この日は4打数2安打2打点。投げるほうも7回3失点で勝利投手になった。
加藤貴之投手はプロ通算12打数3安打1犠打1四球、打率.250の成績。2022年5月24日東京ヤクルト戦は「8番・投手」でスタメン出場し、第2打席でサイスニード投手からレフト前安打を打っている。
今回の対象選手のなかで唯一、ホームランを放っているのが上原健太投手。2018年6月18日広島戦、初回に1点を失った上原投手だが2回から3イニング連続で3者凡退と自身の投球で流れをつくる。すると上原投手が先頭打者で迎えた5回表、スラッガーさながらの鋭いスイングを見せると、マツダスタジアムのライトスタンドへ鮮やかに放り込んだ。また、2022年は二塁打、昨年も1安打と現在2年連続で安打を記録中だ。
そしてバッティングに長けた投手といえば、今季から北海道日本ハムに加入した山崎福也投手だが、その活躍ぶりは本記事の最後に紹介したい。
東北楽天
早川隆久投手は2023年6月17日巨人戦に先発し好投&プロ初安打をマーク。4回まで0を並べた左腕は5回表の第2打席、ボールをたたき付けて全力疾走で内野安打をもぎ取る。すると2死から小郷裕哉選手が先制2ランを放ち、これが決勝点に。早川投手の6回1失点&3打数1安打の奮闘が実り、僅差の試合を制した。
歴代5位の交流戦通算24勝の実績を持つ岸孝之投手。バッティングはというとプロ通算71打数5安打、打率.070だが、埼玉西武時代の2012年6月11日東京ヤクルト戦では2安打したことも。もし今季、安打が出れば東北楽天移籍後は初安打となる。
埼玉西武
5月27日時点で今季先発した埼玉西武の投手は隅田知一郎投手、今井達也投手、高橋光成投手、武内夏暉投手、ボー・タカハシ投手、平良海馬投手、松本航投手、渡邉勇太朗投手、青山美夏人投手(登板数順)。高橋光投手と松本航投手は犠打を記録しているが、どの投手もまだプロ初安打はない。セ・リーグ球場へ遠征予定の埼玉西武ファンは、記念の1安打目が見れるかもしれない。
千葉ロッテ
メルセデス投手は巨人での5シーズンで計15安打を記録。千葉ロッテ1年目だった昨季は3打数ノーヒットだったため、今季交流戦で移籍後初安打は飛び出すか。美馬学投手は東北楽天時代の2016年6月16日巨人戦で2安打1打点、昨年は中日・柳裕也投手から安打している。
また、小島和哉投手、種市篤暉投手は犠打こそ成功させているが、佐々木朗希投手を含めた千葉ロッテ先発3本柱は、意外にもまだ安打が出ていない。
オリックス
宮城大弥投手は2021年5月26日横浜DeNA戦でプロ初打席初安打を放つと、投げても6回3失点で勝利投手に。さらに昨年は、完封勝利を挙げた6月4日中日戦でプロ初打点となる適時打を打ち、投打で話題をさらった。
山下舜平大投手は5回3失点で交流戦初勝利を挙げた、昨年6月17日東京ヤクルト戦でバットでも貢献。2点リードの3回表、先頭打者で打席に立った山下投手は、ベテラン・石川雅規投手からプロ初安打となるレフト前安打で出塁。大城滉二選手の適時二塁打で生還し、プロ初得点もマークした。
福岡ソフトバンク
有原航平投手は昨年6月13日東京ヤクルト戦で小川泰弘投手から、NPBでは2017年以来7年ぶりの安打をレフト前へ放った。通算成績16打数1安打の石川柊太投手だが、その1安打は2021年6月4日、甲子園球場で阪神・青柳晃洋投手から打ったものだ。
東京ヤクルト・石川投手と並んで歴代最多の交流戦通算27勝を挙げている和田毅投手。NPBでの通算打撃成績は47打数4安打(二塁打1)8犠打、打率.085となっている。もし今季安打が出れば2010年以来15年ぶりだ。
投打にセンス抜群の山崎福也
高校時代に春の甲子園で個人大会通算最多タイとなる13安打を打ち、パ・リーグ所属ながら非凡なバッティングセンスでたびたび注目を集めるのが、北海道日本ハム・山崎福也投手だ。
プロ初安打は2015年6月5日中日戦、第1打席のセンター前安打。同試合は6回途中2失点でプロ初勝利を挙げた試合でもあった。2021年にはセンバツ大会の思い出がつまった甲子園球場でプロ入り初の二塁打を放つ。続く福田周平選手の適時打でプロ初得点となるホームインも記録された。
2022年は6月2日横浜DeNA戦で7回9奪三振1失点&3打数1安打の活躍で勝利に導くと、翌日の広島戦になんと田嶋大樹投手の代打で登場している(結果は二飛)。ちなみに山崎投手は、この年の日本シリーズでも投打で躍動。2試合に登板し9イニング無失点で1勝を挙げ、打撃でも3打数1安打1打点1犠打と持ち味を存分に発揮し、優秀選手に選出された。
そして昨年、6月3日中日戦は「8番・投手」でスタメンに名を連ねた。この日は無安打だったものの、6月16日東京ヤクルト戦では投打で面目躍如。0対0の2回表、2死1、2塁のチャンスでセンター前へ打ち返し、うれしいプロ初打点を挙げる。7回表の第3打席ではレフト前安打を放つと、その裏のマウンドにも上がり、東京ヤクルト打線を3者凡退でぴしゃり。3打数2安打1打点&7回1失点の好投でチームに勝利をもたらした。
パ・リーグ投手が「投打二刀流」で交流戦MVPの可能性も?
さかのぼること19年前の2005年、交流戦初代MVPである小林宏之氏(千葉ロッテ)は5勝0敗、そして10打数3安打(二塁打3)3打点の大活躍だった。今季の山崎投手はここまで2完投するなど5勝1敗と背番号「18」にふさわしい投げっぷり。さらに、これまで見せてきた打撃への意欲と結果を考えると、投打で圧巻の成績を残して交流戦MVPを獲得……ということもありそうだ。
文・菊地綾子
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