埼玉西武・豆田泰志は5試合計5イニングで無安打1四球無失点
■東北楽天 5対3 埼玉西武(15日・ベルーナドーム)
7月に育成から支配下登録されたばかりの20歳右腕が、快進撃を続けている。育成ドラフト4位で埼玉西武入りし3年目の豆田泰志(まめだ・たいし)投手だ。15日に本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦で、同点の7回に登板し3者凡退で片付け、プロ初ホールドをマークした。一軍で5試合に登板して計5イニングを投げ、無失点どころか1本のヒットも許していない。
徐々に重要な場面を任されるようになってきた。1対1の同点で迎えた7回に、3番手として登場。炭谷銀仁朗捕手を左飛、村林一輝内野手を遊ゴロに仕留める。3人目の小深田大翔内野手には、真ん中高めのストレートを右翼フェンス際まで飛ばされたが、ボールは無事、右翼の蛭間拓哉外野手のグラブに収まった。豆田は「打たれた瞬間、いかれたかもなと、ちょっと思ったっすね」の首をすくめた。
7月21日に支配下登録され、同28日に楽天モバイルパーク宮城で行われた東北楽天戦で一軍デビューを果たして以降、許した走者は四球による1人のみだ。本人は「ヒットを打たれていないからといって、どうというのはないです。普通に1試合1試合、自分のやるべきことをやっている感じです」とあっけらかんとしたものだが、首脳陣の評価は急上昇。松井稼頭央監督は「一軍でいろいろ経験していく中で、これから課題も出てくるでしょうが、真っ直ぐが強いし、気持ちも非常に強いと思います」と目を細める。
最速151キロの速球を軸にカーブ、スライダーなどを投げるが、何より特徴的なのは、オリックスの山本由伸投手に似たクイック投法である。それもそのはずで、5月に山本をまねて投球フォームを変えてから、二軍での成績がうなぎ上り。一気に一軍への階段を駆け上がった。
173センチ、88キロ「“豆っぽい”と言われています」
「遊び感覚で真似してみたら、武隈(祥太)さん(昨年限りで現役引退した左腕投手で、球団本部ファーム・育成グループ付)に『それでやってみろよ』と言っていただいて、それから試合でやってみました」と明かす。「自分ではわかりませんが、周りから『タイミングを取りづらそう』と言われます。走者を許すことが少なくなり、ハマったのかなと思いました」と満面の笑みを浮かべた。
埼玉県越谷市出身で、地元の浦和実高を経て埼玉西武入り。「埼玉から出たことがない(他県に住んだことがない)」と言う“地元民”だ。「豆ちゃん」のニックネームがファンの間にも浸透中。173センチ、88キロのややずんぐりとした体型で、「SNSなどでは、顔などを含めて名前の通り“豆っぽい”と言われています」と照れ笑いした。
埼玉西武のリリーフ陣は、守護神の増田達至投手が12日の千葉ロッテ戦と15日の東北楽天戦で、2登板連続の黒星を喫するなど、綻びが見え始めた。それだけに、豆田の役割はさらに重要になっていくかもしれない。「そう考えると、今日(15日)のピッチングはちょっと良くなかったですね」と表情を引き締める。小深田に大飛球を打たれた場面を振り返り、「ボールが先行して(カウント2-1)、置きに行ったのが悪いところ。走者がいる場面だったら、ああいう打球はダメですね」と反省する。
「課題をつぶしていかなきゃだと思います」と、無安打無失点の快進撃にも浮かれるところはない。笑顔こそあどけないが、責任感の強さをうかがわせるあたり、弱冠20歳には見えない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
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