不振に苦しんだ2022年からの復活
現役最多の通算472本塁打を誇る埼玉西武・中村剛也選手。2022年はシーズン打率1割台と振るわなかったものの、一転して昨季は3、4月度の大樹生命月間MVP賞に輝くなど躍動。故障による離脱がありながらも打撃成績を軒並み向上させ、前年からの復調を印象づけるシーズンを過ごした。本コラムでは昨季の成績向上の要因について探っていきたい。
2022年に苦しんだストレートへの対応
中村選手はこれまで変化球と比較してストレートの打撃成績が良いというシーズンが多かったが、22年はストレートに対する打率が.172まで悪化。2割を下回ったのはレギュラー定着後初めてで、シーズン成績が振るわなかった要因のひとつとなっていた。しかし23年は月間MVPに輝いた3、4月にストレート打率.406を記録するなど、前年の低迷を払しょくする強さを発揮。苦しんでいた対ストレートの成績向上は、昨季の復調を印象づける要素のひとつだろう。
もうひとつの復調のカギとは?
続いて注目したいのが打球の角度だ。昨季の中村選手は、ゴロの割合が直近2年と比べて大きく減少。一方でフライ割合は前年から割合を増やし、2015年以降で最も高い58.1%をマークしている。この数字は昨季200以上の打球を放ったパ・リーグの選手の中で、千葉ロッテのポランコ選手に続く2番目に高い割合だった。また、中村選手は過去に6度本塁打王を獲得しているが、そのいずれのシーズンもフライ割合は50%台後半から60%台をマーク。つまり昨季はホームランを量産していたシーズンに近い割合でフライ打球を放っていたことになる。
好成績をもたらしたフライ打球
そして単にフライが増加しただけでなく、その打球は結果にもつながっていた。フライ打球がホームランになった割合を示すHR/FBは、13.9%を記録。これは昨季し烈な本塁打王争いを繰り広げた北海道日本ハムの万波中正選手や福岡ソフトバンクの近藤健介選手らを上回る数字で、40歳を迎えてなおリーグ屈指のパワーヒッターとして健在ぶりを示した。
もう少しフライ打球の結果を見てみよう。打球が発生した結果に限定しているため三振による凡退が含まれておらず、シーズン成績との単純比較はできないが、前年から比べるといずれも打率や長打率の数字は向上。フライはゴロと比較して長打になる確率が高く、好成績につながりやすい。中村選手はそうした打球が増えたこと、そしてそのフライ打球が実際に好結果に結び付いたことで、昨季の復調につながったと考えられるだろう。
同学年の栗山巧選手とともに、リーグ最年長野手として迎えた2024年。節目のNPB通算500号まで残り29本で開幕を迎えると、4月10日の千葉ロッテ戦で横山陸人投手の直球を捉えて今季1号ソロをマークし、大台到達へまた一歩前進した。迫る史上9人目の快挙達成、そしてチームとして5年ぶりとなるリーグ制覇へ、復活を果たした希代のアーチストの打棒に今季も期待したい。
※文章、表中の数字はすべて2024年4月11日終了時点
文・データスタジアム
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