3連覇に貢献した先発陣や、球史に残る守護神も。近年の「ドラフト1位左腕」を振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

埼玉西武 隅田知一郎投手(写真は2023年時)【写真:球団提供】
埼玉西武 隅田知一郎投手(写真は2023年時)【写真:球団提供】

直近のドラフトでは、4人の左投手がドラフト1位でパ・リーグのチームに入団

 2023年のドラフトでは、パ・リーグ6球団のうち4球団が、ドラフト1位で左投手を獲得した。細野晴希投手(北海道日本ハム)、古謝樹投手(東北楽天)、武内夏暉投手(埼玉西武)、前田悠伍投手(福岡ソフトバンク)と、いずれもプロでの活躍が期待される逸材だ。

 ドラフト1位でプロ入りした左腕は過去にも数多く存在したが、プロ入り後の“成功率”はどうだったのだろうか。今回は、2010年以降にパ・リーグのチームへ入団したドラフト1位左腕の歴史と、各投手の活躍ぶりについて振り返っていきたい。

高校からプロ入り(4名)

高卒からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM
高卒からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM

 森雄大氏は相次ぐ故障の影響で一軍定着を果たせなかったが、翌年に入団した松井裕樹投手はクローザーとして圧倒的な活躍を披露。通算3度のセーブ王を獲得しただけでなく、2023年に史上最年少となる通算200セーブを達成。NPB歴代6位となる通算234セーブを記録するなど、球史に残る守護神の一人として杜の都のマウンドに君臨した。

 堀瑞輝投手は3年目の2019年に53試合に登板して台頭し、その後は左のリリーフとして4年連続で40試合以上に登板。2021年には60試合で防御率2.36とフル回転し、42ホールドポイントを挙げて最優秀中継ぎ投手のタイトルにも輝く自己最高のシーズンを送った。

 宮城大弥投手は2年目の2021年に先発としてブレイクし、13勝4敗、防御率2.51という好成績で新人王を受賞。その後も左のエースとして躍動し、3年連続で2桁勝利を記録。リーグ屈指の左の先発へと成長を遂げ、チームのリーグ3連覇にも大きく貢献している。

大学からプロ入り(11名)

大卒からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM
大卒からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM

 塩見貴洋氏は1年目の2011年に規定投球回に到達し、9勝9敗、防御率2.85と出色の投球を披露した。その後も2桁勝利を挙げたシーズンこそなかったものの、貴重な左の先発として奮闘。2023年に引退するまでに876.1回を投げ、防御率3.80と安定した数字を残し続けた。

 ドラフトの目玉として3球団が競合した藤岡貴裕氏は、規定投球回への到達こそなかったものの、プロ初年度から3年連続で115イニング以上を投じた。松葉貴大投手は2年目の2014年に8勝1敗、防御率2.77と優勝争いに貢献する活躍を見せ、その後もオリックスと中日で先発として活躍。今季は節目の通算1000投球回への到達も期待されるところだ。

 山崎福也投手は入団から6年間は安定感を欠く投球が目立ったが、2021年以降は先発陣の一角に定着。2023年には自身初の2桁勝利を挙げるなど、リーグ3連覇に大きく貢献した。上原健太投手もプロ入りから5年間は苦しんだが、2022年に25試合で防御率3.19を記録し、2023年は初めて年間100イニング以上を消化して防御率2.75と大きな成長を見せている。

 早川隆久投手は1年目の2021年に先発として9勝を記録。その後は故障に苦しむも、先発として3年続けて防御率3点台を記録している。同年にプロ入りした鈴木昭汰投手は1年目から先発と中継ぎを兼任して23試合に登板し、2023年はロングリリーフとして防御率2.76と好投を見せた。

 隅田知一郎投手は1年目の2022年こそ1勝10敗と苦しんだが、続く2023年は9勝10敗と大きく数字を改善させ、左のエース格へと成長を遂げた。二刀流の矢澤宏太投手は野手としての起用が中心で、ルーキーイヤーの一軍登板は2試合のみ。曽谷龍平投手は1年目の一軍定着は果たせなかったが、シーズン最終戦で嬉しいプロ初勝利をマークしている。

社会人からプロ入り(3名)

社会人からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM
社会人からプロ入りしたドラフト1位左腕の通算成績(C)PLM

 松永昂大氏は1年目の2013年に先発と中継ぎを兼任し、58試合で28ホールド1セーブ、防御率2.11と大車輪の活躍を披露。2年目以降はリリーフに専念し、プロ入りから7年連続で40試合以上に登板した。2023年終了時点で歴代18位タイの通算135ホールドを記録して通算防御率も2点台と、貴重な中継ぎ左腕として長きにわたってチームを支えた。

 田嶋大樹投手は1年目から先発の一角に加わるも、最初の2年間は故障に苦しんだ。だが、3年目の2020年に自身初の規定投球回に到達すると、その後は主戦投手として活躍。左の先発として安定感のある投球を続け、強力投手陣の一角を構成してリーグ3連覇にも大きく貢献している。

 河野竜生投手は1年目こそ防御率5.07とプロの壁に跳ね返されたが、2021年は40試合で防御率2.99と好投。続く2022年は防御率4.41とやや調子を崩したものの、2023年は自己最多の50試合に登板。防御率1.70と抜群の安定感を発揮し、左のセットアッパーとして20ホールドを記録する活躍を見せた。

2010年以降における、ドラフト1位左腕の“成功率”は……

 高校からドラフト1位でプロ入りした4名のうち、松井投手、堀投手、宮城投手の3名はプロ入り後にタイトルホルダーとなっている。高校生投手は将来性が期待される部分も大きいが、4名中3名がプロ入り後に大きな成長を示している点は特筆すべき要素といえよう。

 また、社会人からドラフト1位でプロ入りした左腕に関しても、松永氏と河野投手はセットアッパーとして活躍し、田嶋投手は先発として優勝に貢献。全ての投手が主戦投手としてチームに欠かせない存在となっただけに、“成功率”は100%と形容できそうだ。

 大学からドラフト1位でプロ入りした左投手の場合、塩見氏、松葉投手、山崎投手の4名が、チームの主力先発として通算150試合以上に登板。藤岡氏も先発・中継ぎを兼任しながら9年間のプロ生活で通算178試合に登板し、上原投手も近年は投球内容を向上させている。

 早川投手と隅田投手は貴重な左の先発としてチームの主力となっており、年齢的にもさらなる飛躍を果たす可能性は十分。鈴木投手も2023年の終盤にロングリリーフとして安定した投球を披露しただけに、若き投手たちの今後の活躍によっては、さらなる成功例の増加も期待できそうだ。

 以上のように、プロ入り後は故障に苦しめられた森氏と齊藤大将投手、1年目のシーズンを終えたばかりの矢澤投手・曽谷投手の4名を除けば、全ての投手がプロの舞台で一定以上の活躍を見せている。プロ入り前の期待値に差異こそあれど、明確な大失敗と言わざるを得ないケースが少ない点はポジティブなデータといえよう。

大きな期待を受けてプロ入りした4名の投手も、先人たちに続く活躍を見せられるか

 近年の野球界においては、左打者の数が増加傾向にある。そのため、多くの左打者と対戦できる先発投手、重要な場面で相手の左打者に対して優位に立てるリリーフの双方で、左投手の需要がさらに大きくなると考えるのが自然だろう。

 だからこそ、ドラフト1位で入団した左投手が主力に成長するか否かは、チームにとっても非常に大きな要素となってくる。2024年から新たにパ・リーグの舞台でプレーする4名のドラフト1位左腕にも、成功例の多い先人たちに続く活躍を期待したいところだ。

文・望月遼太

関連リンク

ホームランラグーン設置5周年。千葉ロッテの成績向上につながった理由
2024年に復活が期待されるパ・リーグ6球団の選手
全球団に本塁打王クラスの主砲が存在? パ・リーグの“チーム内本塁打王”
ピッチングにとどまらない投手の技術。2023年の鮮やかな「牽制」トップ3
投高打低の影響は? 2023年のパ・リーグを、「リーグ平均打率」という観点で振り返る

記事提供:

パ・リーグ インサイト 望月遼太

この記事をシェア

  • X
  • Facebook
  • LINE