「思い」を込めた、キャプテン・嶋基宏の一打

パ・リーグ インサイト

2016.4.21(木) 00:00

楽天生命パーク宮城(C)PLM
楽天生命パーク宮城(C)PLM

キャプテンが、長いトンネルを抜け出す一撃を放った。楽天・嶋選手が延長12回2死1,2塁から、左翼へサヨナラタイムリーを放ってオリックスを下した。3ボール1ストライクから思い切りよく振りぬくと、左翼手の頭上を越えた。負ければ最下位に転落していた一戦。泥沼の6連敗だったチームを救った。お立ち台では笑顔は控えめ。「その前に6連敗してるので、まだ借金しています。明日も勝って、借金を返済したいと思います」と言葉に力を込めた。

苦しい展開を幾度となく救った。糸井選手の2ランなどで3点を追う状況。だがこの日は5回に聖澤選手、銀次選手が適時打を放って1点差とすると、6回、嶋選手が左中間へ今季第1号となる本塁打で同点とした。本塁打の直後は「とにかく勝ちたい。それだけです」と主将としての責任感を口にした。その後、同点のまま延長戦に突入。金刃投手、青山投手、横山投手、松井裕投手、福山投手、濱矢投手と投手陣の無失点リレーを引っ張り、4時間37分の熱戦を制した。

本塁打、そしてサヨナラ安打はともに左翼方向。これまでは右打ちが代名詞の男だったが、今季から左方向への長打を増やすことを目指している。5試合無安打と湿りがちだったバットだが、この日の2長打で復調を予感させた。

東日本大震災から5年という節目、決意を新たに臨んだ2016年。先日、熊本でも大地震が発生し、今なお多くの余震が被災地を襲っている。2011年当時、選手会長として「見せましょう、野球の底力を」と全国の野球ファンに訴えた男。お立ち台の最後に「話は変わりますが…」と切り出すと「5年前、ここにいる皆さんもそうですが、震災が起きてから、たくさんの人たちに支えられました。今、熊本で、たくさんの人が困っています。ここにいる皆さんも、少しでも力になれるよう、少しでも温かい気持ちを送って、日本を盛り上げていきましょう!」と呼びかけた。

何をすることが正しいのか、何を言うことが正解なのか、東日本大震災のときに悩み続け、その気持ちは今も変わらない。だからこそ、この日も言葉を選びながら、「温かい気持ち」という言葉にエールの意味を込めた。

6連敗を止め、21日の試合に借金完済を目指す楽天。キャプテンの気持ちと責任感がつなげた今季初のサヨナラ勝利で、勢いを取り戻すことができるか。

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