今季最も“優雅な”本塁打を打ったのは…… 本塁打滞空時間TOP5

パ・リーグインサイト キビタキビオ

2023.12.20(水) 18:00

福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐選手(左)、北海道日本ハムファイターズ・野村佑希選手(右)(C)パーソル パ・リーグTV
福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐選手(左)、北海道日本ハムファイターズ・野村佑希選手(右)(C)パーソル パ・リーグTV

今シーズンのパ・リーグを沸かせたパワーヒッターたちの競演

 2023年もいよいよ終わりが近づいてきた。今年も白熱した試合を繰り広げてきたパ・リーグ。それを総決算する材料の一つとして、満を持して登場するのは「本塁打の滞空時間」である。かっ飛ばした打球がバットに当たってからスタンドに入るまでにかかった秒数を、長い順にランキングにした。

 近年は計測機器の進歩により、試合の中継を見ていても、一部で打球速度や打ち出し角度がほぼリアルタイムで表示されるような世の中になった。それらのデータが、いわばアスリートとしての能力値を示している一方で、滞空時間の長さというのは打球の優雅さを示す“芸術点”といえるのではなかろうか。

 とはいえ、打球を「遠くへ飛ばす」ことと、「打球を高く上げる」ことを両立させるのは難しい。本来であれば物理的に片方を選択しなくては成り立たない条件を両方満たすには、根本的な打球速度が飛び抜けていなくてはならない。

 つまり、このランキングに入っている時点で、「打球スピードがえげつない」選手であることを証明しているようなものなのだ。そんな力強さと優雅さが共存する必見の打撃シーンTOP5を紹介していこう。

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5位に入り、スラッガーとしての能力を見せた野村佑希選手(北海道日本ハム)

 最初にランクインしたのは、北海道日本ハム・野村佑希選手が放った6秒55という滞空時間の一発だ。

 この野村選手と万波中正選手、清宮幸太郎選手は、北海道日本ハムが新庄剛志監督体制になってから期待を込めて起用している“若武者三人衆”である。そのなかで、万波選手は今シーズン本塁打王争いを繰り広げ、あと1本というところでタイトルを逃したものの、25本塁打と立派な数字を残した。

 対して、ランクインの野村選手は13本塁打。夏場に不振で短期間ながらファームに落ちるなど、大きな期待に完全に応えきれたとはいえなかったかもしれない。だが、持っている能力の片りんは、この本塁打滞空時間で示した格好だ。来季以降、さらなる開花を期待できそうな、そんな打球であった。

三冠王に迫った近藤健介選手(福岡ソフトバンク)が4位に

 4位に入ったのは、近藤健介選手の6秒57という滞空時間の本塁打だった。

 近藤選手というと、パ・リーグはおろか、12球団でも一二を争うバットコントロールの妙手という印象が強い。そのため、長打力を示す本塁打滞空時間でパ・リーグ5位以内に入ってきた事実を少し意外に思ったファンもいたかもしれない。ところが、今季は本塁打数自体も自身初の20本超えとなる26本塁打を記録。東北楽天・浅村栄斗選手、千葉ロッテ・ポランコ選手と同数で本塁打王を獲得し、あと一歩で三冠王というところまで迫った。

 近藤選手は、今季オリックスからレッドソックスに移籍し、MLBで活躍している吉田正尚選手などの影響を受け、数年前から意識して打球速度をアップさせることに取り組んできたそうだ。それが、FAで北海道日本ハムから福岡ソフトバンクに移籍した今年、成果となって表れた。

 もちろん、広くてフェンスも高かった札幌ドームから、ホームランテラスのあるPayPayドームに本拠地が変わったという環境的な要素も後押ししたかもしれないが、従来の“技”に“力”も加わったことを、滞空時間でも示した一打だった。

右の大砲候補として実績をつけてきた山口航輝選手(千葉ロッテ)が豪快スイングで3位

 真ん中高めのストレートを上空に向けて豪快に振り抜き、ボールをスタンドまで運んだのは、千葉ロッテで今季14本塁打を記録した山口航輝選手。6秒69という滞空時間を記録し、3位に食い込んできた。

 前年も16本塁打を放ち、チームでの存在感を定着させつつある山口選手。千葉ロッテは1980年代に三冠王を3度獲得した落合博満選手が移籍して以降、生え抜きの右打ちで本塁打を量産した実績があるのは、初芝清選手(1995年と1998年に25本)、井上晴哉選手(2018年と2019年に24本)など数少ない。

 なかなか長距離砲が台頭してこない土壌だが、この一打をみると今後も期待せずにはいられない。来年は、横浜DeNAで実績を挙げてきたソト選手が右の長距離砲として入団してくる。だが、臆することなく競い合い、ぜひ20本塁打以上積み上げて、飛躍を遂げてもらいたい。

2位には今季不振ながらも島内宏明選手(東北楽天)が入って実力を示す

 一見控えめだが、いうことやることド派手なときがある。それが、東北楽天で活躍を続ける島内宏明選手のイメージだ。本塁打滞空時間でも6秒80という長~いタイムで2位入賞である。

 そんな島内選手だが、今シーズンは打撃に苦しみ、打率.236、7本塁打、38打点と成績が低迷。夏場には約5年ぶりに一軍登録を抹消されるなど振るわなかった。

 それでも、さりげなく爪跡を残しているところがいかにも島内選手らしい。これだけの打球を放つことができるということは、まだまだ飛ばす能力を持っているということ。8月以降は数字的にも復調気配があっただけに、来シーズンは再び勝負強い打撃を披露してくれることを願っている。

番外編 弾丸ライナーによる最短時間の本塁打はもやは“変態打ち”だ!

 さて、1位をコールする前に恒例の番外編に行こう。滞空時間の長い本塁打とは正反対に、弾丸ライナーの本塁打であっという間にスタンドインした短い打球タイムを二つピックアップした。

 一つは東北楽天・フランコ選手の3秒20、もう一つは福岡ソフトバンク・柳田悠岐選手の3秒17。柳田選手の打球が今シーズンの最短滞空時間本塁打である。これらについては、ひとまとめに評してしまっていいだろう。はい、どちらも“変態打ち”です(笑)。とんでもないパワーに驚愕するばかりだ。

 今回ランキングインしている打球とはまったく逆で“わびさび”など堪能している暇はない。気がついたときはフェンスを越えていて、あとから「え? 入っちゃったの?」と呆然とする一撃である。球場で見たファンは、この打球を直接見られただけで貴重な経験をしたと誇っていい。

滞空時間を堪能できたマキノン選手(埼玉西武)の一発が1位

 今シーズン最も高い弾道でスタンドインした第1位は、埼玉西武・マキノン選手がエスコンフィールドで放った6秒89という滞空時間の本塁打であった。高々と舞い上がった結果、フェンス際ギリギリのところに落ちてきたため、打球を追うレフトの松本剛選手の動きも長く見ることができて、より時間の長さを感じさせるシーンになっていた。

 しかし、あわよくばジャンプして捕球せんとしていた松本剛選手も最後は諦め、ボールはフェンスの先にあるブルペンに落ちて高く弾んでいく。見ている誰しもが、高く上がった本塁打の余韻を楽しめたと思える美しい放物線だった。

 オフシーズンになって、この一打を放ったマキノン選手は契約保留者名簿から外れ、来季からは韓国プロ野球のサムスン・ライオンズでプレーすることが発表された。「滞空時間マニア」の筆者として、来年マキノン選手のプレーを日本で見ることができないのは残念だが、新天地での活躍を願いつつ、2023年の年の瀬を迎えることとしよう。

文・キビタキビオ

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