オリックスに移籍のルイス・カスティーヨ。大化けの可能性を示す“ある指標”とは?

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2024.3.18(月) 15:20

カスティーヨ投手(C)パーソル パ・リーグTV
カスティーヨ投手(C)パーソル パ・リーグTV

2023年は千葉ロッテでプレー。今季からリーグ3連覇中の王者の一員に

 2月10日、オリックスに移籍したルイス・カスティーヨ投手の入団会見が行われた。2023年は千葉ロッテでプレーしていたカスティーヨ投手は、来日2年目の今季もパ・リーグの強打者たちを相手に投球を重ねていくことになる。

 オリックスでは、2023年に在籍した外国人投手が全員揃って退団する運びとなった。カスティーヨ投手は今季の新戦力では唯一NPBでプレーした経験を持つだけに、ひときわ期待が寄せられる存在の一人となってきそうだ。

 今回は、カスティーヨ投手の球歴や、投手としての特徴に加えて、新天地でブレイクを果たす可能性を示す数々の指標を紹介。28歳とまだ伸びしろを残す助っ人が、新シーズンに大きな飛躍を遂げる可能性について、具体的なデータをもとに考えていきたい。

シーズン途中に先発に転向し、終盤戦では投球内容も大きく向上

 カスティーヨ投手が、NPB1年目の2023年に残した成績は下記の通り。

ルイス・カスティーヨ投手 年度別投手成績(C)PLM
ルイス・カスティーヨ投手 年度別投手成績(C)PLM

 カスティーヨ投手は2021年に行われた東京五輪にドミニカ共和国代表として出場し、銅メダル獲得に貢献した。その一方で、アメリカではマイナー生活が長く、10年間のキャリアにおいて、MLBでの登板はわずか3試合にとどまっていた。

 2022年に来日して千葉ロッテに入団し、リリーフとして開幕一軍入りを果たす。だが、来日初登板でいきなり失点するなど不安定さは否めず、故障もあって4月頭に二軍落ち。このタイミングでリリーフから先発に転向し、二軍で好投を見せて今後に期待を持たせた。

 一軍復帰を果たした6月1日の巨人戦では、3回で8安打を喫して3失点と打ち込まれた。しかし、6月8日の東京ヤクルト戦で6回0/3を無失点と好投し、来日初白星を記録。ただし、6月17日の横浜DeNA戦では3回6失点と炎上し、再び二軍での調整を余儀なくされた。

 それでも、7月に一軍に再昇格すると、8月は3試合で防御率3.00、9月は防御率1.15と、投球内容が劇的に向上。ポストシーズンを含む10月以降の登板はなかったものの、交流戦終了時の防御率6.75から、シーズン終了時には防御率3.12へと、大きく数字を改善してみせた。

四球を出さずにゾーン内で勝負する能力は、現在のパ・リーグでも群を抜く

 続いて、カスティーヨ投手が2023年に記録した、各種の指標について見ていきたい。

ルイス・カスティーヨ投手 年度別投手指標(C)PLM
ルイス・カスティーヨ投手 年度別投手指標(C)PLM

 カスティーヨ投手の最大の特徴は、与四球が極めて少ない点だ。2023年は49イニングで与えた四球はわずかに3つ、与四球率は0.55と、まさに驚異的な数字を記録している。K/BBも11.33と抜群の水準に達しており、余計な走者を出すケースは皆無に近かった。

 その一方で、奪三振率は6.24とやや低く、独力でピンチを打開する能力には欠けていた。二軍における奪三振率は8.78と十分な水準に達していただけに、容易に空振りしない一軍の打者に対しては異なるアプローチを取る必要があったことがうかがえる。

 そのため、ストライクゾーンぎりぎりに制球して見逃し三振を狙うというよりは、ボールをゾーン内に投じる能力が非常に高い点を活かして、四球を出さずに打たせて取る投球を展開していた。同じく与四球率が優秀な有原航平投手(福岡ソフトバンク)に近い投球スタイルであり、パ・リーグにおいて活躍できるだけの資質は備えているといえよう。

運の要素が上向けば、一気に大化けを果たす可能性を秘めている

 打たせて取るタイプの投手にとって、フェアゾーンに飛んだ打球が安打となるか否かは非常に重要だ。そのため、本塁打を除くインプレーの打球が安打になった割合を示す「被BABIP」という指標は、カスティーヨ投手にとっては生命線の一つになってくる。

 実際の数字に目を向けると、カスティーヨ投手の2023年の被打率は.272、被BABIPは.314と、いずれも高い数値となっていた。49イニングで被安打52とイニングを上回る数の安打を浴びており、ゾーン内で勝負した結果として痛打されるケースは少なくなかった。

 ただし、BABIPは一般的に運に左右される部分が大きく、長いスパンで見れば一定の値に収束していく傾向が強いとされている。昨季のBABIPが基準値とされる.300を大きく上回っていたこともあり、新シーズン以降はこの数字が改善される可能性は大いにあるだろう。

 先述した有原投手の場合も、15勝を挙げて最多勝に輝いた2019年は被BABIPが.234、NPB復帰初年度で10勝を挙げた2023年は同.248と、いずれもキャリア平均の数字(.282)を大きく下回っていた。カスティーヨ投手の被BABIPが同様に大きく低下するシーズンが来れば、一気に大化けを果たすことになるかもしれない。

スタミナ不足が大きな課題だが、9月には成長の兆しを見せていた

 最後に、カスティーヨ投手が2023年に残した月別成績を紹介しよう。

ルイス・カスティーヨ投手 2023年月別投手成績(C)PLM
ルイス・カスティーヨ投手 2023年月別投手成績(C)PLM

 6月は3試合に先発したが、そのうち2試合では3イニングを投げたところで降板する結果となった。しかし、7月29日の試合では5回で6安打を浴びながら無失点と粘りの投球を見せ、交流戦の時期に比べて着実に成長した部分を示している。

 さらに、8月は3試合中2試合で6イニングを投げ抜き、9月は先発した2試合でいずれも5.2回以上を消化した。9月10日は中継ぎで登板して4イニングを1失点に抑えるなど、早期降板を強いられるケースは、シーズンが深まるごとに減少していった。

 しかし、9度の先発登板における投球回は6回0/3が最長で、7イニング以上を消化した試合は1度もなし。6回を3失点以内に抑えるクオリティスタート(QS)は4度達成したものの、7回2失点以上のハイクオリティスタート(HQS)は1度も記録できなかった。

 QS率自体も44.4%と5割を下回っており、試合を作るという面では物足りない部分が否めなかった。スタミナ不足という明確な課題が、負けたら終わりのシーズン最終盤において登板機会を得られるほどの信頼を、首脳陣から得られなかった理由の一つだったのかもしれない。

 とはいえ、カスティーヨ投手は主に中継ぎとしてキャリアを積んできた投手なだけに、シーズン途中の先発転向によって調整が難しくなった側面もあるだろう。9月には課題の奪三振率も8.05まで向上していた点も含め、昨季の終盤に見せた成長を今季につなげられるか否かが、新天地で先発陣の一角に定着できるかを決めることになりそうだ。

新天地でブレイクを果たし、層が薄くなった先発陣の穴を埋める存在となれるか

 オリックスは強力な投手陣を軸にリーグ3連覇を達成したが、今オフには山本由伸投手と山﨑福也投手がチームを離れた。先発の層は例年に比べて薄くなっているだけに、前年に同じパ・リーグで先発として一定の投球を見せており、年齢的にも成長の余地を残すカスティーヨ投手にかかる期待は決して小さくはないはずだ。

 投手の育成に長けた新天地でさらなる進化を果たし、先発としての地位を盤石のものにできるか。被BABIPの改善次第で大ブレイクを果たす可能性を秘める“四球を出さない男”が、3連覇中のチームで化学反応を起こせば、王者は例年通りに盤石の先発陣を維持することになりそうだ。

文・望月遼太

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