新天地で飛躍を遂げた西村天裕。有効だったボールゾーンの活用

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千葉ロッテマリーンズ・西村天裕投手 ※写真は2023年のもの【球団提供】
千葉ロッテマリーンズ・西村天裕投手 ※写真は2023年のもの【球団提供】

移籍1年目でキャリアハイをマーク

西村天裕投手 年度別投手成績(C)データスタジアム
西村天裕投手 年度別投手成績(C)データスタジアム

 2017年のドラフトで2位指名を受け北海道日本ハムに入団した西村天裕投手。プロ入りから5年間で122試合に登板するも、通算防御率4.01と一軍と二軍を行き来することが多かった。迎えた23年のシーズンは、開幕前にトレードで千葉ロッテに移籍。4月2日に移籍後初マウンドを迎えると6月7日まで無失点投球を継続し、球団記録に並ぶ21試合連続無失点をマーク。左脇腹の肉離れで9月に一時離脱したものの、自己最多となる44試合に登板して防御率1.25を記録するなど、主力のリリーフとして活躍した。本コラムでは、移籍を機に飛躍を遂げた西村投手のピッチングをデータから見ていきたい。

0・1ストライク時の成績が向上

西村天裕投手 ストライクカウント別投手成績(C)データスタジアム
西村天裕投手 ストライクカウント別投手成績(C)データスタジアム

 まず、成績が向上した要因として挙げられるのが、0・1ストライク時の被打率が大幅に改善した点である。西村投手は、2ストライクに追い込むと高い確率で打者を抑えることができていた一方で、0・1ストライク時の被打率は移籍前の2シーズンともに3割後半を記録。被打率もさることながら、長打を許すことも多いのが課題だった。それが、昨季はパ・リーグ平均の被打率.313より優れる被打率.246を記録。打者を追い込む前に痛打を浴びることが減少し、キャリアハイの活躍につながったようだ。

0・1ストライク時の配球に変化

西村天裕投手 0-1ストライク時の球種割合(C)データスタジアム
西村天裕投手 0-1ストライク時の球種割合(C)データスタジアム

 そこで、西村投手の投球スタイルを掘り下げてみたい。0・1ストライク時の球種割合を見てみると、22年までは主にストレート、スライダー、カットボールの3球種でカウントをつくり、打者を追い込んでから決め球のスプリットで打ち取るという配球が多かった。昨季はその傾向に変化が見られ、スライダーやカットボールといった球種の割合が減少し、これまで決め球として使っていたスプリットの割合が31.9%にまで上昇した。もともと西村投手のスプリットはリーグでも上位の空振り率に加え、北海道日本ハム時代にも通算被打率.156を記録するなど、優れた決め球だった。そのため、持ち球の中で優秀なスプリットを多投すれば、成績が向上することは容易に想像できるところである。ではなぜ、北海道日本ハム時代はスプリットを多投しなかったのだろう。

 一般的に、スプリットなどの落ちる変化球は、ストレートやスライダーなど他の球種に比べてストライクゾーンへの投球割合が低い球種である。西村投手も昨季は0・1ストライク時から投じたスプリットの152球中107球、約70%がボールゾーンに投球されていた。おそらく、打者に見送られてしまうとカウントを悪くするリスクがあったため、北海道日本ハム時代は追い込む前にスプリットを多投することに不安があったのだろう。

ストライクカウントのマインドチェンジ

西村天裕投手 0-1ストライク時の投球指標(C)データスタジアム
西村天裕投手 0-1ストライク時の投球指標(C)データスタジアム

 実際、西村投手は配球の変化によって、0・1ストライク時のストライクゾーンへの投球割合は移籍後に3.9ポイント減少した。その一方で、ボールゾーンのスイング率が10.4ポイント上昇している。これによって、ストライク率を向上させたことに加え、打者が打ちにくいボール球を打たせることで、被打率の改善につながった。西村投手のように奪三振能力に優れる投手は、2ストライクの割合を増やすことが好成績に直結する。そのため、バッテリーは相手打者をいかに早く追い込むか、ストライクゾーンでどれだけ勝負できるか、際どいコースで見逃しストライクをどれだけ奪えるか、といった思考を優先してしまうのかもしれない。追い込む前でもボールゾーンをうまく使うという発想の転換が、西村投手の飛躍をもたらした可能性が高いだろう。

 移籍時の入団会見で「去年までは三振にこだわりはあったが、今はアウトの取り方にこだわっています」と語っていた西村投手。これまでの投球スタイルを見直したことで飛躍を遂げ、新天地で欠かせないリリーバーとなった。今季は目標とするシーズン50登板をクリアし、チームの優勝のために腕を振り続ける。

※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点

文・データスタジアム

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