11月16日より日本で開幕する、「カーネクスト アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」。この大会の参加資格は「24歳以下または入団3年目以内」であり、オーバーエイジ枠は「29歳以下で3名まで」と定められている。各球団の主力から若手有望株まで全26選手が名を連ねたなか、本稿では埼玉西武から選出された同期コンビを紹介したい。
リリーフで輝きを増した左腕の進化とは
まず1人目は、プロ2年目のサウスポー・佐藤隼輔投手だ。ルーキーイヤーの昨季は先発としての起用が主だったが、今季はすべてリリーフで47試合に登板。セットアッパーとしても起用されるなど首脳陣の信頼を獲得し、ブルペンに欠かせない存在となった。
昨季との違いを見比べてみると、リリーフ転向に伴って出力が大きく向上。ストレートの平均球速は4キロ以上アップし、今季初登板となった4月1日には自己最速の155キロをマークした。こうしたストレートの威力向上もあって投球割合は約7割にまで増加し、力強い直球をどんどん投げ込む投球スタイルへと変貌を遂げた。
そして佐藤投手のもうひとつの特徴がチェンジアップだ。今季の奪空振り率は24.5%と非常に高い数字を残しており、決め球として十分な威力を誇る。
全体の投球数としては主な持ち球の中でも多くはないが、右打者との対戦では投球割合の約15%を占めており、利き腕側に逃げながら沈む軌道を生かして効果を発揮。結果として対左右別の被打率は対左が被打率.274なのに対して対右が同.188と右打者を全く苦にしておらず、ワンポイントにとどまらない起用を可能にしている。
井端弘和監督も選手選考について「左右の固定観念を外していい選手を選んだ」と語っており、左腕・佐藤投手の右打者との対戦は注目ポイントになりそうだ。
未来の正捕手候補は侍ジャパンでも存在感を示せるか
続いては佐藤投手と同じく21年ドラフトで入団した古賀悠斗選手だ。昨季までチームの正捕手を務めた森友哉選手の移籍があり、今季は前年を大きく上回る100試合に出場。両リーグトップの盗塁阻止率.412をマークするなど飛躍を遂げた。バッティングに目を向けると、シーズン成績は打率2割台前半と突出したものではない。
しかし期間別の成績を見てみると、シーズンの後半は改善の兆しを見せている。捕手として出場している場面での打率.277は森選手に次ぐリーグ2位の数字。出塁率と長打率を足したOPSでも.723でリーグ3位と、捕手としては十分な打力を発揮していた。
もう少しバッティングの中身を詳しく見てみると、1年目の昨季や今季前半戦はストライクゾーンにきたボールを捉えることができず、打撃成績の伸び悩みにつながっていた。しかしプロのピッチャーが投じるボールへの慣れもあるのか、後半戦になってゾーン内の打率は.337と劇的に改善。
コンタクト率も90%を超え、打つべきボールを確実に捉えられていたことが分かる。代表ではオーバーエイジ枠で選出された広島東洋・坂倉将吾選手、さらには中日・石橋康太選手とポジションを争う形になるが、唯一パ・リーグの投手を知るキャッチャーという強みも生かし、チャンスをつかみ取りたいところだ。
10月に侍ジャパントップチームの監督に就任した井端弘和氏の初陣となる今大会。17年に開催された第1回大会では今永昇太投手や外崎修汰選手、西川龍馬選手らのちに各チームの主力となった選手たちが躍動し、日本は優勝を飾っている。本稿で挙げた2選手だけでなく、NPBの未来を担う若き侍たちに注目してもらいたい。
※文章、表中の数字はすべて2023年シーズン終了時点
文・データスタジアム編集部
関連リンク
・日替わりオーダーはパのスタンダードに。選手起用から見るオリックスの強さとは
・パーソルCSパ オリックス制覇の理由は、打線の積極性とリリーフ陣の配球変化にあり
・打撃職人・角中勝也に、17年目のモデルチェンジがあった!?
・緩急自在のピッチングで打者を翻弄する宮城大弥のさらなる進化とは?
・球宴MVPに輝いた万波中正の進化とは
記事提供: