2月から宮崎や沖縄などで始まる春季キャンプ。参加選手に注目すると、キャンプからアピールが求められる若手を中心とした主力組と、それに対し自身での調整を任されたベテランという振り分けが多い。
パ・リーグでは東北楽天、埼玉西武、オリックス、福岡ソフトバンクのキャンプで、育成選手が主力中心のグループに名を連ねた。一軍、A班など呼称はそれぞれ違うが、4球団の春季キャンプで抜てきされた育成選手を紹介する。
※キャンプメンバーの振り分けは2024年1月31日時点
東北楽天
東北楽天は清宮虎多朗投手と山田遥楓選手が一軍キャンプに参加する。
2018年育成ドラフト1位の清宮投手。プロ5年目だった昨季はファームでチーム2位タイの39試合に登板し、22セーブでイースタン・リーグ最多セーブ投手賞を獲得した。投球回36で奪三振39、奪三振率9.75と上々の数値も記録。チームは抑えの松井裕樹投手が退団し、昨季中継ぎだった内星龍投手は先発転向が見込まれている。ファームで抑えを務めた清宮投手が、手薄となったブルペンに食い込めるか。
山田選手は北海道日本ハムへ加入初年度となった昨季、2月に腰の手術を受け、7月に一軍で移籍後初出場する。その後は二軍落ちすることなく、29試合に出場し打率.268、OPS.665。このオフに東北楽天と育成契約を結んだ。ユーティリティープレーヤーの小深田大翔選手や、ショートに定着した村林一輝選手など内野のライバルは多いが、昨年ファースト、セカンド、サード、ショートをこなした器用さを生かせるか。
埼玉西武
埼玉西武は主力中心のA班に、ブランドン選手が育成で唯一のメンバー入り。ブランドン選手はルーキーだった2021年にプロ初安打を本塁打で飾るなど、32試合出場で3本塁打、打率.247、OPS.697と爪痕を残すも、ここ2年は一軍出場なし。ファームでも2022年は19試合にとどまったが、昨年は37試合まで出場数を増やして4本塁打、打率.270、長打率.402、出塁率.318だった。長打が見込めるブランドン選手の存在は、昨年得点力不足に泣いたチームにとって大きい。育成で再出発となる南郷キャンプで復活をアピールだ。
オリックス
オリックスは宮城大弥投手や山下舜平大投手、若月健矢選手、森友哉選手など主力と若手が占めるAグループに6人の育成選手が振り分けられた。
2019年育成ドラフト1位の佐藤一磨投手は、昨年のウエスタン・リーグ最多勝投手。19試合に登板し、8勝3敗、防御率3.94、奪三振率6.19、与四球率3.38をマーク。いずれも2022年の2勝5敗、防御率5.96、奪三振率4.73、与四球率5.96から向上している。
佐藤投手と同期入団の中田惟斗投手は昨季、ウエスタンで19試合、防御率3.66。2022年は投球回26で与四球20だったが、昨年は投球回19.2で与四球4と良化した。
昨年11月に「2023アジア・ウインター・ベースボール・リーグ」に派遣された、川瀬堅斗投手と才木海翔投手。ウインターリーグで川瀬投手は3試合に先発し、負けなしの2勝、防御率0.95。才木投手も10登板で無失点、5セーブと好投した。武者修行の成果を発揮したい。
椋木蓮投手は完全復活を目指してのキャンプインとなる。ルーキーだった2022年、6回7奪三振無失点でプロ初登板初勝利を挙げると、プロ2試合目の登板では9回2死までノーヒットの快投を披露。将来を嘱望された右腕だが、同年9月にトミージョン手術を受け、昨季から育成契約になった。10月のフェニックス・リーグでは実戦登板も果たし、支配下復帰が待望されている。
今季よりオリックスに加入した外野手の木下元秀選手。2019年育成選手ドラフト2位で敦賀気比高から広島に入団し、2020年はウエスタンで7本塁打を放つと、2022年は79試合、打率.249、長打率.333、出塁率.304の成績を残した。
福岡ソフトバンク
昨年まで二軍を率いた小久保裕紀監督が一軍監督となった福岡ソフトバンク。A組に育成選手が4人参加する。
2020年育成ドラフト8位で入団した中村亮太投手は、2022年7月に支配下登録されるも、中継ぎで登板した2試合で11安打10失点を喫する。育成契約で再出発となった昨季は、ウエスタン最多の53試合に登板し、防御率2.17と好成績だった。
育成3年目の両打ち内野手・仲田慶介選手。ルーキーだった2022年は二軍で36試合、打率.268だったが、昨季は70試合と出場数を増やし、打率.274、長打率.341、出塁率.307と良化させている。
育成4年目の緒方理貢選手は、一昨年のウエスタン盗塁王。しかし昨季は50試合、打率.140、4盗塁、長打率.158、出塁率.231と、2022年より数字を落としてしまった。オフは福岡ソフトバンクOB・松田宣浩さん主催の自主トレーニングに参加し、A組で春季キャンプを迎える。
川村友斗選手は昨年、オープン戦で12試合に出場し、打率.357、長打率.643、出塁率.357と猛アピールするも、支配下登録はならず。シーズン開幕後もウエスタンで68試合、打率.260、長打率.492、出塁率.332と2022年より数字を伸ばし、ファーム日本選手権では3安打2打点1盗塁の活躍だった。
ここまでパ・リーグ4球団の育成選手を取り上げたが、現時点で一軍キャンプに育成選手をメンバー入りさせていない北海道日本ハムや、一・二軍の区分けを設けない千葉ロッテでも、育成選手たちのアピールは2月から始まる。限られた支配下の枠を目指して汗を流す育成選手たちに注目してみてほしい。
文・菊地綾子
関連リンク
・育成下位からのシンデレラストーリー。水上由伸と豆田泰志にデータで迫る
・伊藤大海、加藤貴之、山崎福也の3本柱で投手王国へ 北海道日本ハムの先発ローテ候補
・中村剛也、比嘉幹貴、和田毅…… プロ野球で活躍する40歳以上のベテラン選手たち
・新天地で躍進なるか。現役ドラフトでパ・リーグ球団に移籍した6選手
・昨季本拠地で好成績を残した選手は?
記事提供: